糖尿病/糖尿病の原因・基礎知識

血中鉄分が多いと糖尿病リスク?

貧血に悩む女性には『鉄分』の豊富な食品が勧められていますが、逆に血中鉄分が多い女性は2型糖尿病になりやすいという発表がありました。

執筆者:河合 勝幸


貧血に悩む女性には『鉄分』の豊富な食品が勧められていますが、逆に血中鉄分が多い女性は2型糖尿病になりやすいという発表がありました。
[JAMA:2004 2月11日 P711-717]

その1ヵ月前には『赤身肉に含まれる鉄分』が2型糖尿病のリスクを高めるようだという論文が臨床栄養学誌に載りました。こちらは38,000人の男性の医療従事者を12年間調べたものです。
{NJCN 2004 1月号]

どちらの論文もハーバード大学医科大学院公衆衛生学の"同じ"メンバーによるものです。
ハーバードの公衆衛生学の研究者はこのところ『食生活』が糖尿病に及ぼす影響を集中的にリサーチしています。
当Close Up!でも取り上げた『コーヒー』や『ピーナッツ』の2型糖尿病の予防効果は、いずれもこのハーバード大学の研究です。
今回は食品の『鉄分』に焦点を絞っています。

健康な女性でも血中鉄分が高レベルだと、2型糖尿病になるリスクが3倍になるというのが今回のJAMAの結論です。
これは約33,000人の健康な中年女性を1989年から1999年まで10年間追跡調査したものです。その間に約700人が2型糖尿病になったのですが、この人たちは明らかに血中鉄分が高レベルでした。
そしてこの2型になった人たちは同時に過体重で食事の摂取カロリーも多く、『赤身肉』をよく食べた経歴があります。
研究者たちは鉄分が多いとインスリン抵抗性が高まるのではと考えています。

ミネラルの鉄はからだにとって必要なものです。欠乏は危険な貧血の原因になりますが、一方で過剰に体内に貯えてしまう障害もあります。これも遺伝子の異常による鉄過剰(ヘモクロマトーシス)と輸血や肝疾患などの鉄過剰があります。
『鉄』は長い年月の間にゆっくりと蓄積されて、50歳代になると健常人が体内に3~5gしかないのに、鉄過剰の障害のある人は40~60gもストックしてしまうそうです。これらが肝臓、すい臓、心臓、皮膚、関節などに損傷を与えることは以前から知られていました。鉄過剰はすい臓のインスリンを分泌するベータ細胞にダメージを与えて糖尿病を引き起こします。大量の鉄が生みだすフリーラジカルを消去する酵素が不足してしまうからです。

研究者たちは鉄分を結合するタンパク質をチェックすれば、2型糖尿病の高リスクの人たちを見つけだして『赤身肉』の制限やライフスタイルの改善につながるのではと期待しています。
からだが必要とする鉄分は僅か1~2mg/日です。鉄分の摂取率は10%と低いので、食品としては1日あたり10~20mgの鉄分が求められます。
そして、全粒穀物や野菜の鉄分よりも赤身肉にたくさんある『ヘム鉄』、これは赤血球のヘモグロビンや筋肉にあるミオグロビンのことですが『ヘム鉄』はとても速く吸収されるのです。
体質的に鉄分をからだに溜めやすい人は食事の鉄分にも注意したいものです。
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