大企業で働く人にとっては、企業内保健室や外部EAPが提供するカウンセリング制度はおなじみのものですが、中小企業では導入している事例がほとんどないのが現状です。しかし、少人数であるがゆえに悩みのはけ口が少なく、仕事の量、質、労働時間ともに過重な負担がかかる中小企業にこそ、不安や不満を相談し、客観的な視点から業務改善を提案する産業カウンセリングが求められているように思います。
今回は、ガイドが産業カウンセラーとして(所属:
(株)ハートセラピー)定期訪問して毎月約5名の社員をカウンセリングし、従業員のモチベーション向上と業務改善に結び付いた中小企業の事例をぜひご紹介したいと思います。
◆カウンセリング事例:
(有)サインハウス
東京・自由が丘にオフィスを構えるバイクパーツ、バイク用品のメーカー、総合商社。「サインハウス マウントシステム」「B+Com」など二輪の世界を拡げる自社商品の開発に力を入れている。創業1987年、年商8億円、従業員15名
「カウンセリング」で業務改善に結びついた中小企業
------カウンセリング制度のある中小企業はごく少数であるなか、導入された経緯についてお聞かせください。
当社(有)サインハウスは、小規模でベンチャー性の高い会社ですから、やる気のある社員にとっては、実績を増やし、創造性、企画性を伸ばせるチャンスが多い会社だと思います。とはいえ、自分で考えて仕事をつくりだしていく姿勢が求められますし、やる気のある社員ほど評価はされる反面、働きすぎたり、プレッシャーも強くなる傾向があるのです。そこで、カウンセリングによって自分のストレス状態に気づき、自己解決できる問題はカウンセラーと一緒に考えて解決し、会社側の改善が必要な部分は経営的に善処する、という良いサイクルをつくれたらと思って導入しました。
------カウンセリングは「心の病気になった人が受けるもの」という印象があるのですが、社員の自己改善のため、そして会社の改善のために積極的に取り入れることこそ、理想的な産業カウンセリングの形です。
お話をいただいたのは、(有)サインハウス社長の白松和豊さん
カウンセリングのなかで話してくれるちょっとした愚痴にこそ、本人と会社にとって今、改善が必要な問題が隠れているのではないでしょうか。ところが、社員に「不満があったら話して」と話しかけても、社長に正直に話してくれる社員なんてまずいません。関係のない外部のカウンセラーだからこそ、心の中にモヤモヤしている不安や不満を話してくれるんです。当社は自由が丘にあるので、おしゃれなカフェで好きな飲み物を注文しながら、ちょっとした不安や不満を相談してもらっています。会社から一歩外に出て、世間話のように話した方がリラックスしますし、本音も出やすいのでしょう。
-----カウンセリング後には、社員のストレス傾向や社内の業務改善点の報告書をお渡ししていますが、対応も早いですよね。
直すべきところは、すぐに直すようにしています。たとえば、「過労傾向が目立つ」と言われたときには残業のチェックを行っていますし、「社長の顔が見えない」と報告された後には、すぐに社長室の仕切りを取り払って、社員とのコミュニケーションを増やすようにしました。経営者である私自身への改善点もたびたび指摘されて耳が痛いのですが、自分を見つめ直すいいチャンスだと捉えて、参考にしています。匿名性が守られているので、発言してくれた社員が気まずくならないことが、カウンセリングのいいところでもありますよね。
------社員さんも、会社が意見を素直に受け止めて改善していることが分かり、カウンセリングの信頼性にもつながっているのだと思います。
以前は、社員を採用しても離職者が多く、なかなか中堅社員が育たないことに悩んでいました。しかし、カウンセリングを導入していからは社員が定着するようになりましたし、新入社員同士でもやる気を高め合ったり、自然に、自分の能力や適性を生かせる働き方を考えるようになっています。悩みに埋没していないで自ら問題点を洗い出し、解決の糸口を考える習慣を身につける。そうした「問題を整理して対策を考えるしくみ」を学習するためにも、カウンセリングは非常に役に立っていますよ。