キーワードは「恒常性」
恒常性(ホメオスタシス)がなかったら…?
そもそも人間には、外の環境がどれだけ変わっても、体内の環境を一定に保つ仕組みがあります。これを「恒常性を保つ」と呼びます。
例えば、体温を例に考えて見ましょう。冬と夏では30℃近くの温度差がありますよね。でも、もし外気の気温に合わせて、常にコロコロと自分の体温が変わってしまったら……。
「昨日は気温10度だったけど、今日は25度だよ~。さすがに10度も体温上がると体がきついよね~」
「そうね、せめて5度以内に抑えてほしいなあ」
「まあね」
みたいな会話がオフィスで繰り広げられるかもしれません。考えるだけでも大変です。疲労困憊しそうですね。
つまり、そうならないように人間の体は一定の体温(36度~38度)に保たれているのです。考えてみるとすごいことですよね。
恒常性の例…体温を保つためにどんなことが起こっているの?
例えば恒常性の一例として、体温を保つ仕組みについて考えてみましょう。たとえば、「寒い」と感じた場合には何が起こるでしょうか。
- 皮膚にあるセンサーで「寒い」という感覚をキャッチし、その「寒い」という感覚を脳に送ります(センサーは皮膚以外にもありますが)
- 脳の視床下部という所から、ホルモンや自律神経を介して、全身の器官に体温を保つ指令が出されます
- 体の各器官で熱を逃がさないような反応や熱を産生する反応が起こります
具体的には、皮膚では血管が収縮して熱を逃がさないようにしますし、カラダの中では蓄えられた糖質や脂肪を燃やして熱を作ろうとします。その熱で温まった血液が全身を循環することによってカラダが温まるのです。
体温ひとつをとってみても、私たちの知らない無意識の部分で、かなり複雑な仕組みが働いているのです。
さらに複雑な恒常性…一日の中でも規則的に変化する
一日の中でも体温は規則的に変動 |
といわれても「なんのこと?」と思われてしまうかもしれませんので、ここでまた体温を例にとってご説明します。
人間の体温(深部体温)は一日のうちでも一定ではなく、1℃以内の範囲で日内変動します。一般的に、明け方に最も低く、夕方に最高になります(図を参照)。余談ですが、目覚めてまだカラダを動かす前の体温を基礎体温を呼び、女性では排卵をはさんで0.5℃くらい変わるのは有名な話ですよね。
というわけで、一日の中でも体温は波のように一定に上がったり下がったりを繰り返しているわけです。また、今回の例では体温でしたが、血圧やホルモンの分泌も一日の中で変化します。「成長ホルモン」は寝ている間によく分泌されることでも有名ですね。「寝る子は育つ」というのは医学的にもホントなのです。
これらを踏まえて…「季節の変わり目はどうして風邪を引きやすくなるの?」
さて、ここまでご説明してきたように、人間の体は外部の状態がどうであろうと、常に一定に保つように無意識のうちに調節されているわけです。しかもそれは、一日のなかでも微妙に揺らぎながら規則的に変化するという非常に高度な仕組みです。もし自分で意識的にこの調節を行ったら……と思うとめまいがするほど大変そうですよね。ところが、私たちの体はそれを無意識に行っており、その司令塔が体温の例でご説明したように脳の中にある「視床下部」なのです。
季節の変わり目で風邪を引きやすいのは、外部の変化の激しさに司令塔の視床下部が対応しきれなくなって、自律神経やホルモンなどにすべて影響を及ぼして、ひいては抵抗力や免疫力が弱まって風邪を引いてしまうからなのです。