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グルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチンの効用

テレビコマーシャルなどでもよく耳にする「グルコサミン」「ヒアルロン酸」「コンドロイチン」。それぞれ、どんな効用があるものなのかご存知ですか? その実態に迫ります。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド

サプリメントで足りない栄養素を補うという考え方は間違っている!?

まず前提になるのが「身体の中で合成される物質を、飲んで補うことはほぼできない」ということです。たとえば、よくテレビなどの宣伝でも耳にする「加齢で○○○という物質が減る」という話。加齢で含有量が減る物質があるのは確かで、それを増やす事ができれば良いのも確かです。しかし、それを外部から補えたら良いですね、というところまでは正しい考えかもしれませんが、飲んで補うとなると、医学的にはかなり怪しくなります。特に生体内で合成できる物質を経口摂取で補うという話だと、その多くは疑似科学の世界となり、現実味が急になくなってきます。

グルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチンは、
細胞間質にある合成しやすい親水性の物質

細胞外マトリックスは水分が豊富

細胞外マトリックスは水分が豊富

生体にある物質(生体物質)はカルシウムなど無機物を除くと、糖、蛋白質、脂質または複合体です。グルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチンは糖です。グルコサミンは単糖、ヒアルロン酸は多糖です。コンドロイチン(コンドロイチン硫酸など)は複数の構造があり通常は蛋白質と結合して存在している多糖類です。

人体は解剖学的部位により組成が異なります。部位により大きくは異ならないのが細胞間質(細胞外マトリックスとも呼ぶ。なぜか中学、高校では教わらない)。マトリックスというと映画を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、細胞間質とは字面通り、細胞と細胞との隙間のことです。細胞と細胞の隙間はどこにもあります。そして、どこでも合成できるためには体内で合成できない材料は使いません。また、細胞間質は細胞外液がある場所である、ともいうことができます。細胞外液には親水性の有機物質があり、含水量も調節できる有機物質があるはずです。親水性の有機物質には、糖から合成する多糖類とアミノ酸から作る蛋白質があります。

糖質は合成しやすい種類の糖から出来た多糖類の方が合成しやすく、ゆえに、グルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチンは、細胞間質に豊富に存在する糖の一種となります。

必須アミノ酸から作るとアミノ酸が足りなくなる可能性があるので、細胞間質にある蛋白質は必須アミノ酸を含まない方が合成しやすい特性があります。

口から入った物質の行方

余計な分子がついていますがグルコサミンはブドウ糖、ヒアルロン酸は澱粉、コンドロイチンは乳糖が基本構造です。経口摂取で体内に入った親水性の物質は、胃酸に強い物質の場合、消化、吸収されてから肝臓に行き、肝臓に直ぐに取り込まれなかった分は一定時間血中にとどまります。ちなみに胃は糖を吸収しませんが、小腸から単糖だけは吸収されます。

グルコサミンは、消化されずに吸収されます。ヒアルロン酸は消化されますが消化すると多糖ではなくなります。コンドロイチンは乳糖分解酵素が無い人または少ない人では消化されずに体外に排出されます。

効かない証明は難しい

細胞間質は複数の物質が入り混ざって存在しています。水分量が多いため細胞間質の量を測定するのは非常に難しく、測定方法が実質的にない細胞間質にある物質を経口で摂取した場合、摂取前と摂取後を比べる方法がありません。

コンドロイチンは軟骨に届かない!?

コンドロイチンは軟骨に関係が強い物質です。コンドロイチンが軟骨を増加させるかを確かめる事はほぼ不可能ですが、経口摂取した場合に軟骨を増加させないという論理を組み立てるのは簡単です。ちなみに中学・高校の授業では、人の細胞は血管から栄養を得ていると教えています。基本的には正しいのですが、例外も複数あります。たとえば軟骨は半透明な成分でできており血管がありません。

ですので、軟骨は関節内の液体、関節液から栄養を得ています。血中濃度が増加しても関節液中の濃度が増加しない限り効果は出ません。血液は経時的に採取する事が可能ですが、関節液がある関節腔は血液とは違って免疫担当細胞が乏しいため、皮膚を十分に消毒してから無菌的に採取しないといけません。一回穿刺するだけでも厳重な消毒が必要です。ですから倫理的に考えても、関節内に病変がない健康な人に対して関節穿刺は実施できません。

話をコンドロイチンに戻しますが、消化管で消化されると多糖でなくなり消化されないと排泄されて、関節液中からしか軟骨に届かないため、軟骨には影響しないと考えるのが妥当、というわけです。

グルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチンは無害

一方グルコサミンは、血糖を増加させる可能性はありますがブドウ糖と同じ程度です。また、ヒアルロン酸は大量に取ると水溶性食物繊維を大量に摂取したのと同じような消化器症状(下痢など)が出る可能性があります。前述のコンドロイチンは、牛乳を摂取したのと同じですので乳糖不耐症の人では消化器症状が出る可能性があります。三者ともに経口から少量摂取しても無害と考えて問題ありません。

ただしヒアルロン酸に関しては、局所に注射した場合にアレルギーが起きる事が報告されています。アレルギーはヒアルロン酸自体ではなくて注射剤に含まれている不純物によるものと推定されています。

それでも摂取したい人はグルコサミンを

グルコサミンはブドウ糖と似た構造

グルコサミンはブドウ糖と似た構造

放射線(放射能)といっただけで拒絶反応を起こす人も多いと思います。古典的な手法ですが、放射性同位元素を使って投与したい物質を合成(作成)して動物に投与し、体のどこに放射性物質が到達したかを知るのがオートラジオグラフィー(autoradiography)です。

これまでお話しした3つのうち、消化不要で成分がそのまま吸収されるのはグルコサミンです。グルコサミンは動物に取り込まれる事が証明されていますので、飲む理由を合理的に説明することはできませんが、どうしても飲まずにいられない方にはグルコサミンをお薦めします。

昆虫、甲殻類や植物も多糖類を使っています

合成しやすい多糖類を体の成分として使うのは地球生物の共通点です。実はヒアルロン酸、コンドロイチンのような多糖類は、植物や昆虫・甲殻類も体の成分として使っています(しかし使い方は細胞間質とは異なります)。一方、植物から精製して紙の主成分となるセルロースも多糖類で、昆虫、甲殻類(甲殻類の殻)の外骨格の主成分もまた多糖類(キチン・キトサン)です。人を含めて多くの動物はやセルロースやキチン・キトサンを残念ながら消化できません。草食動物は自身ではセルロースの分解ができないので、腸内の細菌がその役割を担います。
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