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ドイツ政治の基礎2005年

シュレーダー首相の解散によって実施されたドイツ連邦議会選挙。こちらは日本と違って大接戦になりました。この際、ドイツ政治の基礎を学んで、新聞やニュースをみる参考にしてみましょう。

執筆者:辻 雅之

(2005.09.25)

史上まれにみる接戦となった2005年ドイツ連邦議会の総選挙。このさいですから、ドイツ政治のしくみ、歴史について知りたいとは思いませんか?世界第3の経済大国なのに知らないことばかりのドイツ政治、基礎の基礎。

1ページ目 【ドイツの独特な連邦制と議院内閣制とは?】
2ページ目 【ドイツの選挙制度と主要な政党って?】
3ページ目 【ドイツ連邦の歴史、そして現在の状況は?】

【ドイツの独特な連邦制と議院内閣制とは?】

ドイツは「地方分権」を極めた「連邦制」

ドイツは「連邦共和国」です。16の州に「州政府」があり、「州首相」(ベルリン・ハンブルク)のような都市州は市長)がいて、連邦政府と同列の「国家」として、ドイツ連邦内では扱われています。

したがって、州は当然のように独自の憲法を持ち、独自の法体系を持ち、独自の行政を行います。司法権も原則的には州が持っています。日本の「地方自治」とは全く異なる地方分権システムです。

連邦の憲法にあたる「基本法」は、第2次大戦でナチス政権が崩壊し、連合国占領のもとで作られた州の代表たちによって審議され、州の議会が「批准」をして作られたのです(1957年加入のザールラント州、1990年連邦に「加入」した旧東ドイツの5州を除いて)。

州の合意、または、ドイツ各州の条約的な意味合いが濃いこの基本法は、国民が選出する連邦議会と、州の代表である連邦参議院が可決(双方とも3分の2以上の多数による)すれば、国民投票なしに改正されます。

日本の感覚からするとおかしく感じるかもしれませんが、基本法は州が集まって作ったものであるわけですから、州の代表である連邦参議院が承諾した以上、国民投票の必要はない、というわけです。

州の政治はドイツ政治に直結する

連邦参議院のことを「連邦の代表」といいましたが、これは「日本の参議院議員は都道府県の代表的意味合い」「アメリカの上院議員は州の代表的要素が強い」とはまるで異なります。

連邦参議院には、州首相や州の閣僚など、「州の代表そのもの」が集まります。そして採決のとき、各州は賛成、反対、保留のいずれかを統一して表明しなければなりません。

つまり、いくら代表がたくさん送り込まれようと(一応下記の票数に応じて送り込む代表者数は決まるのですが)、国連総会のように、「ドイツ連邦内の国家」である州の意思は、1つのみしか表明できないのです。

もっとも、基本法によって各州は最低3票、人口200万超4票、人口600万超5票、人口700万超6票と、人口に配慮されています。もちろん、これら複数の票を、賛成、反対などに分割して投票することはできません。一括投票です。

そして、この連邦参議院が可決しなければ、連邦法は成立しません(ただし、州の権利を拘束する法案に限り)。したがって、連邦参議院の面々、つまり各州の首相以下州のトップたちは、そのままドイツ全体の立法に参加することになっているのです。

ですから、日本のような「無党派知事」などが生まれることなどありえません。日本の地方選挙は往々にして「多選」知事だけが事実上1人の候補、というどっちらけの選挙になりがちですが、国政に直接関わるドイツの州選挙ではそんなことは起きないのです。

なぜ州の力がドイツでは強いのか

いろいろな理由があると思われます。

(1)「統一ドイツ」より「各地方主権のドイツ」の時代が長かった……17世紀にウェストファリア条約でドイツ(正確には神聖ローマ帝国)の各地方や都市の主権が認められてから、19世紀末にドイツ帝国として統一されるまで、ドイツは「いろんな国がある」ドイツでした。

実際、「鉄血政策」で知られる帝国宰相ビスマルクも、統一後であっても、地方の自立機運にはたえず悩まされることになります。

(2)ナチスのような強大な権力を出現させない……ドイツは当時世界でもっとも民主的といわれた「ワイマール(ヴァイマル)憲法」を持っていながら、ヒトラーとナチスの台頭を許してしまいました。

そのため、きわめて分権的な連邦制を導入した,というわけです。

(3)ドイツの再度の大国化を防ぐために、連合国側が極めて州権主義の強い連邦制を導入した、という経緯もあります。

連邦首相の地位は日本の内閣総理大臣より協力

ドイツの国家元首は大統領ですが、西側先進国の国王たちと同様、象徴的な存在です。政治家ですが、中立性が求められています。

実際の国家首脳は連邦首相です。連邦首相が議会の与党から選出される、という枠組は基本的に日本と同じです。正確に言うと、国民から選出された連邦議会が選出し、大統領が儀礼的に任命します(ここでは連邦参議院の役割はありません)。

ただここからが、日本とドイツの大きな違いです。日本の衆議院は、好きなときに、後先考えず内閣不信任案を議決し、内閣に衆議院解散か総辞職かを迫ることができます。

しかし、ドイツ連邦議会は、過半数の多数で「次の連邦首相」を決めることができなければ、内閣不信任案を議決することができないのです。

「次の連邦首相」を決めるとなると、いろいろ思惑も出てくるでしょうから、連邦首相の不信任はなかなかむずかしいのです。

ちなみに、この制度は「建設的不信任制」とよばれています。

「建設的不信任制」で手間取ったシュレーダー

この独特な「建設的不信任制」の上にたって、このような規定も「基本法」で定められています。

つまり、連邦首相は、不信任決議が通りにくくなって守られている代わりに、「信任決議案が否決される」ということがなければ、連邦議会を解散することができないのです。

そのため、連邦議会の解散はいままで3度しかありません(1972年、83年、そして2005年)。連邦首相シュレーダーも、この手続きを成功させるために大きく労力を使わなければなりませんでした。

日本は1回のみ(1976年)を除いてすべての衆議院議員任期が解散(現憲法のもとで実に19回)によって途中で途切れています。ドイツとは非常に対照的です。

次のページでは、さらにドイツの独特の選挙制度、そしてドイツの5大政党についてお話していきます。

◎ドイツの「州」は「連邦」の政治に直接介入する


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