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『セックスボランティア』、障害者の性と生(4ページ目)

話題を呼んだ書籍『セックスボランティア』。刺激的なタイトルとは裏腹にとてもまじめで考えさせられるこの書籍が伝える障害者の性・性介護についてご紹介します。

執筆者:宮下 公美子

性のノーマライゼーション

もう一つ、著者がこの本で語っていたのは、突き詰めていけば障害者の性も健常者の性もない、あるのは人間にとっての性の問題だということでした。

24時間介助が必要な頸髄損傷の男性と脳性マヒの女性の夫婦。夫は鎖骨から下の感覚がありません。当然、セックスをしても快感はほとんど得られません。勃起もバイグラに頼っています。それでも、妻が喜んでくれることで精神的な満足感が得られるから、セックスをしていました。時間をかけ、介助なしで愛し合っていた2人。しかし、次第に生活はすれ違い、夫は体がつらいという理由で妻の誘いを断るようになりました。そして会話もほとんどなくなりました。

「子どもがほしい」という妻。
「子どもはまだほしくない。もう一度1人に戻りたいという気持ちもある」という夫。

常に介護者が必要な障害者は、性生活も介助者の気配を感じながら、ということになります。そのストレスは、健常者には想像できません。しかしそれをのぞけば、世にあまたあるセックスレスの夫婦と変わらない気がしました。

前出の脳性マヒ男性と健常者女性の夫婦も、結婚後、数年を経て、セックスの回数は減ったと言います。しかしそれも、健常者同士でも同じこと。

結局は、自分がどういう性のあり方を望むのか、その性のあり方を共有できるパートナーをどうしても見つけたいのか、そうでないのか。そういうことではないでしょうか。性が生活の重要な一部分だと思う人もいれば、そうでない人もいるでしょう。それは障害者も健常者も、本来、同じはず。

同じだと障害者も感じられ、私たちもそう言いきれる環境を作ることが、セックスボランティア制度を作るより大切だと感じました。性が生活の大切な一部分だとしたら、食も、仕事も、娯楽も同じように大切な一部分です。性は大きな声で言えないから逆に構えて考えがちですが、こうしたすべてを健常者も障害者も同じだと思えるようにする。そんな環境づくりを進めていくことで、性のノーマライゼーションも実現されるのではないでしょうか。

また、これも宮下のきれいごとでしょうか……。
でも一部分だけを取り上げて、これで困っている人がいるのだから対応しないと、という考え方にはどうしても賛同できないのです。

いろいろ考えさせられた本でした。
みなさんも、興味を感じたなら、ぜひ読んでみてください。
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