女性の健康/女性におすすめの健康法

独身者よりカップルの方が長生きするって本当?

信頼・依存という心の関係を含めた人と人とのつながりが、良い健康状態や長生きに関わっているという考え方があります。今回はそれを裏付ける、長生きに役立つ意外な調査結果の一部をご紹介します。

山田 恵子

執筆者:山田 恵子

医師 / 女性の健康ガイド

日本が長寿世界一な理由は何?

長生きする秘訣を教えて!

長生きする秘訣を教えて!

その昔、本の中で星の王子様は「大切なものは目に見えないんだよ」と言いました。ところが、その「目に見えない大事なもの」が長生きに関わっているのかもしれないというマジメな研究があるのです。

実は最近、信頼・依存という心の関係を含めた人と人とのつながりを目に見える「資本」という形で考え、目に見えるよう可視化して健康との関係を明らかにするという考え方が広まってきています。ちょっと難しい言葉になりますが、この考え方を「social capital(社会関係資本)」と言います。

これは最近10年くらいで医学(公衆衛生)の分野で急激に取り上げられるようになってきた概念。定義はまだ少しあいまいな部分もありますが、専門的には 「グループ内ないしはグループ間の協力を容易にさせる規範・価値観・理解の共有を伴ったネットワーク」(2000年 経済協力開発機構(OECD)専門家会議による)とされています。

以前、13歳まで日本で過ごされ、日米両国の実情をよく知った上でハーバード大学でsocial capitalを研究されているイチロー・カワチ先生にお話を伺ったことがあります。先生はこの研究の第一人者ですが、「social capitalが健康問題を考える1つのキーワードではないか」とおっしゃっていました。例えば日本が長寿世界一である原因は食べ物や気候だけでなく、social capitalという信頼関係、人と人との結び付きといった社会関係資本がうまく作用しているからではないか、と考えられているのです。

しかしsocial capitalがよい面ばかりとは限らないのも事実。その働きが強すぎると「多様性に寛大でなく、時として個人の自由が制限されるほど規範に従うことが期待される」「異質なものの排除」といった、いわば「出る杭は打たれる」といった風土を生む側面も持っています。ほどよい緩やかな人と人との結びつきが、健康や長寿には重要なのではないか、まさに「仲良きことは長生きかな」といった感じでしょうか。なんとなく納得ができる気がしますよね。

今回は長生きするために参考になりそうな研究について、さらに2つほどご紹介します。女性の健康管理に限らず、長生きする人の共通点とは?

「カップルの方が長生きは本当」という調査も!
ただし独身を貫いた高齢者は別!?

恋愛やセックスが女性の心身の健康に影響するという情報を、最近は雑誌などでもよく目にすると思います。それとは少し違うかもしれませんが、どんな状態で暮らすかということと長生きの関係を調べた調査があります(1999年時に40~90歳だったフランス生まれの男女約17万人を対象としています)。結婚しているかどうかにかかわらず半年以上の共同生活を送る2人をカップルとみなしました。

40~50歳のカップルの死亡率は、配偶者と離別した人や死別した人、独身者のグループに比べ、男性で3分の1、女性で半分でした。これは他の年齢層でも同様の傾向が出ています。さらに子どもの数が2人のカップルが最も死亡率が低く、それ以上でも以下でも死亡率は高くなりました。

ただし独身を貫いた高齢者は例外! 80~90歳の男性のうちカップルで暮らした経験がない人の年間死亡率は7.7%。カップルで暮らす人の死亡率は8.8%なので、一生独身を貫いた高齢者はある意味長生き傾向にあるといえるかもしれません。これは女性でも同じでカップルの女性の死亡率5.0%に対し、カップルで暮らした経験がない女性は4.7%という結果になりました。

※仏 国立統計経済研究所(INSEE):Les personnes en couple vivent plus longtemps.Insee Première n°1155 - août 2007.
■関連サイト:http://www.insee.fr/fr/ffc/ipweb/ip1155/ip1155.html
 

「くよくよしない人は長生き」は本当!?

親類関係ではない100歳を超える人たちの子ども246人を対象に、神経症的傾向、外向性、寛大さ、同調性、誠実さを評価するアンケートを実施した調査があります。(100歳以上の方を直接テストするのではなく、その子どもである男女の調査で、調査対象者の平均年齢は75才。本人よりも多くのことを調査できるというメリットからこのような調査になりました。)

この調査では、100歳以上の長寿の親を持つ男女は、ともに神経症性に関しては得点が低く、外向性は高いという結果が出ました。女性は同調性が高得点でしたが男性は標準的で、誠実さと寛大さについては男女とも標準的なスコアを示しました。この調査結果からは、気さくで社交性があり、あまりくよくよせず、比較的ストレスを溜め込まない人が長生きしていると考えることができそうです。

※米 ボストン大学:Journal of the American Geriatrics Society ,April 2009
■関連サイト:http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=67531014&expand

長生きはもちろん遺伝子レベルで決定されている部分もあります。しかし、後天的なライフスタイルの影響も大きいもの。食事に気を遣ったり、太りすぎややせすぎにならない体型管理に気をつけたり……という身体面での健康管理をしている人も多いでしょう。さらに長生きを望むなら、身体面の管理と同様、周囲の人たちと心地よい人間関係を築いて、上手にストレスを解消しながら生活することが、長生きの秘訣なのかもしれません。
 
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