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ミャンマー(ビルマ)の政治情勢(3ページ目)

ノーベル平和賞アウンサンスーチー女史の軟禁解除でがぜん注目を浴びるミャンマー(ビルマ)情勢。軍事政権と民主化運動の対決だけでは読み切れない、複雑なミャンマー(ビルマ)情勢基礎知識。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【意外と日本とのかかわりが深い、ミャンマー建国の歴史】
2ページ目 【アウンサンスーチーの登場と《暫定》軍事政権】
3ページ目 【外交問題にも発展、ミャンマー少数民族】

【外交問題にも発展、ミャンマー(ビルマ)少数民族】
少数民族問題解決なければ「民主化」も絵に描いた餅?


ミャンマー(ビルマ)は50とも100ともいわれる少数民族を抱えています。その多くがミャンマー(ビルマ)の中心民族であるミャンマー(ビルマ)族(人口の約7割を占める)と対立、衝突を重ねてきました。

とくにミャンマー(ビルマ)国民の大多数が信仰する上座仏教に対し、キリスト教や土着信仰を重んじるカレン族、イスラム教を進行するインド系の移民たちは軍事政権と激しく対立したり、迫害されて難民として国外に流出したりしています。



特にカレン族は1949年にKNU(カレン民族同盟)という軍事組織を作り早くから抵抗運動を展開。そのほかの民族も武装組織をつくったためミャンマー(ビルマ)が内戦状態におちいってしまった時期もありました。

1962年の国軍クーデターは、こうした状況への危機感が背景にあったことは確かでしょう。そしてそれ以降、少数民族への強圧的な態度は激しくなっています。

特に1990年代に入っての軍事政権の攻勢拡大によって多くの少数民族武装組織は軍事政権と和平協定を締結、「黄金の三角地帯」といわれ武装組織の資金源となってきた麻薬密造地域も制圧されつつあります。

しかしKNUはいぜんとして抵抗運動を続けており、和平協定を結んだ武装組織も武装解除をしたわけではなく内戦の芽はくすぶりつづけたまま。

このような状況が、ミャンマー(ビルマ)民族を主体とする国軍、軍事政権の危機感につながっているようです。「もし民主派が政権を握ってしまったら、武装組織が勢いづいてしまうのではないか」というような。

NLDら民主活動家らも基本的にはミャンマー(ビルマ)人主体。少数民族との連携を試みている勢力も一部にはありますが、それも「敵の敵は味方」的なものであって、かれらが政権を握ってからの少数民族への対応ははっきりしているわけではありません。

また、少数民族問題は同時に外交問題でもあります。紛争を抱える少数民族の多くはタイとの国境ぞいにまたがって住んでいます。かれらを制圧することは国境での自国の勢力をいまより拡大することにもつながるわけで、タイとしても軍事政権の行動を他人事のようにみているわけにはいきません。

それにいまなお抵抗を続けるカレン族に対する大規模な攻勢で大量の難民がタイに流出していることも、タイにとっては頭の痛い問題です。

タイの新聞ではミャンマー(ビルマ)の民族紛争で大きな動きがあるとトップニュースになることがあるようです。それくらい、タイの関心、タイが受ける利害は大きいものがあるのです。

国軍(軍事政権)、NLD、少数民族、そしてタイ。この4つどもえの構図でとらえないと、ミャンマー(ビルマ)情勢はなかなかみえてこないようです。

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