漢方・漢方薬/妊娠中・授乳中・不妊症の漢方

漢方で考える、妊娠中のトラブル解消法

つわりや貧血、浮腫などの妊娠中のトラブルや、マタニティーブルーなどの悩みは、漢方ではどう捉えるのでしょうか? なお、風邪を引いたらときの対処法は……? 知っておくと便利な妊娠中のトラブル解消法をご紹介します。

杏仁 美友

執筆者:杏仁 美友

国際中医師 / 漢方・薬膳料理ガイド

つわりや貧血、浮腫などの妊娠中のトラブルや、マタニティーブルーなどの悩みは、漢方ではどう捉えるのでしょうか?  なお、風邪を引いたらときの対処法は……?  知っておくと便利な妊娠中のトラブル解消法をご紹介します。

漢方でみる、妊娠中の女性のカラダとは?

漢方でも、作用の強い生薬などは妊娠中使えない。しかし虚弱を補うものなど、体質に合ったものであれば、相談の上服用も可能

漢方でも、作用の強い生薬などは妊娠中使えない。しかし虚弱を補うものなど、体質に合ったものであれば、相談の上服用も可能

妊娠を維持するため、女性のカラダのなかでは様々な変化がおこっています。胎盤からいろいろなホルモンが分泌され、循環する血液量も増え、腎の機能※もアップます。

漢方では、生殖器を司る「腎」、自律神経やホルモンバランスのコントロールに関連のある「肝」、赤ちゃんに栄養を与えるもとをつくる消化器の「脾(ひ)」、そして妊娠に深く関わりがあるとされる衝任脈(しょうにんみゃく)という経絡が、妊娠に関連の深い部位や機能とされ、妊娠を維持すると考えられています。

つまり、妊娠期間中にこれらの臓腑や経絡になんらかのトラブルが生じたときに、体調の異変や流産、不育などの異常が起こるというわけです。
 

妊娠中に風邪を引いたときの漢方ケア

妊娠中は自己判断でお薬の使用が難しい時期です。まずは風邪を引かないように予防することが第一。しかし、どうしても風邪を引いてしまうこともあります。症状が軽い場合は、次のようにケアしてみましょう。

サラサラの鼻水、悪寒、発熱、節々の痛みがある場合
・生姜湯や葛湯などを飲み、カラダを温めて寝る
・首から肩にかけて、使い捨てカイロなどで温める

せきが止まらない、痰が切れない、夜中に咳が悪化する場合
・カラダのうるおいや栄養不足で乾咳が出たり痰がきれない場合は、鉄分やミネラルを積極的に摂取する
・症状がおさまらない場合は医師に相談し、漢方薬の服用も検討(麦門冬湯などが使われます)

妊娠中に貧血になったときの漢方ケア

妊娠中は赤ちゃんに栄養を届けるために、普段よりよけいに栄養分を作らなければいけません。そのため豊富な栄養に富む血液が不足しがちになり、貧血になりやすいもの。

まずはプルーン、ほうれん草、レバーなどの鉄分の多い食材をとり、食事内容の改善をしましょう。また胃腸に負担のかからないよう、甘いもの、脂っこいもの、生もののとり過ぎにも気をつけて。

■ よく使用される漢方:十全大補湯(じゅぜんだいほとう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)など。
 

妊娠中に浮腫になったときの漢方ケア

妊娠中は腎の働きが活発になります。もともと体質的に腎機能が弱かったり、過労や睡眠不足などで腎の働きが低下するために、むくみやすくなることも。

胃腸の働きも活動的になるのですが、もともと胃腸の調子が弱かったり、食事の不摂生などによって胃腸の働きが低下していると、水分を吸収できないために余分な水分がむくみとなって現われることもあります。

■ よく使用される漢方:六君子湯(りっくんしとう)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)など。
 

マタニティーブルーになったときの漢方ケア

マタニティーブルーはホルモンバランスが大きく変わることでなりやすいのですが、漢方ではカラダの熱が原因で起こると考えられています。

貧血などの影響で血が不足しているために、カラダのバランスが崩れ、熱を生じるケース、もともと水分代謝がわるかったり、妊娠中に余分な水分をカラダの中にためてしまった結果、熱がこもってしまうケース、そしてストレスなどが原因でカラダに熱がたまるケースなどがあります。

マタニティーブルーはなりやすい時期があり、妊娠中期の安定期に入ると症状も落ち着いてくることも多いため、あせらずゆっくりと構えることも必要です。

■よく使用される漢方:甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)、温胆湯(うんたんとう)、加味逍遙散(かみしょうようさん)など。
 

つわりになったときの漢方ケア

大体の場合、妊娠中期の安定期にはおさまってくることが多く、あまり心配することはありません。しかし、症状が重い場合は胎児の元気をそこなう可能性もあるので、漢方を処方することもあります。

妊娠中は胃腸の働きが活発になりますが、胃腸が丈夫でない人は働きが鈍くなりやすくなります。そのために膨満感を感じたり、食品のニオイが気になったり、疲れやすくなったりします。

■ よく使用される漢方:六君子湯(りっくんしとう)、二陳湯(にちんとう)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)など。

なお、げっぷが多かったり、イライラしやすい人は、ストレスが原因のことも多いです。このようなケースには抑肝散加陳皮半夏湯(よくかんさんかちんぴはんげ)、釣藤散(ちょうとうさん)などが代表的。

余分な水分がカラダにたまっているときには、小半夏加茯苓湯(しょうはんげぶくりょうとう)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)などでも対応できます。食欲がない、口が粘つく、舌に苔がつくなどの症状がある時に便利です。


漢方の基本は、妊娠中もやはり体質別。漢方を購入したい場合は、漢方の専門家に相談してくださいね。

※漢方でいう肝・心・脾・肺・腎などの五臓の機能は、肝臓、腎臓などの臓器のはたらきだけでなく、もっと広義にわたります。精神とも深くかかわっています。
 

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