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安易な借り替えはマイナスに作用することも! 収入合算ローン借替えの落とし穴

住宅ローンの借り替えは、余分な利息を軽減できる有効な手段ですが、収入合算による借り入れをしている場合、“こんな”落とし穴があります。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド

「連帯債務」と「連帯保証」は似て非なるもの


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住宅ローンもメンテナンスが重要!借り替えは有効だが、注意点もある。
近頃受ける相談のなかで、「住宅ローンの借り替え」に関する内容が増えています。少しでも金利の低いローンを利用することで、余分な利息の軽減を図りたいと考えるからですが、夫婦2人で収入合算して組んだ住宅ローンを借り替えようとすると、“こんな”落とし穴があります。

以下、具体的に紹介しましょう。




住宅ローンの借り替えに伴う、夫婦間の贈与について質問があります。平成15年3月に住宅金融公庫から収入合算(妻が連帯債務者)して住宅ローンを組みましたが、民間銀行へ借り替えようと考えています。その際に、購入時に夫婦で共有持分にしたため、借り替え後は妻が「連帯債務者」から「連帯保証人」になると言われました。

この場合に、住宅ローン減税は借り替え後も継続するのでしょうか?また、贈与税が発生するのでないか心配です。よきアドバイスをお願いします。


ひと口に収入合算といっても、合算者の関係は「連帯債務者」と「連帯保証人」の2種類があることは、ご存知のことと思います。住宅金融公庫など公的融資では前者の連帯債務者として扱いますが、銀行や信用金庫といった民間融資では連帯保証人となるのが一般的です。ご相談のケースも、当初は公庫を利用しているため、奥様が連帯債務者として返済義務を負っていますが、民間融資へ借り替えれば連帯保証人になるのは、そのためです。

まず住宅ローン減税の継続可否について、住宅ローン減税は「自分が住むためのマイホームを取得するための住宅ローン」に対する所得税還付制度ですが、

 ・連帯債務は夫婦共同(=連帯)で返済する → 奥様は当然に返済義務者の1人
 ・(連帯)保証人は債務者に対する債務不履行時の代弁者

ですので、連帯債務者から連帯保証人になった時点で(奥様は)直接的な返済義務者ではなくなります。従って、たとえ今までと変わらず仕事を続け、所得税を源泉徴収されていても、残念ながら奥様は住宅ローン減税を以後、一切受けられなくなります。所得税還付を当てにしていた方にとっては辛いことでしょう。


奥様が退職すると、さらに贈与の心配も!


次に、贈与について話を進めていきましょう。前段で説明したように、ローンの借り替えによって奥様は「債務者」から「保証人」になることで、形式上は直接的な返済義務を有しなくなります。

当初の購入時にご夫婦の共有名義で登記していることから、奥様が連帯保証人になっても、持分割合の変更をしないかぎり持分はそのままですが、債務者から保証人になることで、共有名義のままご主人が単独で、すべての返済を行なうことになります。つまり、形式上は奥様の持分相当のローン返済をご主人が肩代わりしていることに等しく、ご主人から奥様への贈与に相当するのではないか、ご相談者は心配しています。

確かに、贈与の本質からすれば贈与税を課されて当然なのですが、「借り替え前は連帯して返済していた」という既成事実があり、借り替え後も同様に返済するとみなされることから、共働きを続けるかぎり(今回のケースでは)贈与税の心配はいりません

なお、注意点として、借り替え後も夫婦2人で返済していることを対外的に証明するために、借り替えに伴い返済口座が一本化されても奥様の返済分が履歴として残るよう、口座振り替えを行うなどの工夫が必要になります。また、奥様が退職(無収入)してしまうと(奥様が持分を所有しているかぎり)贈与の対象となりますので、気を付けてください。


【ご注意とお願い】
上記コラムはご相談事例に対する回答の1例ですので、すべてを保証するものではありません。最終的な判断は各自にてお願いいたします。また、個別のご相談をいただいてもご返事しかねますのでご了承ください。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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