不眠・睡眠障害/ナルコレプシー

ナルコレプシーの症状と検査

金縛りや悪夢にうなされやすい人は、ナルコレプシーかもしれません。大事な場面で居眠りしたり、大笑いすると体の力が抜ける人も要注意。ナルコレプシーの特徴的な症状と、大事な検査をご紹介します。

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

ナルコレプシーの主な症状

TPOに関係なく、強い眠気に襲われます

TPOに関係なく、強い眠気に襲われるナルコレプシー。ただの眠気ではすまされない厄介な病気です

ナルコレプシーの患者さんには、次に挙げる4大症状が見られます。これらの症状のうちいくつかは、健康な人でも現れることがあります。逆に、ナルコレプシーにかかった方でも、常に全ての症状が揃うわけではありません。

1. 昼間の耐え難い眠気と睡眠発作
危険な作業や大事な会議、デートの最中など、積極的な参加や緊張感を要する状況でも、本人の意志に関係なく突然眠り込んでしまいます。居眠りは通常30分以内で自然に目覚め、起きれば気分はスッキリします。起きた後しばらくは眠気がなくなっていますが、数時間たつと再び激しい眠気が襲ってきます。通常はこれがほぼ毎日、3ヶ月以上続きます。

10歳未満の子どもの場合は眠気がはっきりしない場合があり、不機嫌さや落ち着きのなさ、集中力の低下、過食、体重増加で気づかれることがあります。大人でも目覚めていて、一見きちんとした行動をしているようでありながら、少し変わった対応をすることがあります。本人にはその間の記憶がなく、その間の行動は「自動症」と呼ばれる症状であることが多いです。

日本では病気についての理解がまだ十分ではなく、周囲から「怠けている」「気合が足りない」といった誤解を受けることも少なくありません。そのため社会生活に大きな支障が出たり、うつ状態や引きこもりになってしまうこともあります。

2. 情動脱力発作(カタプレキシー)
笑う、喜ぶ、怒る、驚く、興奮するなど、強い感情の動きが引き金になって、全身の筋力(特に抗重力筋)が左右同時に抜けてしまう発作。脱力が激しい場合には、その場に倒れこむことがあります。発作が軽い場合は、呂律が回りにくい、頭が前に垂れ下がる、膝が笑うなどが軽い症状が起こります。

発作中の意識はしっかり保たれています。呼吸するための筋肉は脱力しないので、息苦しくはなりません。発作は数秒~数分たつと収まり、自然に力が入るようになります。

通常は、先に述べた日中の強い眠気や睡眠発作が最初に起こり、情動脱力発作はその1年以内に出始めることが多いようです。ただし、情動性脱力発作を起こさないタイプのナルコレプシーもあるので、注意が必要です。

3. 睡眠麻痺
いわゆる金縛りと呼ばれているものが、寝入りばなや目覚めた直後に起こります。睡眠麻痺は、数分以内に自然になくなります。

健常な人の場合、寝ついてから90~120分してから現れるレム睡眠が、ナルコレプシーの人の場合は寝ついてすぐ現れます。レム睡眠は全身の筋肉が動かない状態の浅い眠りです。この睡眠のときに何かの原因で意識が残っていると、体が動かせずに焦ってしまいます。

4. 入眠時幻覚
睡眠麻痺と同時に起こることが多いものに、入眠時の幻覚があります。この2つと情動脱力発作をまとめて、レム睡眠関連症状とも言います。上でも述べたように、ナルコレプシーの患者さんでは寝ついてすぐにレム睡眠になってしまうため、これらの症状が現れます。

幻覚は、怪しい人影や化け物が危害を加えにくるなど、かなり現実感があり鮮明で恐ろしいものが多いようです。入眠時幻覚が見えるときは、睡眠麻痺にも陥っているので、逃げようにも体は動かず声も出せないため、恐怖感が増幅されます。これも睡眠麻痺と同様に、数分以内になくなります。

以上の4大症状は、ナルコレプシーの患者さんによく見られるものですが、4つ全てが現れるのは患者さんのうちの20~25%程度だけ。病気の進行につれて睡眠発作や情動脱力発作は必ず起こりますが、睡眠麻痺や入眠時幻覚は伴わないことがあります。逆に後の2つの症状は、健常な人でも見られることがあります。

ナルコレプシーの検査

最近では、自宅で検査が受けられます

最近では自宅でも検査が受けられるナルコレプシー。不安を抱え込む前に検査し、正しい治療を受けましょう

上記の症状に当てはまり心配な場合は、睡眠障害の専門医に診てもらいましょう。日本睡眠学会のホームページで睡眠障害の認定医や認定医療機関を探せます。診察でナルコレプシーが疑われたら、睡眠ポリグラフ検査や睡眠潜時反復検査などが行われます。

■ 終夜睡眠ポリグラフ検査(ポリソムノグラフィー)

体のあちこちに脳波や筋電図、呼吸状態などを計るセンサーを付け、一晩眠る検査。正式な検査をする場合には夕方から病院に1泊しなければなりませんが、検査が終わればそのまま学校や会社へ行くこともできます。どうしても検査のための入院ができないときには、簡易型の検査装置を借りて、自宅で検査することも可能です。

料金は健康保険が使えるので、3割負担の人なら1万5000円前後から。また、宅配便でポータブル検査装置を送ってくれるサービスは6000円くらいで受けられます。

ナルコレプシーの患者さんの多くは寝つきがよく、目をつぶってから10分以内に眠りに落ちます。寝ついた直後にはレム睡眠がよく現れます。しかし、眠り自体が浅いため夜中に目覚めることが多く、熟睡感があまりありません。睡眠時間の長さは健常な人と変わりません。

■ 睡眠潜時反復検査(MSLT)

ナルコレプシーの診断に欠かせない検査で、2008年の4月から保険適用となりました。2時間ごとに眠りやすさを調べます。ナルコレプシーの患者さんは眠るまでの時間が8分未満(典型的には5分以内)で、眠るとすぐにレム睡眠になることが2回以上みられます。

国際的な睡眠障害の診断基準に従うと、3ヶ月以上にわたってほぼ毎日強い眠気があり、情動脱力発作が見られた場合のみナルコレプシーと診断されますが、情動脱力発作がなくても、この検査によってナルコレプシーと診断されることもあります。検査は1日がかりなので入院が必要。料金は1万5000円くらいのところが多いようです。

以上がナルコレプシーの検査法ですが、強い眠気があるのにナルコレプシーでなかった場合、他の病気の可能性も考えられます。睡眠不足症候群や特発性過眠症、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、睡眠覚醒リズム障害、うつ病、統合失調症などでも同様の強い眠気が現れることがあるので、ナルコレプシーと自己診断しないようにしましょう。
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