前回のコラムで書いたように病院に行くまでにひと悶着あることが非常に多いようですが、本当の葛藤は病院に行ったときから始まったのです。その様子を見ていきましょう。
◇病院にてAさんご夫妻はようやく二人で診察を受けに行きました。前回、奥さんの方は検査を受けているので、その結果を聞くのとAさんご本人の精子検査を行うためです。Aさんは女性ばかりの中で恥ずかしいかなと思っていたらしいのですが、意外と夫婦で来られているのにほっとしたらしいです。
診察の時間になり、奥さんの検査の結果が先生から報告されました。「前回の検査では異常がないので、次は卵管の様子を見るために通水検査をやってみましょう」ということになりました。そしてAさんはその日に採精室にて精子の採取を行い、その場で顕微鏡画面をTVで映して見せて頂きました。
その画面に二人はショックを感じたといいます。画面に映し出された精子の数は少なく、動きもあまりよくなかったからです。先生からは「これは乏精子症ですね、かなり数が少ないし、動きも非常に悪いです」
Aさんの奥さんがすかさず「先生、治療法はあるのですか?」と聞いたところ先生は「このようなケースの場合はICSI(顕微受精)という治療が最適であると考えられます」との話でした。
その時のAさんは放心状態だったといいます。こんなことが頭をぐるぐるまわっていたそうです。「子供ができないのはお前のせいだと妻を責めていたのに自分が原因とはまったくなんという情けない奴だ。それに自分の子供を作る能力もろくにないのは欠陥人間だ」
◇診察後の経過それからAさんはかなり落ち込んでいたそうです。そこで奥さんは3回目の診察の時に一人で行って先生にお願いしました。「今回の卵管の検査の時の結果が良くても、悪いという事を夫に言ってやってください。夫婦同じ立場で治療に取り掛かりたいのです。あれ以来、すっかり落ち込んでしまっているのでなんとか気持ちを元に戻してあげたいのです。」そして卵管の検査もやはり異常はありませんでした。
奥さんは家に帰って、Aさんにこういいました。「不妊の原因はあなただけではなかったわ。私も卵管に問題がある。この際、二人とも問題があるのだから一緒に協力してがんばりましょう」この言葉にAさんはほっとしたそうです。そしてがんばってみようと思ったそうです。
それから夫婦の気持ちが一つになったところでICSIの選択肢を選びました。
そして見事ICSI挑戦2回目で妊娠が確認されました。途中、OHSSなどの副作用もあったようですが、Aさんの思いやりのある行動でずいぶんその苦しさを緩和できたといいます。妊娠期間中もかいがいしくお手伝いをしてくれるAさんを見てやっぱり子供を作ってよかったなあとじみじみ感じたそうです。
そしてその後、無事出産。その子供はすくすくと育っています。もう一人ほしいなあと現在、ICSIと出産のための貯金をしているとの事でした。