社会ニュース/よくわかる経済

早わかり消費(4) 日本の貯蓄率はなぜ高いか?

第4回は日本の貯蓄はなぜ高いかをライフサイクル仮説を利用してわかりやすくご説明します。

執筆者:石川 秀樹


★ポイント★

<1>ライフサイクル仮説に基づくと、若いうちは老後に備えて貯蓄をし、老後は、蓄えた資産を取り崩すので、マイナスの貯蓄になる。

<2>今までの日本は、貯蓄を行う若年層が多かったので、経済全体での貯蓄率が高かった。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

今回は、日本の貯蓄率がなぜ高いかを考えます。この問題に対し、「日本人の国民性が原因だ!」という人がいます。しかし、良く考えてみると「日本の貯蓄率が高いのはなぜか?」という質問に対し、「国民性だ」では、答えになっていません。なぜなら、どうして貯蓄率が高いという国民性があるのかが問われているからです。

ここでは、この問題をいままでお話した消費理論を使ってお話しましょう。「消費じゃなくて貯蓄でしょ?」と思われるかも知れません。ですが、貯蓄とは、所得から消費を引いた残りですから、「日本の貯蓄率はなぜ高いか?」というテーマは、「日本の消費率はなぜ低いか?」と同じことになるのです。ですから、経済学では、貯蓄の議論は消費理論を用いて分析するのです。

さて、消費の理論で、ライフサイクル仮説とは、「人々は一生涯での消費額を一生涯で使えるお金と等しくなるように毎年の消費量を決める」というものでした。この考えは、私達が退職後には所得がなくなるので、それに備えて若いうちから消費を抑えて貯蓄をするという行動を説明できます。

ですから、日本の高貯蓄については、ライフサイクル仮説を用いて、「今までの日本は、若年層が多かったので老後に備えて貯蓄をする人が多く、国全体での貯蓄率は高かった」と説明することができるのです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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