ストレス

ストレス太り・過食のメカニズムとは?(2ページ目)

「ダイエットしなきゃ!」「でも食べるのをやめられない!」という気持ちの狭間で揺れ動き不安定になっていませんか?ストレス太りはどうして起こるのか、考えてみました。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

■ストレスがたまると、油っこいもの、肉類、甘いものがむしょうにほしくなるのはどうして?

前のページでふれたように、食べることでストレスを解消したいと思う場合は、とっさにスナック菓子やフライドチキン、生クリームたっぷりのケーキなど、油っこいもの、甘いもの、肉類などが頭に浮かんでいることが多いようです。野菜などのヘルシーな食べ物が頭に浮かぶ人は、少数派ではないかと思うのですがいかがでしょうか?

これら、油っこいもの、甘いもの、肉類をほしがるのは脳が求めているから、という説があります。この件に関しては、浜松医科大学名誉教授・高田明和氏も著書『「うつ」にならない食生活』(角川書店)のなかでふれていますので、一部を引用してみたいと思います。

コレステロールに関して
「脳は栄養としてコレステロールを必要としているのです。一つには脳細胞の突起は電気反応により情報を伝達しますが、電気の漏れを防ぐために突起の周囲を脂肪(ミエリン膜)で取り巻いているのです。この原料として脂肪が必要です。さらに神経細胞も膜の安定のためにコレステロールは必要なのです」

肉類に関して
「肉などを食べないでトリプトファン※を摂らないようにすると血液中のトリプトファンはすぐに低下し、脳内のセロトニン※※の量も下がります。また気分も暗くなるのです」

糖分に関して
「エネルギーを作る際に、体の筋肉などブドウ糖だけでなく、脂肪の成分の脂肪酸を使うこともできます。(中略)ところが脳だけは、ブドウ糖しかエネルギーとして用いることができないのです。そのために、ブドウ糖の供給が少なければ、脳は働かなくなり、意識を失い、これが続けば植物状態になってしまうのです」

出典:『「うつ」にならない食生活』 著:高田明和 角川書店刊 2002年

ガイド注)
※  トリプトファンとは、肉に多く含まれる必須アミノ酸のこと。
※※セロトニンとは、興奮を鎮め、精神を安定させる脳内の神経伝達物質のこと。トリプトファンが変化して、セロトニンとなる。

肉やコレステロール、糖分はカロリーも高く、ダイエットの大敵ともいえるものですが、同氏の説によると、あまり制限しすぎると気持ちを鬱屈させたり、脳の働きを悪くするものであることがわかります。


■ダイエットにいちばん必要なのは、心の安定を保つこと

さらに、ストレス太りをすると、悪いダイエットの循環からなかなか抜け出られないといわれますが、それはどうしてでしょう。これは、以下のようなメカニズムが働くからはないでしょうか?

ストレス太りの悪循環

1. ストレスによってダメージを受けた脳の働きを高めるために、衝動的に油っこいもの、肉類、甘いものをたくさん食べる

2. カロリーが高いものを食べ過ぎてしまったために、太る

3. 太ってしまった体を元にもどすために、これらの食べ物を制限する

4. 脳に必要な栄養分が減るために、衝動的に油っこいもの、肉類、甘いものをまたたくさん食べる

以後、2~4以降のくり返し・・・

しかも、無理な食事制限によるダイエットに失敗すると、より太りやすくなることもこの悪循環から抜け出られない重要な要因です。摂取カロリーを極端に少なくすると体内の脂肪が落ちて一時的にやせますが、同時に筋肉も落ちるために、エネルギーを燃焼させるための基礎代謝量が少なくなります。この状態で高カロリーの食べ物を摂ると、以前よりも燃焼しきれる分が少なくなり、燃えカスが脂肪として蓄えられてしまいます。これがいわゆるリバウンドです。

食べたいものを極端にガマンするダイエット方法がいかに脳への負担が高く、続けることが難しいかこれでお分かりでしょう。本来ダイエットは、適度な運動とバランスのよい食生活を心がけ、本来ロングスパンで取り組むものべきものです。そしてなにより大切なのは、ストレスの少ない生活を送ることです。ストレスを増やしていると脳への栄養が少なくなってカロリーの高い食べ物をドカ食いしたくなりますし、また無理な食事制限を続けているといずれ食べたい欲求を止められない日が訪れ、逆にリバウンドをしやすくなってしまうのです。

ダイエット中でも油っこいもの、肉類、甘いものを極端に排除せず、上手に量をコントロールして取り入れながら、ストレスをためない生活を心がけていきたいものですね。


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