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労働基準法を知ろう(3) 採用時に交わす労働契約について

新卒であれ転職であれ、会社で働き始めるときには、賃金や労働時間などに関して契約を結びます。今回は、この労働契約を交わす際に注意したい点を見ていきましょう。

執筆者:西村 吉郎



『労働基準法』を知るシリーズ。今回は、労働契約に関する部分のうち、入社の時点でかかわってくる問題(契約期間、労働条件の明示など)について見ていきましょう。

一般的な契約と労働契約の違い


社員(労働者)と会社(使用者)との間には、端的に表現すれば、労働者は会社の指揮命令に従って労働力を提供し、使用者はそれに見合った対価を支払うことを約束するという契約が存在しています。これを労働契約といいます。

この労働契約は、一般には、社員が使用者に雇用されて働き始める時点で結ばれるため、雇用契約と呼ばれることもあります。

契約は、民法上、当事者間で誰と、どんな内容にするかなど自由に結ぶことができる(契約自由の原則)ものです。しかし、労働者と使用者の間で結ぶ労働契約についても契約自由の原則を適用することになると、社会的な力関係から、労働者が使用者の従属下に置かれることになりかねません。

そこで、労働基準法は、労働者が一方的に被る不利益を排除するために労働条件に関する基準を定め、もし、労働契約のうち基準に達しない部分があったときは、その契約部分を無効とし、労働基準法で定める基準によることを明確にしています。

この労働契約は、入社したその日から退職するまで内容が不変ということはありません。昇進、昇格などで給与がアップしたり、人事異動で従事する場所や仕事内容が変わったりすることはふつうにあることです。

しかし、ときには、入社時に約束のあったボーナスや退職金が支給されないとか、専門職で入社したのに希望しない仕事に回されたなど、入社したあとになって、トラブルが生じることもあります。この場合、入社時の契約がどうだったのか、から問題解決を図ることになるのが一般的ですから、労働契約を結ぶ際には、契約の内容をしっかりと確認することが大切です。

労働契約に盛り込まれること

労働契約(雇用契約)が契約の一種であるとすれば、契約そのものは口頭でも成立することになります。「明日からウチで働かないか」との誘いに「そうしましょう」と応じれば、その時点で契約が成立するわけです。

しかし、具体的な契約内容が分からないままでは契約に応じるか否かの判断がつきませんし、口頭で説明されたとしても、入社後にその説明と異なる部分があったとしても、それを裏付ける証拠がないことになります。

そこで、労働基準法は、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定めるとともに、労働基準法施行規則に、その明示すべき具体的な項目と明示方法を定めています。

●必ず書面を交付する形で明示すべき項目
(1) 労働契約の期間(解雇の事由を含む)
(2) 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
(3) 始業・就業の時刻、休憩時間、休日、休暇、並びに労働者を2組以上に分けて交代勤務させる場合の就業時転換に関する事項
(4) 賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締め切り及び支払いの時期、昇給に関する事項
(5) 退職に関する事項

●就業規則その他に定めがある場合に明示すべき項目
(1) 退職手当の適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算と支払いの方法の時期に関する事項
(2) 退職手当を除く臨時の賃金等及び最低賃金額に関する事項
(3) 労働者に負担させるべき食費、作業用品等に関する事項
(4) 安全及び衛生に関する事項
(5) 職業訓練に関する事項 
(6) 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
(7) 表彰及び制裁に関する事項
(8) 休職に関する事項
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