企業のIT活用/生産管理/物流/在庫管理

在庫管理システムが使われない理由と業務に導入・活用するポイント

在庫管理システムをうまく活用できていないケースは意外に多いもの。業務に導入・活用するポイントは3つ。「情物一致できる業務の流れにすること」「棚卸回数を増やして在庫管理の精度を高めること」「人がなるべく介在しない仕組みにすること」です。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

在庫管理システムとは在庫を管理するもの

在庫管理システムが使われない理由と業務に導入・活用するポイント

在庫管理システムとは在庫の過不足を把握するためのシステム

在庫管理システムとは、社内外にある在庫を管理するためのシステムです。

会社は在庫を販売することで売上を上げています。ただ、在庫を持ちすぎると倉庫代など様々なコストがかかりますし、反対に必要な時に在庫がないと失注につながります。

在庫が会社の売上を大きく左右するため在庫を適切に管理しなければなりません。そのために必要なのが在庫管理システムです。

在庫管理システムは、導入さえすればうまくいくものではありません。
せっかく在庫管理システムを導入したのに顧客から注文が入るたび担当者が倉庫へ走り、現物の在庫を確認している企業があります。これは、社員が在庫管理システムの画面に出ている在庫の数字を信用していないからです。これでは在庫管理システムを活用している、とはいえません。
   

在庫管理システムが使われない原因は「情物一致しない業務の流れ」

活用される在庫管理システムにするには情物一致が必要です。情物一致とは情報の流れと物の流れを一致させることですが、これが一筋縄ではいきません。

在庫は入庫と出庫の差で計算できますが、多くの会社では入庫数、出庫数を人間が伝票を見ながら在庫管理システムに入力します。

業務の流れが下記のようになっていたとします。
  • 朝、出庫伝票をもとに倉庫から出庫・配送する
  • 夕方、たまった出庫伝票を総務部へまわす
  • 総務部で出庫数を在庫管理システムへ入力し、在庫を確定する
この運用の場合、日中、在庫管理システムの在庫数と倉庫の実在庫数が合わなくなり、問い合わせがあると担当者が現物確認のために倉庫へ走ることになります。
 

ポイント1:業務の流れを見直して情物一致させる

在庫管理システムを活用するには、まず関係部門が集まって現業がどうなっているか分析する

在庫管理システムを活用するには、まず関係部門が集まって現業がどうなっているか分析する

まずは関係部門が集まって業務の流れを分析します。現場では、この関係部門を集めるまでが大変で、役員に意義や効果を説明した上でトップダウンで行わなければなりません。

関係部門が集まり、在庫の状態や在庫管理の流れを物の動きと情報の動きから分析します。次に情物一致させるには、どういう業務の流れにすればよいか考えます。

例えば物と情報のタイミングがあうようにデータ入力する部署を変更します。仕事が変わることになるので現場の抵抗が発生することが多いですが、ここもトップダウンで乗り切らなければなりません。

前の例では、
  • 出庫部門が出庫時に在庫管理システムへ入力する
  • 出庫伝票と在庫管理の画面プリントをつけて総務部門へ回し、二重チェックする
とすることで日中に実在庫と在庫管理システムの在庫が合わなくなることを防ぎ、在庫精度が高まります。
 

他にもある!在庫管理システムの在庫数と実在庫数が合わなくなる原因

在庫管理システムで、在庫管理システムの在庫数と倉庫にある実在庫数が合わなくなる原因は他にもいろいろあります。

例えば
  • 本採用に向けてサンプル出荷した在庫の引当をしなかった
  • 取扱品目が多く、品名などを確実に調べずに出庫指示したため誤配した
  • 検収していなかった在庫を引き当ててしまった
  • 不良品や返品が出た時の管理規定が整備されていず担当者まかせになっていた
※すぐに管理規定を整備しましょう

在庫管理システムを導入した当初は、棚卸をして在庫管理システムの在庫数と実在庫数を合わせたところからスタートしたはずです。上記のようなことが一つ一つ積み重なり、最終的に信用できない在庫管理システムになってしまったわけです。

では、これを解決するにはどうしたらよいのでしょうか?
 

ポイント2:棚卸回数を増やすことで、使える在庫管理システムにする

実在庫と在庫管理システムの在庫をぴったり合わせることは、人が介在する限り不可能です。ですが、「実在庫と合わない時がまれにある」という状態まで在庫精度が高まれば、その在庫管理システムを活用できます。

例えば、棚卸が年1回ならば、棚卸頻度を増やすことで在庫精度を上げることができます。

従業員を動員して棚卸を行うのが大変であれば、費用はかかりますが棚卸を専門で行う業者があるので、そうしたところにアウトソーシングできます。在庫管理システムを信用せずに社員が倉庫に走っているようであれば、そのコストで十分に引き合うでしょう。

全体の棚卸を行うのは年1回でも、倉庫全体を11区画に分けた上で、毎月1回、区画ごとに順番に棚卸を行っていけば、それほど労力を増やさずに年2回の棚卸ができます。
 

ポイント3:バーコード管理やICタグを導入して在庫精度を上げる

棚卸頻度、バーコード管理などで在庫精度を上げる

棚卸頻度、バーコード管理などで在庫精度を上げる

在庫管理システムの精度を上げるには、いかに人の介在を減らすかが重要です。入庫数や出庫数を人が入力すると、どうしても打ち間違いなどが出てしまい、在庫が合わなくなります。

ここでは、商品ごとにバーコードを貼り、入出庫時にスキャナーで読み取って即座に在庫管理システムに反映させるシステムなどが考えられます。ただし、商品にバーコードを貼る手間や設備投資は発生します。

商品個々にバーコードを貼らずとも、商品を保管する棚にバーコードを貼ってハンディスキャナーで読み取り、商品を確認してから入出庫の数量を入力すれば、バーコードを貼る手間を減らせます。人が介在するので入力間違いは起きますが、商品取り違えによる在庫ミスは防げるでしょう。

RF-ID(無線ICタグ)を活用し、無線で入出庫情報のやり取りを行えば、さらに人間の介在を減らすことができます。中国の無人コンビニなどの実例が出始めていますが、まだまだ高額なのが実情です。

在庫管理システムを導入するだけでなく、業務の流れの見直しや在庫精度を高める活動を続けることで経営に役立ちます。

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