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【「チャイナ・リスク」の拡大は東アジア経済へ何をもたらす?】 22~23日の日中首脳会談が1つの分水路か
焦点は、22日くらいに行われそうな、インドネシア・バンドンでの日中首脳会談の行方です。ここで事態が収束に向かうかどうか、これが注目ポイントです。
もし、これが「決裂」あるいは「反友好」な感じで中国に報道されたら、ますます反日運動は激化するでしょう。
もし激化すれば、運の悪いことに、反日運動が高揚したまま5月4日を迎えます。そう、日本史や世界史をしっかり勉強した人ならわかるでしょう。歴史的な民族運動、1919年の「
5・4運動」が起こった日です。
この運動は、広くいえば当時の列強主導の「ヴェルサイユ体制」への反発だったのですが、中心は日本が中国に対してつきつけた「
対華21カ条要求」への反発など、日本進出に対する反対運動でした。
ですから、この日に向けて、反日運動がさらに盛り上がることが予想されます。
よみがえる「天安門事件」という破局
さて、……この動き、なにか私にはVTRを再現しているような感じなのです。なにかのきっかけで民衆運動で火がついて、「5・4」でさらに燃えさかり、……これは、そうです。
1989年の「
天安門事件」、これも4月に火がつき、5月に燃えさかり、そして6月に「破局」を迎えたのでした。
天安門事件の詳細は拙稿「
趙紫陽と現代中国」などをご参照していただくことにして、この「悪夢」を、中国当局が思い描かないわけはないでしょう。
とくにそれを痛感しているのが
温家宝(ウェン・チヤパオ)首相でしょう。彼は民主化運動を支持して失脚した趙紫陽の側近です。天安門事件を「目撃」した人です。もう、あの破局劇はおこしたくないと思っているはずです。
ですから、最近中国当局が呼び掛けている「デモ自制」の動きは、温家宝のとる行動としては、当然といえば当然でしょう。
問題は、騒ぎが大きくなった場合、
胡錦涛(フー・チンタオ)主席と温家宝がどういう行動を見せるかです。現実主義的な温家宝に対し、どうもチベットで力による「支配者」として実務をとり、天安門事件の際にも北京にいなかった胡錦涛は、いざとなったら「力で封殺」を選択するような気がするのです。
そのことがきっかけで胡錦涛と温家宝の対立が起こったら……中国政治情勢はさらに不透明になります。
欧米は人民元切り上げを強く迫る
そして、騒ぎが大きくなればなるほど、中国は「
チャイナ・リスク」を抱えてしまいます。これは、大きな問題です。中国に投資しても、日系企業のような目にあってしまうかもしれない。これは投資する側にとっては由々しき問題です。
欧米は、リスク回避策として、中国の通貨、「
人民元切り上げ」をこれまで以上に要求するようになるでしょう。
欧米企業は、中国に自社製品を売り込むための投資がほとんどです。たとえば、彼らが、中国に100%出資している株式会社があるとしましょう。
その会社が、中国の政治情勢の悪化にともなって撤退をよぎなくされるとします。そんな状況では、その会社の株価など資産価値は目減りしているでしょう。
しかし、その反面で、そのとき、人民元が徐々に高くなっていれば、損失分をある程度取り戻せるのわけです。
ですから、「チャイナ・リスク」のヘッジ(損失防止)として、人民元の切り上げは欠かせない。欧米投資が冷え込みたくなかったら、なんとかしろ、と中国に迫るでしょう。
そして日本と中国、東アジア経済は……最悪のシナリオ
しかし、これは日本には痛手です。
日本企業は、だいぶ、欧米のように「自社製品(サービス)の中国市場での売り込み」のための投資も増えてきましたが、やはり依然として「中国で生産→日本で消費」あるいは、「中国で生産→外国に輸出」のための投資が多いのです。
このような形だと、人民元の切り上げは、中国からの輸出品価格の上昇につながりますから、日本企業の収益を圧迫します。日本では不況下でのインフレ圧力、すなわち
スタグフレーションの可能性が強まります。
もちろん、中国経済も、人民元切り上げはおりこみ済みとは言え、予想外に早く切り上がれば、輸出が不振になり、経済は冷え込むでしょう。もちろん輸入品は安くなりますが、中国に輸出不振を解消するだけの「内需」があるかどうか……疑問です。
そうなると、今「中国特需」で沸いている鉄鋼や半導体などの産業も、中国輸出がふるわなくなるでしょう。それは、韓国・台湾にも波及するでしょう。
結果、最悪のケースとして「
東アジア同時不況」が考えられるのです。
もちろん、「人民元切り上げ」は中国も日本も「おりこみ済み」なのです。もういわれて久しいですから。そう考える人もいるでしょう。
しかし、「おりこまれて」いたのは、たとえば人民元の変動幅拡大とか、通貨バスケット方式とか、「ゆるやかな人民元切り上げ」でした。
※通貨バスケット:たとえば、人民元=ドルで決まるレートを、人民元=[ドル・円・ユーロ]のように決める。こうすると、変動相場に移行しても、人民元の変動幅はゆるやかになる。しかし、「チャイナ・リスク」の拡大は、東アジアが「おりこんでいなかった」急激な人民元高への、欧米諸国からの圧力強化につながりかねません。たとえ、少々東アジアが犠牲なっても。大事なのは自分の国ですからね。
ともかく、「東アジア同時不況」だけは回避しなくてはなりません。もちろん、欧米諸国だって望んでいるわけではないのです。中長期的には世界経済の失速を招くからです。
ですからこのリスクを低減させるために、日中当局間、そして日中両国民の真剣な取組みが必要とされているのです。ただ残念なことに、ここまで考え、論じている人はごく少数のようです。私が悲観論者で、杞憂なだけに終わればいいのですが……。
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◎人民元切り上げ、欧米と日本の利害の違い