ストレス

心の病で大切な「寛解」というキーワード(2ページ目)

一般的には使われませんが、心の病において必ず覚えておきたいキーワード「寛解」。この「寛解」の時期に心が教えてくれる大切なメッセージとは?

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

心の病を機に
変えなければならないこと

「元の生活に戻らなきゃ」というあせりが、心の病を長期化させることも「寛解」という言葉の意味を知ると、がっかりする人も多いでしょう。「完全には治らないのかな」「半病人ってことかしら?」などと思うかもしれません。

こう感じるのは、「このままじゃいけない」「今までの生活に早く戻さなきゃ」という思いがあるからではないでしょうか。

しかし、寛解という状態を理解し、心の病を再発・長期化させないようにするには、その発想を転換させなければなりません。

なぜなら心の病の場合、回復してきて寛解の状態になった頃が、最も注意が必要だからです。

「元気になったから、早く復職しよう」「今までの遅れを取り戻そう」と思って、すぐに元のペースに戻すと、突然病気が再発することが多いのです。そして、一度再発するとさらに再発率は高くなり、長期化しやすくなります。


心の病が教えてくれる大切なこと

心の病になると、今まで見えなかったものが見えてくる心の病になったときには、今までの生活のスタイルやペースへのこだわりを捨てることも必要になるでしょう。

しかし、心の病になるのは、必ずしもマイナスとは限りません。それまでの自分には見えなかった「人生の奥深い意味」や「かけがいのないこと」に、気付くチャンスかもしれないからです。

たとえば、心の病ではないのですが、若年性アルツハイマー病患者の人生を描いた『明日の記憶』はそれを示唆する名作です。仕事一筋で順風満帆に人生を歩んできた人が、病気をきっかけに何を発見したのか、自分や家族はどう変わったのか。心の病による心情の変化を理解するためにも、参考になる映画です。

自分や家族が、実際に大きな病気を経験しなければ分からないことはたくさんあります。極端な言い方ですが、心の病とは「本当に大切なこと」への気づきを促す“心からのメッセージ”なのかもしれません。


参考文献/大野裕『「うつ」を治す事典』法研 2003、『産業カウンセリング入門 改訂第3版』(社)日本産業カウンセラー協会 2006
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