不妊症/全国の不妊治療の病院・クリニック・治療院

岡山二人クリニック訪問記(前編)

このたびはFine松本さんのご紹介で、岡山市の岡山二人クリニックにやって参りました。以前より読者アンケートでとても人気のあるクリニックと伺っていましたが、今回は院内をくまなく見学、解説をして頂くことになりました。

執筆者:池上 文尋

このたびはFineの松本さんのご紹介で、岡山市の岡山二人クリニックにやって参りました。以前より読者アンケートでとても人気のあるクリニックと伺っていましたが、今回は院内をくまなく見学、解説をして頂くことになりました。

院長の林先生はとてもこだわりの方で有料の広告は出した事はなく、メディア取材もここぞというところ(わかってくれる、勉強している)にしか許可していないという徹底ぶりです。その先生にオールアバウトの池上なら取材OKと云ってもらえたのはうれしい限りです。

それでは、順を追って書いていきたいと思います。

岡山駅についてそこからタクシーでクリニックへ向かったのですが、約15分ほどかかったでしょうか、結構中心部から離れているなあという印象でした。クリニックは広い駐車場に囲まれた感じですが、それでも車が置けないぐらいになるとか。

院内に入ると左手に受付があり、奥行きのある院内が見渡せます。そこで院長先生にごあいさつ。以前、生殖学会の場でごあいさつさせて頂いたこともあり、2回目の対面となりました。

岡山二人クリニックの院内は?

入口から見た待合室の様子です

入口から見た待合室の様子です

院内見学ツアーがスタートしました。机には、アンケート結果や院内の情報、治療費についてなど様々な資料が置かれていて、とにかく患者さんへの情報公開が大事であるということが一目でわかります。そして院長へ届く目安箱(院長直行便)もあり、患者さんの声なき声をいかに拾うかの工夫も随所に見られます。

そのアンケートですが、患者さんの50%が答えてくれるとのことで、そのデータはすべての方に公開しているとのこと。

院長直行便から投書を取り出す院長

院長直行便から投書を取り出す院長

待合室には雑誌も新聞もテレビもありません。あるのは不妊治療のためのDVDや様々な不妊治療に関する資料のみ。院長の方針としてここに来た時はできるだけ学んで欲しいという気持ちでそうしているそうです。見たい本があるなら自分で持って来てもらうそうです。

待合室には大型のスクリーンもあり、院内勉強会、説明会に使えるようになっています。院長云わく、説明会にも特徴があり、岡山二人クリニックでは参加者の40%が男性だそうです。夫婦が協力し合って治療していく様子がわかります。

待合室から診療室へ移動して目に付いたのは電子カルテとDatabaseがドッキングしたシステム。ここではDatabaseを活用して独自のカルテシステムを開発しています。そしてドクターの診療時には横にクラーク(医療秘書)がおり、診療の内容を克明に正確に記録していきます。

待合室にあるデジタルサイネージ(不妊情報末端)です

待合室にあるデジタルサイネージ(不妊情報末端)です

現在、電子カルテが広まってきて問題なのが、診療時にドクターが入力するので、きちんと向き合って話が出来ないことと云われています。ここではそういうことはないということですね。

そしてそのカルテの内容は細かくは書けないですが、患者さんを多角的に表現できるための項目がびっしりです。患者さんたちが今までどのように生きてきて、治療してきたのかがきちんとわかる内容になっています。ご夫婦の写真も載っており、スタッフ全員が一目でわかるようになっています。

院長先生への質問

池上)ところで院長は初診にどれぐらい時間をかけていますか?

院長)きちんと理念と方針を伝えるために30分はかけていますね。
当院は院長初診を終えたら後はドクターの指名制OKになります。それからこれはあまり他ではやらないと思うのですが、診察後その患者さまの次の来院指示を紙に書いてお知らせするようにしています。
森の熊さんのような林院長先生です

森の熊さんのような林院長先生です


池上)それにしてもこのカルテはすごいですね。どんな事を実際に話される事が多いのですか? (役に立っていますか?)

院長)どの受精卵を戻すか?といった内容をデータベースで見ながら相談をする事が多いですね。

池上)これらのデータはキャスト全員が見られるのですか?

