文章:辻 雅之(All About「よくわかる政治」旧ガイド)
(2005.04.19)
中国の反日運動はすさまじい勢いを見せました。今後、日中関係はどうなっていくのでしょう。日本の政治と経済に与える影響とは。そして、もっと懸念される両国にとっての最大の危機とは……キーワードは、そうです、○○○です。
1ページ目 【反日運動の盛り上がりと、それを見ると思う素朴な疑問】
2ページ目
【「愛国無罪」の言葉が示すもの……本当に若者は「反日」なのか】3ページ目
【「チャイナ・リスク」の拡大は東アジア経済へ何をもたらす?】【反日運動の盛り上がりと、それを見ると思う素朴な疑問】「アナン提案」で始まった反日運動
まず、なぜこのような反日運動が起こったのか、ちょっと時系列的に整理しておきたいと思います(2005.4.18現在)。
・3/20
アナン国連事務総長の「国連改革提案」で、何らかの形での「
日本の安保理常任理事国入り」が提示
・3/25~27 日本の常任理事国入りへの反対署名運動が、中国南部、および中国系サイトで広がる
・3/28 吉林省長春で日本製品不買運動……教科書問題も一因に
・4/2 四川省成都で反日デモ
・4/3 香港に隣接した深セン(シェンチェン)で大規模反日デモ
・4/9
北京の日本大使館前で大規模デモ、1万人参加 暴力行為で大使館の器物破損/上海で日本人2人が殴られ軽傷
・4/10 広州で2万人規模の反日デモ/中国外交部スポークスマン、北京での暴力行為について「政府は責任ない」と談話
・4/12 新華社通信、傘下のニュース紙で「節度ある行動」をよびかけ
・4/14 東シナ海での天然ガス試掘権を日本が企業に与える動きについて中国政府猛反発/ネット上で「16日上海デモ」情報が流れる
・4/16
上海で数万人規模反日デモ 総領事館、日本料理店などに投石/北京を除く主要都市にも拡大
・4/17 町村外相訪中、李肇星(リー・チャオシン)外相と会談……中国側からの謝罪なし、ただし胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席と小泉首相のバンドン会議(4/22~)の際の首脳会談実現には基本的合意
「拒否権」を持つ中国人民が、なぜここまで過剰反応?
一連の反日運動が、とにもかくにも、アナン提案「日本の常任理事国入り」への反対が発端となり、教科書問題や、天然ガス問題などでヒートアップしていったことは、みてとれます。
しかし、客観的に考えると、いろいろな「?」を感じてしまいます。
まず第一には、日本が常任理事国入りをするには、国連憲章の改正が必要であるということです。なぜなら、常任理事国は、国連憲章で規定されているからです。
国際連合憲章 第23条1項
安全保障理事会は、15の国際連合加盟国で構成する。中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国は、安全保障理事会の常任理事国となる。総会は、第一に国際の平和及び安全の維持とこの機構のその他の目的とに対する国際連合加盟国の貢献に、更に衡平な地理的分配に特に妥当な考慮を払って、安全保障理事会の非常任理事国となる他の10の国際連合加盟国を選挙する。(下線は筆者による)
で、改正手続は、次の通りです。
国際連合憲章 第108条
この憲章の改正は、総会の構成国の3分の2の多数で採択され、且つ、安全保障理事会のすべての常任理事国を含む国際連合加盟国の3分の2によって各自の憲法上の手続に従って批准された時に、すべての国際連合加盟国に対して効力を生ずる。(下線は筆者)
つまり、憲章改正の採択じたいは多数決でできますが、それが効力を持つには、中国をはじめすべての常任理事国が賛成しなければならないのです。
つまり、中国は事実上、日本の常任理事国入りに対して拒否権を持っているわけです。胡錦涛主席が「中国は断固ノーだ」といえば、すみそうな話です。
それなのに、なぜあんな過激な反日デモが。みんな、無知だからでしょうか? そんなはずはありません。これについては、次のページで考えていきます。
アメリカが日本常任理事国入りに消極的なのになぜ?
今一つの「?」は、「アメリカが日本の常任理事国入りに消極的なのに」というものです。
アメリカは、「支持表明」はしますが、それ以上のことをするつもりはなさそうです。その理由としては、こんなところが挙げられると思われます。
1)国連そのものに不信感。国連改革などにつきあう暇はない。
2)今回の話はアメリカを「無視」したアナンの独走。つきあいたくない。
それは、もちろん中国首脳はもとより、デモをしている人々にも耳に入っている話なはずです。なのに、なぜ……?
そのあたりの理由を含めて、今回の反日デモを分析していきましょう。
◎激化する今回の「反日」に対する素朴な疑問