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FDA(米食品医薬品局)も警告しています 飲む中絶薬とは

最近、ネットを通して購入した『飲む中絶薬』をめぐるトラブルが報告されました。今回はその薬について少しご説明致します。

山田 恵子

執筆者:山田 恵子

医師 / 女性の健康ガイド


最近、インターネットを通じた個人輸入で出回っている『飲む中絶薬』。

・服用してはならない子宮外妊娠の人が服用して緊急手術
・出血が止まらない

など・・・緊急事態が発生して手術に至ることがあることが分かり、厚生労働省が調査に乗り出したとのニュースがありました。

個人輸入は薬事法の規制を受けませんが、その分個人責任を問われます。しかし、命に関わる事故がおきかねないとあっては一大事ですので、今回は飲む中絶薬について少しご説明致します。


飲む妊娠中絶薬ってどんな薬?

飲み薬の中絶薬・・・
飲み薬の中絶薬って・・・
現在、飲む中絶薬として流通しているのはmifepristone(商品名『RU486』『Mifeprex』)という成分の薬です。そもそもフランスで1980年に開発され、1988年に発売されました。妊娠初期(最終月経日より49日以内)に経口で摂取し、受精卵の着床や妊娠維持に働く黄体ホルモンの働きを抑えることで妊娠を終了させます。

その後、misoprostol(prostaglandins)と呼ばれる子宮収縮剤を経口で摂取し、比較的自然流産に近い形の中絶を行うのです。

注意!中絶成功率の影には手術を必要とする可能性も

アメリカの製薬会社(Danco Laboratories, LLC, New York, N.Y. )によればこの方法での中絶成功率は92~95%としています。また、FDAもこの方法をとっても100人に5~8人の確率で外科的処置を必要とする(つまりは手術になる)と報告しています。

アメリカでは、米食品医薬品局(FDA)が2000年2月に一度承認を延期しました。しかし9月に再度条件付きで承認するという一幕がありました。これはアメリカでは中絶をめぐってテロを含む激しい議論があることと無関係ではないと思われます。あまり日本では報道されませんでしたが、先の大統領選の争点となった薬剤です。

ところが皮肉なことに、2002年、製薬会社(Danco Laboratories)は同年8月の時点で、この薬の売り上げ量が前年同期比で36%激増したと発表していました。その時点で10万人以上の米国女性が服用した計算になります。


FDAによるガイドライン

詳しく知りたい方はこちらへどうぞMifepristone Information
参考までにFDAによる公式ガイドラインをご紹介します。
まず600mgのmifepristoneを経口摂取した後、2日後に400mgのmisoprostol(子宮収縮薬)を摂取。

またきっかり14日後にきちんと妊娠が終了したかを確認することになっています(不完全に終わることもあるため)。


つまり、患者さんは薬の使用日(1日目)と3日目、14日目に医師を受診しないといけないことになっているのですね。逆に3日目と14日目に受診できない人には処方してはいけないことになっています。

しかも、アメリカらしいといえばアメリカらしいですが、何かあったときの為に『患者さんと薬を処方する人は電話番号を交換していつでも連絡できるようにするように』とまで警告しています。


使用したほとんどの女性に訪れる副作用

使用したほとんどの女性にまず痙攣(cramping)と出血(bleeding)がおこります。出血は大体9~16日続きます。長い人では30日くらい続くこともあります。約100人に1人位の確率で、出血がひどく、手術して止めないといけない可能性があります。その他、下痢、吐き気、頭痛、嘔吐、背中の痛み、だるさ、めまいもおこります。


使用してはいけない人

こんな人は使用してはダメ!
こんな人は使用してはダメ!
  • 子宮外妊娠の人
  • IUD(避妊具)の入っている人
  • 慢性副腎機能不全のある人
  • 長期ステロイドを飲んでいる人
  • mifepristoneおよびmisoprostolまたは他のプロスタグランジン製剤にアレルギーがある人
  • 出血傾向のある人

    >子宮外妊娠について詳しくはこちらへどうぞ子宮外妊娠について教えて!


    熟練した医師のみが処方可能

    そしてFDAはこのお薬を処方して良い医師というのは熟練した医師、つまり、『妊娠の時期を正確に把握できる人』で『子宮外妊娠をきちんと見分けられる人』、その上『中絶がうまくいかなかったり(たとえば胎児が思ったより大きかったなど)』『出血がとまらなかったりしたら』『きちんと外科的な処置の出来る人=つまりは手術できる人』以外は処方してはいけないと警告しています。

    そんな簡単な・・・と思ってはいけません。たとえばお医者さんは、若い妙齢の女性が激しい腹痛で運び込まれてきたら必ず子宮外妊娠の可能性を考えます。つまり、逆にいえば、子宮外妊娠は妊娠の徴候以外にあまり症状がないのです。中絶して始めて子宮外妊娠特有の症状が現れます(下腹部痛、比較的少量の性器出血、急性貧血やお腹が硬くなるなどの腹膜刺激症状、ショック症状)。子宮外妊娠はエコーや尿での妊娠検査反応、既往歴、内診で診断しますが、繰返すようですが、中絶前に診断するのは意外とかなり難しいのですね。

    (子宮外妊娠の中絶は最近は早期に発見、治療されるので死亡率は0に近いのでご安心を。ただしほとんど外科的な処置が必要になりますが。)

    自分の健康を守るためにネットの購入はしないように
    …FDAからの呼びかけ

    ちなみにいま、この薬をネットで検索してみると、ワンセットで1~2万円です。しかし、ライセンスをもった製薬会社からの薬はほとんど無く、いわゆる中国産の『海賊版』といわれている薬のようです。ちなみにFDAは自分の健康を守るためにはネットでは購入しないように呼びかけています。

    参照;Mifepristone Information


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