院長)はい、全員見られるし、全員が書き込みます。
相談内容も全部書き込みます。そうすることによって、どのパートにおいてもその患者さんをウォッチしているし、お声掛けできるようになっています。
また、これらのデータは研究発表の素材にもなります。

ここで院長室へ移動し、続いてお話を伺いました。

池上)松本さんに貴院のヒヤリハット報告は素晴らしいと聞いたのですが、詳しく教えて下さい。

院長)当院では、ヒヤリハット報告を「明日にかけるノート」と名付け、できるだけ共有しようということで運用しています。その結果、本当に多くのヒヤリハットが上がってきます。これを我々は良いことであると思っています。当院では年間300件程度上がってきています。

そして少なくとも一ヶ月に一回、医療安全委員会にてそれらの情報を共有し、対策を考えるようにしています。

アンケートの内容を院内で閲覧できます

アンケートの内容を院内で閲覧できます

池上)貴院の治療方針を教えて下さい。

院長)「より自然で、より早い妊娠成立」を目標にしていますが、「より早く」となると早い機会に体外受精をおこなうことになります。

当院の患者さまは、「より自然に」ということで一般不妊治療からスタートされる方が多いので、全人的な治療になります。まずは不妊原因を探す検査と同時に妊娠に影響する他疾患(甲状腺・糖尿)や風疹に対する抵抗力をチェックしておくことをお勧めしています。

そして38歳以上の方にはダウン症や流産について、妊娠率の問題についても全部説明するようにしています。

ここで杉山看護師長も加わって頂く。

池上)ところで話は変わりますが、ここでは年に一回キャスト全員のテストがあるとか?

院長)はい、そうです。全員が受けます。例外はありません。テストの点数は評価にかかわります。問題は私が作っております。2月に実施しますが、キャストはそのための対策勉強会もしています。もちろん事務(医事)も同じように受けます。

なぜこういうことをしているのかと云うと、みんな同じ知識レベルをもつという意味もありますが、当院はピラミッド型マネジメントではないということ、一人ひとりの職員が大事で一人かけてもダメであることの意思表示です。最初は嫌がると思いましたが、「良い医療を提供するために必要なことだ」とみんなが理解してくれて……。

待合室には勉強会用のスクリーンも

待合室には勉強会用のスクリーンも

池上)そういえば、ISOを取得されているとか、その目的は何ですか?

師長)実はISOという資格を取るためにチャレンジしたわけではありません。もっと根本的な問題のためです。医療現場ではミスは必ず起きるものですが、それをみんなで考えてフォローしようという発想です。よって職員全員がISOの内部監査員でもあります。

池上)その他でもチームワークが良くなる事をされていますか?

師長)モーニングカンファレンスを毎朝実施しています。
お互いに気をつける事や共有すべき情報を見ようねと声掛けをしています。日々いろいろな情報が院内LANにUPされるので毎朝余裕をもって来るように推奨しています。

池上)貴院の人事制度は非常にユニークと聞いております。どのような人事制度なのでしょうか?

院長)テストの所でも話したのですが、私どもはポリシーの共有化を重視しています。だからピラミッド型のマネージメントではなく、一人一人の職員を大切に考えています。期末賞与も日々の活動を一から積み上げて評価するようにしています。

師長)それから福利厚生として、キャストのリクレーションにも力を入れています。研修旅行はキャストの希望を取り入れており、今まで上海や韓国、京都など場所を問わず、みんなで楽しんでいます。また、家族への感謝デーもあり、ぶどう狩りなどに行っております。

それから当院の大きな特徴は「有給休暇消化率が100%近い」ということです。人事で大事なことは院長が約束を守るということだと思います。

池上)来年、新しくクリニックを増築されるそうですが、その理由を教えて下さい。

院長)当院はお陰様で岡山県内だけでなく、福山など他県からも来て頂いております。その皆様にじっくり治療して頂くために施設を充実するのが第一の目的です。そのためにはスケールメリットも必要だと考えており、現在計画中です。来年の7~8月頃の完成を予定しております。

池上)チーム医療についてどのようにされているのかを教えて下さい。

師長)看護部、医事部、技術部には、それぞれチーフがいます。このチーフ同士は常に連絡を取り合っており、情報共有を密にしています。そして、委員会が5つあり、それらは部門を超えた活動を行っております。

そして、全員がどこかの委員会に入っております。色々と一緒に仕事をして交わることにより、チームワーク感が生まれています。

池上)今、どのクリニックも看護師不足で困っておりますが、先生のところはいかがですか?

院長)当院ではお陰様で良い人が集まってきて頂いていますが、来年の事を考えると増員していかなければいけません。どんどんご応募してきてほしいですね。


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