食と健康/食と健康の基礎知識

貧血は鉄分だけで改善する?(3ページ目)

「山」と「川」のように、「貧血には鉄分」とお決まりの言葉がありますが、これは果たして正しいのでしょうか? また、鉄分をサプリメントで補う場合、その量は多すぎ? 少なすぎ? 素朴な疑問にお答えします。

執筆者:吉國 友和

鉄分の過剰摂取に要注意

鉄分・ビタミンCの豊富な野菜は?
肉・野菜を組み合わせて料理をすると相乗効果が生まれることもあります。ある意味では漢方薬の考え方に近いのではないでしょうか
酸素を運搬する役割であり、かつ貧血の目安となる「ヘモグロビン」は色素部分である「ヘム」と蛋白部分の「グロビン」で構成されています。「ヘム」の中心部には鉄が存在し、ここに酸素が結びついて運搬されます。このため、ヘモグロビンを作り出す材料である鉄分が不足してしまうとヘモグロビンの絶対量も不足して、貧血が生じることになります。

昔から「お茶(コーヒー・紅茶)と一緒に鉄剤を服用すると効果が低下する」、ということが知られていますが、これはお茶のタンニン酸という成分が胃酸によってイオン化した鉄(free Fe3+)に反応するためです。胃薬や抗菌薬(抗生物質)の一部、甲状腺ホルモン剤などと一緒に服用しても吸収される鉄分は低下します。また、胃薬と同様に胃酸が乏しい状態、例えば胃の手術で部分もしくは全切除を受けられた方では食事中からの鉄分も吸収されにくくなります。


サプリメントとして服用する量とポイントは?

前ページでご説明しましたように、食事中に10mg含まれていても吸収される量はせいぜい1mgと、鉄分はもともと吸収されにくい物質です(正常では5~10%の吸収率)。しかし、稀ですが過剰摂取によって害となることもありますので、体内にどの程度鉄が貯蔵されているのかを確認しながら治療を行います。

この点を踏まえた上での参考ですが、医療機関で「鉄欠乏性貧血」の治療として処方する鉄剤の目安は、1日に鉄(Fe)として100~200mgです。食事中の目安からすると10倍以上ですが、これは鉄分の貯金というべき、貯蔵鉄も補う必要があるためです。

鉄乏性貧血ではヘモグロビン濃度は約1ヶ月してから徐々に上昇して一定の状態に達しますが、短期間で服用を中止すると貧血が再発することがあります。このため、貧血が改善してからも1~3ヶ月ぐらい、血液検査を行いながら治療を続けます。鉄分を効率良く吸収するためには、ビタミンCも一緒に摂取することもポイントです。貧血に関連する代表的な栄養素とそれを多く含む食品の例を挙げてみました。
  • 鉄……ほうれん草、パセリ、納豆、マグロ、寒天、プルーンなど
  • ビタミンC……レモン、かんきつ類、お茶(煎茶)など
  • ビタミンB6……マグロの赤身、牛レバー、にんにくなど
  • ビタミンB12……さけ(魚のシロザケ)
  • 葉酸……アスパラガス、お茶(煎茶)
鉄欠乏性貧血には鉄とビタミンC、様々な疾患が原因となる巨赤芽球性貧血にはビタミンB12と葉酸といったぐあいに、栄養素もコンビネーションで摂取してみてください。


市販されているサプリメントによっては、原因の異なる貧血の治療を総合的に改善することを目的として、鉄・ビタミンB群・ビタミンC・葉酸などを配合した商品もあるようです。品種・土壌の変化で鉄分の含有量は昔に比べて低下していますが、まずは昔ながらの食事療法、ほうれん草で鉄分を蓄えましょう。


【関連リンク】
・ 理由のわからない体調不良には貧血が潜んでいる可能性が!
その体調不良はカクレ貧血かも?(All About 食と健康)
・ 夏バテの原因が貧血でなければこちらの方法をお試しください
その疲れはなぜ? 夏バテからの疲労回復法(All About 50代からの健康法)
・ 胃や十二指腸潰瘍からの出血が原因で貧血になることもあります
50代の7割が感染! ピロリ除菌の効果とは(All About 50代からの健康法)

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます