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株式と円を同時に動かす円キャリートレード

2月27日に始まった世界同時株安ですが、株の暴落と同時に円高も急激に進行したことにお気づきでしょうか?これらが同時に動く裏には、円キャリートレードという取引が存在しています。

執筆者:鳥羽 賢

2月27日の上海株式市場における8%下落を引き金として、日本を含めた世界中の株式市場が下落しています。しかし不思議なことに、それと同時に、円が米ドルやユーロなど全ての主要通貨に対して強くなり続けています。これはなぜでしょうか?

【CONTENTS】
これまで株高や円安を演じてきた張本人「円キャリートレード」(1P目)
世界同時株安で円キャリーの解消が進行(2P目)
「株安は日銀が原因」中国紙(2P目)
根強い円キャリー需要(3P目)

これまで株高や円安を演じてきた張本人「円キャリートレード」

まずは過去数年間の株や円の動きを振り返ってみると、今回とは反対に株高と同時に円安が進行してきました。そしてその動きの裏にあるのは、「円キャリートレード」と言われる取引です。

円キャリートレードとは、低金利の日本円で資金を借り入れ、それを高金利の通貨に変えて、株・為替・商品・債券など様々な金融商品で運用して利益を得る取引のことです。この取引が広まった背景には、日本がずっと続けてきた超低金利政策と、5%前後と高い海外の主要国の金利があります。

<円キャリートレードの仕組み>
円キャリートレードの仕組み
円キャリートレードが増えるほど、円安が進行する。

円キャリートレードの流れを図で表すと、上のようになります。円キャリートレードを実行している主体はいろいろありますが、多いのは海外のヘッジファンドです。ヘッジファンドはまず、運用するためのお金を日本の短期金融市場などから調達します。その方が海外で調達するよりも、金利が安く済むからです。

そして調達した円を、次に外為市場で外貨に換えます。この過程では円が売られて外貨が買われるので、円キャリートレードをするファンドが増えると為替は円安になります。外貨を手に入れたら、それを海外の株・債券・商品などで運用して利益を得るのです。この手法で利益を得るためには、

借り入れた資金の金利<運用益の利回り

となる必要がありますが、日本が超低金利なので、それが実現しやすいのです。

→そして今回の世界同時株安で、それが解消されたために…
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