仕事・職場のストレス

更新日:2010年02月22日

売れない時代こそ、「心」のある働き手を育てる

大不況の下、安くていい商品でも物が売れず、産業界、とくに中小企業では労使共に苦しい状況が続き、打開策を探る企業も多いでしょう。そんななか「カウンセリング」によってモチベーション向上と業務改善に結びついた、ある企業の例をお伝えします。

カウンセリングによって問題を整理する習慣が身に付く

------中小企業の経営者の方には、「カウンセリングなど、すぐに儲けにつながらないからムダだ」と言われます。しかし、どうして御社は積極的なのでしょうか?

「社長の顔が見えない」の一言で社長室をなくし、社員に向かってデスクを配置

「社長の顔が見えない」の一言で社長室をなくし、社員に向かってデスクを配置

たしかに広告とは違って、ダイレクトに数字と結びつけるのは難しいでしょう。しかし、この時代、どんなにいい物だってなかなか売れやしません。ましてやご存知の通り、二輪業界はライダー数が激減して、業界自体が縮小している状況。だからこそ、商品を作る人、売る人の「心」のあり方が大事なんです。つまり、開発商品やセールスに、いかに「こんな商品をつくりたい」「こういう顧客にアプローチをしたい」と魂を込められるか。

そういう私も、つい最近まで「これをやれ!」とトップダウン方式で通してきましたが、それでは社員の心は育たず、「指示待ち」になってしまいます。自発的な気持ちでどんどん新しいことに挑戦する「前進力」を持つ社員が増えないと、中小企業は絶対に伸びていかないのですから、トップダウン一辺倒ではダメなのです。

------社長ご自身が、社員に威圧的に接していた時期があったとのことですが、どんなきっかけで変わられたのですか?

ムカムカすると目の前にある電話を投げたりして、電話機3台くらい壊していた時代もありましたね(笑)。社員にも、「なんだこの仕事は!」と頭ごなしに叱りつけていました。その頃は離職者が多かったのですが、その一人に「社長のおっしゃることはすべて正しい。でも……自分にはついていけません」と言われたときには、ショックでしたね。上司が部下に一方的に叱り飛ばしていると、正しいことを言っていても社員は息切れする。

------パワハラ的な態度は、会社のためにもならないということですね。

パワハラ環境では、社員の「こうやってみたい」というチャレンジ精神が湧かなくなります。すると、新しい商品のアイデアや売り方を考えることができないわけです。だから、私は指導時には、まず良いところを先に指摘するように心がけるようになりました。良いところをフィードバックして、それから「ここは、もっとこうするといいぞ」と社員のやる気を引き出すような指導をするようにしています。

こうした部下への接し方も、カウンセリングで気づかされることが多いわけです。今までは「こんな対応じゃまずいよな」と思っていたことも、カウンセラーにざっくばらんに話すことで考え方の整理ができ、「そうだ、次からはこうしよう」と整理し、実行に移すことができるわけですから。

------そうした積み重ねが、業績アップにつながるわけですね。

着実に業績向上につながっている、という実感を抱いています。先ほどにも述べましたが「物」の売れない時代だからこそ、社員や顧客の「心」を大事にする必要があるからです。心のある商品、心のあるセールスにこそ、見る人、買う人の心は動かされるものです。

私もいずれは、この仕事から引退するときがくるでしょう。そのときには、仕事の実績や収益、自己満足だけではなくて、「人と関わって、人の心を豊かにする仕事をこれだけやってきた」という精神的な達成感がほしい。そのためにも、自分もまだまだ発展途上ではありますが、社員にも当社の仕事を通じて自己を成長させ、この仕事の喜びを人に伝えられるような豊かな人間に育ってもらいたいのです。

インタビューを終えて……ガイドの感想

モヤモヤはまず「話す」。すると「ではどうする?」の答えが見つかる

モヤモヤはまず「話す」。すると「ではどうする?」の答えが見つかる

冒頭にも述べましたが、カウンセリング制度を導入しているのは大企業や上場企業が中心であり、中小企業にはなじみの薄いものです。しかし、少数精鋭で1人当たりの責務が重く、しかも相談相手も少なく悩みを抱え込みやすい中小企業の社員にこそ、実は身近にカウンセリングを受けられる機会が必要なのです。

今回、お話を伺った(有)サインハウスの白松社長が述べたように、カウンセリングを続けると「問題を整理して対策を考えるしくみ」が自然に身に付きます。最初はただの愚痴にすぎなくても、カウンセラーに話していくことで合理的、論理的に物事を整理できるようになってくるのです。これは、仕事の能力を高めるためにも、非常に役立つ点です。

近年では、働く人のストレスが深刻化し、うつ病などのメンタルヘルス不全に陥る人が急増しています。しかし、身近にカウンセリングを受ける機会があれば、モヤモヤした気持ちを整理し、自分一人で悩んできた重い問題を解決できるチャンスも増えます。また、社員が抱えるストレス傾向を経営者に伝えて業務改善の目安にしてもらうことも、カウンセリングの有機性を高めるポイントにもなります。デフレで心も荒みがちな昨今ですが、まずは不安な気持ちを話して受け止められることに、不況を打破する糸口があるのかもしれません。

ガイド所属のメンタルヘルス支援企業 (株)ハートセラピー
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この記事の担当ガイド

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大美賀 直子

メンタルヘルスの分野を中心に執筆する産業カウンセラー、ジャーナリスト。都内私立大学学生相談室カウンセ…

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