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バチカンより小さな国家がある?

世界最小国家といえば、バチカン市国。これが常識ですが、これよりも小さな国があるというではありませんか。しかもヨーロッパに。いったいどういうことなのでしょう。そしてそもそも「国家」の条件とは。

執筆者:辻 雅之

(記事掲載/2007.01.23)

「世界最小国家」といえばバチカン市国、というのが常識ですが、それよりもっと小さな国がある、という話もあります。「ほんとうの世界最小国家(?)」といわれるシーランド公国とは?

1ページ目 【あなたの家より狭いかもしれない自称独立国家】
2ページ目 【他にもある自称ミニ国家、しかし国家になれない?】
3ページ目 【国家承認とは別問題の「政府承認」とは?】

【あなたの家より狭いかもしれない自称独立国家】

シーランド公国とは?

シーランド公国国旗
世界最小国家? シーランド公国の国旗
イギリス東南部の海岸のすぐそこにあって、独立を主張しているのが「シ-ランド公国」です。

話は、第2次世界大戦のころにさかのぼります。ドイツによる上陸作戦を警戒したイギリスは、公海(どの国の領海でもない海)の上にたくさんの水上要塞を建築しました。

戦争が終わると、この要塞も用済みとなり、軍隊は引き揚げていきました。もっとも、イギリスがこの要塞の所有権を完全に放棄したのかどうかは、今一つわかりません。

ここに目をつけたのがイギリスの軍人だったロイ・ベイツ氏です。1967年、彼はこの要塞の1つに家族とともに乗り込み、「ロイ・ベーツ公」を自称、「シーランド公国」の独立を宣言することになります。

イギリス当局は彼を立ち退かせるための裁判を起こしたのですが、イギリスの裁判所は、当時はイギリスの領海内にはなかった(今は法律が変わって領海内)シーランドの要塞はイギリス司法の管轄外と判断、当局の要求を棄却します(1968年)。

こうして、シーランド公国は「独立達成」。1975年には憲法を公布するに至ります。「シーランド・ドル」という通貨も発行されます(アメリカ・ドルとの固定相場制ということです)。

どのくらい小さな国なのか?

現在、ベーツ公はなぜかイギリスに住んでいて、マイケル王子が摂政としてこの国を治めています。ただ彼も現地には住んでいないようで、2006年までは兵隊が1人駐在していたようです(今いない理由はのちほど)。

ちなみに、シーランド公国では切手などさまざまなユニークなものをネットで売り財源にしています。もっともユニークなのが「爵位」です。非常に喜ばれるギフトとして紹介されています。

日本人の購入者も少なからずいる模様で、著名人では西川きよしさんが購入、この国の伯爵となっています(昨年11月22日放映のフジテレビ系列番組『ザ・ベストハウス123』において)。29.99ドルとお求めやすい価格なので、購入希望者は英語サイトですがこのシーランド公国公式サイトにて御購入下さい。もっともAll Aboutは一切の責任をおいませんので悪しからず。

気になってきましたね。どのくらいの大きさなのでしょうか。この写真が、シーランド公国のすべてです。

シーランド公国
写真はWikipedea Commonsより



ざっとみた感じ50坪くらいでしょうか。バチカンはディズニーランドくらいありますから、これはかなり小さいです。

シーランド公国の「クーデター事件」

さて、この「国」に危機が訪れたことがありました。

ここでカジノ運営を行おうとしたシーランドは、1978年にドイツの実業家に声をかけ、彼を首相に任命します。しかし、首相はマイケル王子を拉致して、クーデターを画策します。

ベーツ公はいったんイギリスに逃れますが、ただちに同志を集めてヘリで再上陸、シーランド奪還に成功します。首相と一緒にやってきたドイツ人とオランダ人たちが「捕虜」になりました。

オランダ・西ドイツ両政府はイギリス政府に仲介を頼みましたが、イギリスがこれを拒否。理由は先ほど述べた判決の通り「イギリスの管轄外」だから、ということでした。

しかたがないので西ドイツは正式な外交官を派遣して直接シーランドと交渉。この待遇に気をよくしたのか(要するに国家扱いされたということですからね。ドイツは否定しますが)「捕虜」を解放します。

まだまだ続くシーランド公国の話し、そしてまだまだある「超ミニ国家」? 続きは次ページで。
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