文章:赤堀 一仁(All About「薬について」旧ガイド)
魔法の呪文?抗生物質では、薬の働きシリーズとして抗生物質の基礎知識をまとめてみました。現在、バイオテロの疑いで世界中が感染症について関心の的です。細菌学史上重要な細菌の一つである、炭疸菌が悪用されている事は嘆かわしい限りです。ドイツの大手製薬会社は自社の抗生物質の増産に乗り出しているようですが、その判断はいかがなものでしょうか?今回は、いま最も注目をあびている炭疸菌について、ニュースの用語解説をする事で、皆様の正しい認識のお手伝いが出来るようにしてみました。まずはその炭疸菌から。
炭疸菌グラム陽性桿菌のバシラス属に含まれる細菌、芽胞(がほう)を持つ通性嫌気性菌、比較的大型で、広く土壌、水、空中、草木に分布している事が多いようです。芽胞は日光や熱、消毒剤に強い性質を持っています。ちょっと専門的ですが、ここはあんまり気にしなくてもいいです。
検出された感染症というのは、その病原性微生物との接触レベルがいくつかに別けられます。その状態が軽度のものから順に以下のようになります。
保菌者:人の体の一部などに付着した状態、最も初期の段階にあたります。存在する事が多い鼻腔粘膜などから確かめます。自覚症状は無いので自分が保菌者である事を知らずに、周りに菌を広げてしまう事が心配されますが、炭疸菌の場合は大丈夫です。洗浄や消毒などの衛生面での処置で充分ですが、感染しやすさなどの違いにより抗生物質の予防的使用が必要な場合もあります。
感染者:いくつかの感染経路を通って侵入し皮膚から内側の、いわゆる体内組織に微生物が入り込んだ状態です。体の免疫機能が働いて増殖を食い止めようとしますが、様々な要因でいずれ発病に至る事が考えられるので抗生物質を服用する治療が必要です。
発病者:感染した結果、特徴的な病態を示すまでに悪化してしまった状態です。体の内部で増殖してしまい免疫機能が追いつかない状態なので抗生物質の注射などの速やかな治療が必要です。また、毒素を作り出してこれによる症状もある事があり、こうなるとやっかいです。
これらは英語で伝えられた情報を、そのまま翻訳していると全て感染者となって伝えられてしまう事があります。原文の英語の情報をキャッチするか、時間をかけて流れてくる、新聞などでその内容を確認する必要があります。
違う菌という事がわかった炭疸菌に何種類もある、という事ではありません。細菌は細胞分裂をする事で増えていくので、通常遺伝子はそのまま引き継がれます。その遺伝子を調べる事でいくつかある炭疸菌の家系のようなものが判断できるのです。流通にあたってはWHOへの登録が必要で、その届けられた情報と比較して、この菌とあの菌が違う、とか言えるのです。まあ人間で例えると日本人とアメリカ人といった感じの違いのことでしょうか。
純度が高い自然界に存在している状況では炭疸菌だけで存在している事はなく、その環境の様々な種類の他の微生物と共存しています。接触により感染するとなると、そのいくつかあるものの中からどれかに感染する事になり、特定の種類と感染する確率は低くなる事になります。ニュースで伝えている「純度を高めて感染しやすくした、、、」というのは炭疸菌だけの状態に処理され、確実に炭疸菌に感染させるようにしたものという事です。