| すぐに病院にかけこまなければならないような、命を左右するような大病ではないのだけれど、なんだか『人には言えないカラダの悩み』をお持ちの方が多いようです。家庭の医学では、そのようなお悩みを解決する方法を数回に分けてお答えしてまいります。 |
Q.
キスで感染する、性行為感染症があるって本当?キスしただけで忘れた頃に肝炎になる性行為感染症があると聞きましたが本当でしょうか?パートナーや子どもに感染していたらと思うと、気が気でなりません。 |
A.キスで染る性行為感染症とは?
ご質問の通り、キスしただけで肝炎になる性行為感染症はあります。キス病(Kissing disease)というもので、唾液中に病原体が存在できるために、キスだけで移ってしまう可能性があります。
キス病(Kissing disease)には、伝染性単核球症という少し難しい病名がついています。この単核球症はリンパ球の事です。原因ウイルスの、EBウイルスがある型のリンパ球に感染すると、そのリンパ球を攻撃する別の型のリンパ球が増加します。最初は発熱に始まり、リンパ節が腫れてきます。ウイルス感染したリンパ球を攻撃する場所が肝臓に及ぶと肝炎と似た症状となります。
症状としては、だるさ、食欲不振、少しのお酒で酔いが回ります。場合によっては、尿の色や白目の色が黄色または茶色っぽく変わる黄疸(おうだん)を来すことがあります。
幸いな事にほとんど自然に治ってしまいます。一部の人が、無症状の状態で唾液中にウイルスを持っていて、次の感染源となります。次に感染した人は、また、忘れた頃に肝炎になる可能性があるので注意が必要です。
子供が幼いうちに親から子供へ感染した場合は、子供の免疫系の応答が弱くて、微熱とリンパ節が腫れる程度で症状が軽くて、肝炎の症状までは起きません。知らないうちに多くの人が垂直感染(親から子供へ感染)している事が多い病気です。
しかし、キス病に関しては、本人が感染した事がなくて、相手の唾液中にウイルスがあった場合は予防方法がありません。
忘れた頃に発病するのは潜伏期があるため
なぜキス病(Kissing disease)が、忘れた頃に肝炎と似た症状を引き起すのでしょう?
感染症は病原体が体に侵入してから発症するまでに、一定の期間が必要です。この期間を潜伏期間と呼びます。潜伏期間は、病原体の量と毒性、それに対する免疫反応の相互の関係で決まります。同じ病原体でも潜伏期間は一定とはなりません。ですから忘れた頃、数カ月経って発病する事が珍しくないのですね。
急性B型肝炎に御注意!

キス病のように、キスで感染するようなことはありませんが、B型肝炎も性行為感染症となります。ウイルスは血液中にあります。B型肝炎になると、数カ月、それ以上の潜伏期を持つのでまさに忘れた頃に発病します。
急性B型肝炎が発症すると、キス病の症状と同様に、体がだるくなり、食欲も落ちてきます。そのうちに尿の色が濃くなる黄疸(おうだん)の状態となります。この黄疸の段階で受診される方が多いようです。
急性B型肝炎の診断には、血液検査でウイルスがいるかどうかの確認が必要となります。ウイルス(subtype)により、病気の経過についての医学的な見通しが変わります。日本では、重い肝炎(劇症肝炎)や慢性肝炎に移行するウイルスによるB型肝炎が10%程度発症しています。劇症肝炎は時に死に至る事があります。また、慢性化すると、将来的に肝硬変や肝癌の危険性があります。治癒する型(subtype)でも入院期間は数カ月以上必要です。東南アジアでは、日本とウイルス(subtype)が異なり、慢性化する型が蔓延しています。
B型肝炎は互いの唇どうしを触れあっただけでは感染しません。予防にはキス病とは違って避妊器具を使うことがある程度有効です。
B型肝炎は病院内で業務感染の原因となりますので、医療関係者はワクチン接種を実施しています。
医療関係者以外でもワクチン接種は可能ですが、実費扱いとなります。通常は採血して既にウイルスに感染しているどうかを確認してからの接種となります。一回では十分な免疫がつかないことが多いので複数回の接種が必要ですね。
おまけ:性病は死語となりました!
1948年に試行され1999年に廃止になった性病予防法という法律がありました。ですから法律上は性病という言葉は死語になっています。この法律での「性病」とは、細菌が原因の梅毒、淋病、軟性下疳(なんせいげかん)とクラミジアが原因の鼠径リンパ肉芽腫(そけいリンパにくげしゅ)の4つの病気の事です。これらは肝炎の原因とはなりません。肝炎の原因となるのはウイルス性の性行為感染症です。
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