癌(がん)/がんの3大療法・その他の最新療法

熱に弱いがん細胞に有効な「温熱療法」とは

がんは、正常の組織と比較して増殖のスピードが速かったり、組織の境界を乗り越えて浸潤したりといった様々な相違点があります。これらは、治療に難渋する原因となるものですが、実は、治療に活かせる意外な弱点があるのです。

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

がん細胞は熱に弱い

加熱によるタンパク質は変性します。これは、人間の組織も同様ですが、

加熱によるタンパク質は変性することは、私達も調理をするときに、日常的に経験しています。
これは、人間の組織も同様ですが、がんの変性というのは、がん細胞の死滅を意味します。

 

一般の方にはまだあまり知られていないようですが、実は、がんは正常の組織に比べて熱に弱いという特徴があります。

一般にタンパク質は加熱により変性します。卵をゆでると透明な卵白は真っ白な白身に変わりますし、お肉もゆでたり焼いたりすれば色が変わります。同様に、人間の体の細胞も加熱によって変性します。変性ということは、別の言い方をすれば死滅するということです。

ここでのポイントは、がんは、正常の組織に比べて熱に弱いということです。その理由については色々な研究がなされていますが、組織内が弱アルカリ性からやや酸性に傾いていることが要因ではないかと考えられているようです。
 

ポイントとなる温度は43℃

43℃前後の

43℃前後の熱が。しかし、残念ながら、熱いお風呂に入ると言うことでは治療効果は期待できません。

温度が低すぎれば、がん組織にダメージを与えることはできませんし、温度が高すぎれば正常な組織もダメージを受けてしまいます。

ベストな温度は、これまでの研究で43℃ということがわかっています。43℃といえば、かなり熱めのお風呂の温度です。しかし、熱いお湯にがまんしてつかっていれば良いということではありません。

43℃前後のお湯で温めても、皮膚表面と違って、体内の温度は上がりませんので、残念ながら効果は期待できないのです。今は、高周波によって加温する医療用の機器が開発され、臨床の現場でも「温熱療法(ハイパーサーミア)」という治療法として認知されています。温熱療法の特徴は、正常な組織へのダメージが理論的にはほとんどなく、がんのみに影響を与えることができる、「体に優しい治療ができる」ということです。

1990年には、色々な制限はあるものの保険適用も認められ「がんの新たな治療の一つ」として捉えられるようになってきました。
 

抗がん剤や放射線治療との併用も有効

いわゆる

いわゆる三大療法で十分な治療効果が得られない方にとって、温熱療法および、抗がん剤や放射線治療との併用は、大きな福音と鳴る可能性もあります。

 

温熱療法は、抗がん剤や放射線療法との併用により、その治療効果が増強されることや、加温による自己免疫力の増強といった効果があることも明らかにされてきています。

手術、抗がん剤、放射線といった基本的な治療法で十分な治療効果が得られない場合には、免疫療法と共に考慮すべき治療法と言えるでしょう。



【関連リンク】
温熱療法についてもっと詳しく知りたい方は、こちらのサイトをご参考に。


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