実は不妊原因別に見てみると女性因子の不妊と男性因子の不妊の率はほぼ同じと言われています。しかしながら日本の文化的な面で男性が自分の原因を認めないという事も多かったのは否めない事実ですし、今でも男尊女卑の風習が残る地方では男性の不妊への認識不足が散見できます。
一方最近、メディアでの男性不妊の情報の公開やED(勃起不全)に対する啓蒙活動が盛んになってきたこともあり、徐々にその情報が一般的に伝わってきているような印象です。
男性不妊が注目されてきている最近ですが、一説によると明治時代の男性と今の男性では平均精子数が半分ぐらいなのではないかと言われています。これが妊娠率にも大きく影響している可能性があります。本日はその男性の不妊についての基礎知識 (精子数編)をご紹介したいと思います。
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現代の男性の精子は減っている!? |
<精子数によるもの>
男性不妊において最も大事なのは精子の数とその運動率、奇形率の問題です。元気で正常な精子が作り出せれば男性としての機能はそれだけでOKということになります。それでは精子は1回の射精でどれくらいあればいいのでしょうか?WHOのデータでは下記の通りとなっております。
正常精液所見 (WHO 1999)
精液量 2ml以上
pH 7.2-8.0
精子濃度 2000万/ml以上
精子運動率 前進精子が50%以上あるいは高速直進精子が25%以上
精子形態 正常形態精子が30%以上
まあこれ以上ないと妊娠の確率はかなり低くなるということです。それでは精子が少なかったり、まったくない場合の説明を行ないます。
●乏精子症(oligozoospermia)
乏精子症(精子濃度2000万/ml以下の場合を指す)とは、精子が精液中に存在しているがその濃度が低い症例についていいます。精索静脈瘤(注1)などが原因となる場合、手術療法が中心になります。あるいは、薬物治療(ホルモン療法)などで精子濃度の増加をはかります。
しかし、高度の乏精子症では、精索静脈瘤手術を施したり、薬物療法などを行っても自然妊娠の可能性は低く、通常の人工受精、体外受精法でも、受精成立が困難です。ですから、精子をガラスピペットで直接卵の中に注入する顕微授精法(ICSI)を用いることになります。
注1:精索静脈瘤とは、精巣内の精索静脈という血管弁の働きが悪くなり、血液が貯留し静脈が太くなった状態です。この精索静脈瘤があると、血流悪化し、精巣内温度が上昇してしまい、精子を造る機能が低下してしまいます。