よくわかる政治

更新日:2006年07月11日

北朝鮮をめぐる今後の「可能性」を検証!

ビジネス 編集部 写真

北朝鮮をめぐって高まって来た緊張。武力制裁などということは起きるのか? はたまた一転して円満解決などということも? 考えられる可能性を検証してみました。

1ページ目 【アメリカが武力攻撃をする可能性は極めて低い】
2ページ目 【制裁や交渉開始のほか、考えられる「不測の事態」とは?】

【制裁や交渉開始のほか、考えられる「不測の事態」とは?】

米朝単独交渉の開始……可能性10~30%

ブッシュ大統領
写真中央はブッシュ大統領。大きな軍事力を背景に北朝鮮の望む単独協議を封じると思われるが、果たして?(Photo From Wikimedia Commons in public domein)
北朝鮮のテポドン発射の目的は「米朝単独交渉」を実現させ、アメリカから何らかの譲歩を導きだそう、というものだと考えられています。

アメリカは容易にこれに応じないでしょう。北朝鮮の挑発に屈したことになるからです。しかし、何らかの形で応じることは考えるかもしれません。

北朝鮮がよくアメリカを非難するのは、外圧に対する軍や国民の団結を図ることが目的であり、イランなどのような宗教イデオロギーに基づいた反米主義ではありません。そのことを、アメリカはよく知っているはずです。

そのため、交渉によっては、イランよりも容易に核兵器の開発を断念させることができるのではないか、とアメリカが思っても不思議ではありません。現に、議会には北朝鮮との単独交渉を始めようという声もでてきているようです。

アメリカとしては、北朝鮮に核兵器開発の断念をしてもらえればそれでいいわけですから、その可能性が高くなったと見込めば、単独交渉を行うかもしれません。

しかし、その「見返り」をアメリカは準備するのか。「ならず者国家」とまで言い放った北朝鮮に、人道上必要な食糧以上のものを提供するのか。それはブッシュ政権の政治姿勢の一貫性に関わることです。

ここ十年でRMA(軍事における革命)によって大幅に武装強化を行ったアメリカ。その軍事力を片方に起きつつ、中国を何とか経済カードで味方に引き入れ、北朝鮮への一方的譲歩を引き出そう、というのがアメリカの考えではないかと、現時点では思われます。

北朝鮮の「6カ国協議」への復帰……可能性30~60%

いきなり北朝鮮が「6カ国協議」に何食わぬ顔で復帰……ありえなくはありません。

北朝鮮はけっこう、そういう国です。当初の目的だったアメリカとの単独交渉ができないと見るや、中国との連携を目指して6カ国協議に復帰する、ということは十分考えられます。

問題は、ただで復帰を認めるかどうかです。ここでまた関係各国の協議が活発化することになるでしょう。ミサイル発射凍結などなんらかの譲歩のうえでの参加を迫る日米、無条件での復帰を求める中露の間で対立が起こるかもしれません。

確率を広いレンジでとったのは、そうなった場合の日米=中露の協議の行方が、現時点では不確定だからです。

北朝鮮は軍と政府、党の間の勢力争いがあるともいわれます。この辺りは定かではありませんが、6カ国協議復帰を求める党や政府が再び力を持って金正日(キム・ジョンイル)総書記を動かせれば、復帰に向けて動き出すかもしれません。

中国による北朝鮮軍事占領……可能性5%

もしかしたらこんなシナリオが用意されているかもしれません。わがままな子どもを親が「たしなめる」ために行うことです。

旧共産圏ではよくあったことです。チェコの動乱を武力によって鎮圧した旧ソ連のブレジネフ書記長は、共産主義諸国の主権は制限されているということをいってはばかりませんでした。

「世襲王朝」は共産主義にあらず、これ以上の独裁は許せぬ……という大義で、共産国家の「盟主」中国が電撃的にピョンヤン占領、ということもあるかもしれません。情報もよく知っているでしょうから。

とはいえ、中国がそこまでおこなうことのできる軍事力を用意しているかがよくわからないところです。加えて、そこまで過激なことをするかどうか……ということもあり、一応低い可能性にしておきました。

金正日(キム・ジョンイル)急死、北朝鮮内戦……可能性???

金正日
オルブライト元国務長官と金正日総書記。金正日が死んだとき、果たして何が起こる? 予想がつかないだけに、彼の生存中の解決が望まれるとも言える(Photo From Wikimedia Commons in public domein)
金正日総書記の健康状態が実は懸念されています。

彼はすでに60歳を大きく超えています。そして、毎晩のように行われるという派手な酒宴……彼が酔いつぶれて酒宴はお開きになるのが恒例といいますが、もしそれが本当だとすると、彼の健康状態はどうなのでしょうか。

彼がいきなり急死してしまうと、何が起こるのか。後継者はしっかり決まっているのでしょうか。そうでなければ、後継者をめぐる争いが起こるかもしれません。

有力後継者は金正日の次男・金正哲(キム・ジョンチョル)といわれています。しかし彼は1981年生まれと大変若く、金正日の後継としてつとまるのか、疑問がないわけではありません。

そして、かつて日本で拘束されたことで話題となり、そのことが原因で「後継者から外された」といわれる長男・金正男(キム・ジョンナム)との間で後継者争いが始まり、内乱にならないとも限りません。この2人は異母兄弟であり、仲はあまりよくないようです。

今のところ、金正哲は軍を、金正男は党(朝鮮労働党)をおさえているとされ、一見すると金正哲優位と思われますが、どうなるかはそのときにならなければわかりません。

また、金正哲は弱いと見て、実は野心を燃やしている軍の将校がいないとも限りません。そのような将校が各地で自立し、泥沼の内戦にならないとも限りません。そんななか、自体の打開を図って追い詰められた一派がノドンやテポドンを日本に向けて撃ってこないとも限りません。

そういった意味で、この問題は彼が健康なうちに処理しなければならない問題だと考えます。内乱が始まり、難民が日韓中に押し寄せ、そんななかテロリストが日本に潜入したり、ミサイルが日本海を飛び交うような状況になるのは最悪のケースだと言えるでしょう。

金日成の家系図
金日成をめぐる家系図。後継者は金正哲とされているがまだ若く依然流動的とも。また金日成の異母弟金平一(キム・ピョンイル)も左遷されながら健在だ



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(執筆者:辻 雅之)

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