地球温暖化対策

更新日:2009年11月19日

鳩山政権の「CO2の25%削減」政策を検証する

鳩山首相は、国連の会合で「日本は、2020年までに、1990年に比べ温室効果ガスの排出を25%削減する」と演説し、内外から注目を集めました。この極めてハイレベルな目標、本当に達成可能なのでしょうか?

削減率は、一気に3倍

温室効果ガスを、2020年までに1990年比で25%削減することを世界と約束した鳩山首相

温室効果ガスを、2020年までに1990年比で25%削減することを世界に約束した鳩山首相

ダム建設の中止・凍結、官僚依存からの脱却を目指した新体制の構築などなど、総選挙でうたったマニフェストを着々と実行に移す民主党新政権。政策の柱には、「地球温暖化対策を強力に推進する」(民主党マニフェスト)ことも掲げています。

9月22日、鳩山首相はニューヨークの国連本部で開かれた気候変動首脳会合で、「二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスを、2020年までに1990年比で25%削減する」と演説しました。温室効果ガス削減に関するわが国の新たな数値目標を、世界に向かって「公約」したのです。

従来の政府目標は、この春に発表された「2020年までに2005年比で15%削減」。ちなみにこの数字を、今回の新たな目標と同じ「1990年比」に揃えると、「8%削減」になります。1990年から2005年までの間に、温室効果ガスの排出量が7%近く増加しているため、そのぶんを差し引かなければならないからです。

政権交代を挟んだ結果、削減目標はわずか数カ月で8%から25%まで、一気に3倍以上に引き上げられることになりました。

EUや米国を上回る目標

2020年までの温室効果ガス削減目標をみると、いずれも1990年比で欧州連合(EU)は20%、米国は削減ゼロ。わが国が提示した目標は、それらをはるかに上回るものとなりました。

この態度表明を受けて、EUは「地球環境の維持に貢献する」などとして、おおむね歓迎の姿勢を示しました。

地球温暖化阻止は、人類共通の課題。高い目標に向かって努力するのは大切なことです。ただし、同時に、どんな道筋でその目標に到達していくのか、そのためにはどのような努力が必要になるのかが、具体的に示される必要があります。新政権は、いかにしてこの高いハードルに挑もうとしているのでしょうか?

排出権取引などを活用

民主党政権の描く青写真を、これまで報じられている範囲でまとめてみましょう。まず、「25%削減」といっても、「日本国内から排出される温室効果ガスを25%減らす」ということではありません。海外の削減分も含まれるのです。

えっ?と思われるかもしれませんね。初めて世界各国・地域の温室効果ガス数値目標を定めた「京都議定書」では、温室効果ガスの排出量を決められた排出枠以内に抑えた国から、“余った”排出枠を買い取ることができる「排出権取引」などの、柔軟性措置(「京都メカニズム」といいます)が設けられています。これをフル活用するわけです。

もちろん、国内での排出削減も強化します。国内の企業間でも、同じように排出権をやり取りする「キャップ・アンド・トレード」という仕組みの導入が検討されています。排出権を売る企業も、買わざるをえない企業にとっても、ともに排出量削減のモチベーションとして働くという計算です。

また、ガソリンなどの化石燃料に、CO2の排出量に応じて課税する「環境税」の導入も取りざたされています。あわせて、これまでも推進してきた太陽光発電の積極的な導入や、原子力発電の拡充に取り組んでいくものと考えられます。

値上がりする温室効果ガス排出権

とはいえ、目標年まであと10年。はたして計画通りにいくのでしょうか? 問題提起の意味で、あえて疑問点を述べておきたいと思います。

先ほど述べたように、国内、海外合わせて25%削減という方針ですが、ではそれぞれどのくらいずつ減らすのか? 現状では「決まっていない」(小沢環境大臣)のです。もちろん、「最大限国内での排出量を減らし、不足分を海外から買う」のが基本になるとは思いますが、これだけ高い目標なのに“目安”もないことに不安を覚えるのは、私だけでしょうか。

わが国は、すでに東欧諸国などから排出権を買っています。新聞報道によれば、今年3月にウクライナとチェコから購入し、その価格がそれぞれ数百億円。実は、この温暖化ガス排出権は、年々先進国同士の争奪戦が激しくなり、価格が上昇気味。今回の日本の“新公約”発表により、「相場」が急上昇するのではないかと懸念する声もあります。今後、巨額の財源が必要になるのは必至。ただでさえ厳しい財政事情は、どうなるのでしょう?

政府が導入を検討しているキャップ・アンド・トレードについては、たとえば各企業の排出枠をどのように決めるのかといった難問に、回答を出さなければなりません。この仕組みについては、また改めて考えてみたいと思います。

家計負担は、年36万円!?

いずれにせよ、温室効果ガス削減は、全体として経済活動を停滞させる方向に働きます。政府(前政権時代)の試算では、国内総生産(GDP)は3.2%押し下げられるそう。一方で、温室効果ガス排出抑制のためにさまざまな投資が必要になります。それらの負担なども含めて、1世帯当たり年間36万円の負担を覚悟しなければならないとはじき出しています。

ただし、これは、あくまでも25%削減を国内対策のみで実現すると仮定した場合。鳩山政権は、海外からの排出権の購入なども踏まえた国民負担や経済効果などについての新たな試算を行なうため、菅副総理をヘッドとするチームを立ち上げました。12月までに公表するとしているその数字に、まずは注目したいと思います。

繰り返しになりますが、CO2排出削減は喫緊の課題。しかし、現実の経済、私たちの暮らしとのバランスもまた、十二分に考慮されなければなりません。もう一度、課題を精査し、国民が知るべき情報はその都度公開してもらいたいと思います。

【関連リンク】
CO2以外の温室効果ガス排出抑制への取り組み

この記事の担当ガイド

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南山 武志

エネルギーの現状や“とっつきにくい”技術を、「文系」のココロでわかりやすく解説。

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