脳・神経の病気/パーキンソン病

パーキンソン病の治療

徐々に身体が動かしにくくなってしまうパーキンソン病。進行すると日常生活が自由に送れなくなることも。薬、外科手術、リハビリテーションの3点で、パーキンソン病に有効な治療方法を解説します。

菅原 道仁

執筆者:菅原 道仁

医師 / 家庭の医学ガイド

パーキンソン病の治療法

パーキンソン病の治療は大きく3つに分けることができます。
  • 内服治療(薬を飲む)
  • 外科治療(手術をする)
  • リハビリテーション(身体を動かす)

パーキンソン病の内服治療

パーキンソン病は脳内で「ドパミン(ドーパミン)」という物質が十分に作られなくなる病気。このドパミンを何らかの方法で補うことが、治療の中心となります。治療に使われる薬物は、直接的にドパミンを増やす作用のある薬を飲む方法と、体内にあるドパミンを有効利用しやすくする作用の薬を飲むことによって、間接的に体内のドパミンを増やす方法の2種類に分けられます。

パーキンソン病の状態によって各々を使い分けるため、ときには2~3種類以上の薬を飲むことも。内服治療を開始する時期はいろいろな説がありますが、パーキンソン病の症状があれば早めに治療をする方が良いという考えが一般的になってきています。我慢しすぎると、筋肉がこわばり、そして身体が固くなってしまい、日常生活をおくることが難しくなります。薬の副作用を恐れてしまい、治療を遅らせてしまうことはお勧めできませんので、早めに専門医を受診しましょう。

パーキンソン病の内服治療の注意点

主な副作用と注意しなければならないことを列挙します。

■ オンオフ現象とジスキネジア
5年以上の長期治療をしていると、薬が効いている時間が短くなることがあります。このことを「オンオフ現象」といいます。そして、ときには手足がくねくねと勝手に動いてしまう「ジスキネジア」とよばれる現象が起こる場合もあります。この症状は、薬の種類を変更したり、薬の量を増やしたり減らしたり、あるいは飲み方を変更すると改善することが多いので、携帯電話のビデオ機能等を使って記録を残しておくと、診察の時に参考になります。

■ 吐気、食欲不振、便秘
ドパミンは脳神経に作用するだけでなく、腸にも作用して動きを遅くすることがあります。その結果、吐気や食欲不振や便秘といった症状が出現しやすくなるのです。その場合は、ドパミンの作用を緩める吐気止め(ナウゼリン)や便秘を改善する薬を併用すれば改善します。

■ 幻覚、妄想
高齢者に多い副作用ですが、すこし忘れっぽい症状がある場合に、いるはずのない家族の顔が窓の外に見えたり、テーブルに虫がはっていたりすると訴えたりします。これらは、薬の量を調節すると改善する事が多いので、ご家族が主治医に報告することが大事です。

■ 眠気
パーキンソン病で使用する薬の多くは眠気を誘うことが知られています。服用時は、車や自転車を運転するのは止めましょう。

■ 悪性症候群
定期的に飲んでいた薬を急に止めてしまうと、高熱が出たり、パーキンソン病の症状が非常に悪くなる悪性症候群を引き起こしかねません。悪性症候群は命にかかわることがあるので、旅行をする場合は必ず忘れずに持って行きましょう。

薬の副作用が怖いからといって、飲む量を自分で調節したり、飲むタイミングを勝手に変更するのは危険です。また、パーキンソン病の薬と一緒に飲んではいけない薬は少ないのですが、別の医療機関にかかるときや市販の薬を服用するときは、必ず今飲んでいる薬の情報を病院や薬局に伝えて下さい。

薬は決してやめれないわけではなく、変更できないわけではありません。パーキンソン病の症状にあわせて変更することは可能ですから安心して下さい。

パーキンソン病の外科治療

このような手術治療を行うと、パーキンソン病の症状が軽減します。(出典:http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~neuro-w1/clinical_cases/function/parkinson_qa.html)

このような手術治療を行うと、パーキンソン病の症状が軽減します(出典:山口大学医学部脳神経外科

1990年頃からパーキンソン病に対する手術治療が徐々に普及してきました。残念なことにパーキンソン病を治癒させる治療方法ではないのですが、電極を脳の視床下核という場所に埋め込み、それに弱い電流を流すことによって、薬の効果と同様の効果を得られる治療方法です。視床下核を適切に刺激すると、内服量を減らすことができたり、薬の効いていない時間を短くしたりすることができます。

ただし、電極と電流を発生する刺激装置を身体に埋め込むので、MRIや電気メスを使用してしまうと故障をしてしまうことがあります。また、携帯電話を使用するときは、刺激装置を埋め込んだ場所から22cm以上離して使用しましょう。また、装置を埋め込んだ場所の皮膚が赤くなったり、ただれたり、熱が出たりした場合は、すぐに主治医の診察をうけてください。

パーキンソン病のリハビリテーション

パーキンソン病になってしまうと、身体が動かしにくくなるので、身体を動かすことを心掛けていなければ運動不足になります。薬や手術で症状を和らげたあとは、良く身体を動かすこと、すなわちリハビリテーションが日常生活の改善に役に立ちます。

運動で一番のお勧めは、手軽にできるウォーキング。心臓が悪くて運動を控えるように言われている方以外は、だれでもできます。運動量を把握するために歩数計をもちいて、歩いた歩数を毎日記録するといいでしょう。しかし、歩いている時につまずいて転倒する危険性があるので、1人で散歩には行くのはお勧めできません。ダラダラ歩くよりも、すこし早歩きのほうが効果的。ただし息切れをするほど早く歩く必要はなく、一緒に散歩している人と会話ができるくらいの速さで十分に効果があります。

次にお勧めなのは関節をやわらかくするストレッチ。とくに腰、肩、そして足首を伸ばすことをやってみましょう。また、筋力を回復させることも重要。たとえば、朝、布団から出る動作を繰り返して10回やってみたり、食事のときに座っている椅子からの立ち上がり動作を10回繰り返して見て下さい。これらは、すぐに効果は出ませんが、根気良く続けましょう。そうすれば、外出する事がますます楽しくなり、精神状態も安定します。

パーキンソン病になると飲み込みが悪くなり、肺炎になったり、窒息してしまうことがあります。だからといって、食事をしなければ栄養が十分に取れなくなるので、食事に工夫をしていましょう。
  • 一口で飲み込める大きさにする
  • 固くてのどにつかえそうなものは避ける
  • 急いで食べるのは禁止。口の中に食べ物が無くなってから、次の食べ物を
  • 水分でむせるのならば、とろみをつけるのが効果的
  • 噛むと水分が出る果物はむせるので注意する
  • 肺炎を起こしにくくするために、歯磨きや入れ歯の手入れはこまめにする
むせ込みがひどい場合は、食事以外でも栄養を取ることができる方法があるので、栄養不足や肺炎になるまえに主治医と相談しましょう。
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