文章:鳥羽 賢(All About「世界のニュース・トレンド」旧ガイド)
アメリカのケンタッキーフライドチキンが10月30日に、「トランス脂肪酸を含む調理油の使用は来年4月までに全店舗で止め、以後は同脂肪酸を含まない大豆油を使用する」と発表しました。このトランス脂肪酸というもの、実は世界のいろいろな国で問題視されている身体に害のある油なのです。
トランス脂肪酸の害
トランス脂肪酸とは、分子構造の二重結合の一部がトランス型になった脂肪酸のことです。天然不飽和脂肪酸ではこのタイプはほとんどなく、二重結合はシス型と呼ばれる形をしています。しかし常温で液体である油脂を固形化するために、油脂を加工する時に水素添加を行うことがあります。その水素添加によって形成されるのが、このトランス脂肪酸なのです。トランス脂肪酸の詳しい構造や形成過程は
こちらで。
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| トランス脂肪酸の分子構造モデル出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 |
トランス脂肪酸を多く採ると、身体にいろいろな害を及ぼすことが、さまざまな研究から分かっています。トランス脂肪酸は天然に存在しない脂肪酸なので、体内で代謝されにくい性質を持っています。そして体内に残ったトランス脂肪酸が細胞膜に入ると、細胞膜の働きを弱めてしまいます。
また体内には善玉コレステロールの高比重リポ蛋白質(HDL)と、悪玉コレステロールの低比重リポ蛋白質(LDL)がありますが、トランス脂肪酸を多く採ると、HDLが減ってLDLが増えることが、オランダの研究で明らかにされています。結果として、心臓病のリスクが高まっていくのです。
そして日本でも同様の研究結果が発表されています。1999年6月に厚生労働省が「第6次改訂日本人の栄養所要量」中で、「トランス脂肪酸は、脂肪の水素添加時に生成し、また反芻胃の微生物により合成され吸収されることから、反芻動物の肉や乳脂肪中にも存在する。トランス脂肪酸の摂取量が増えると、血漿コレステロール濃度の上昇、善玉コレステロール濃度の低下など、動脈硬化症の危険性が増加すると報告されている」と記述しています。
海外では高まる危機感
このように害があることが認識されているトランス脂肪酸に対し、海外では消費者も行動を起こしています。アメリカでは、トランス脂肪酸を含まない油に切り替える作業が遅れたとして、ハンバーガーのマクドナルドが訴訟を起こされています。
マクドナルドは2002年9月に、「2003年2月までに調理油の全てを、トランス脂肪酸を含まない油に切り替える」と発表しました。しかしそのスケジュール通りに作業は進まず、健康問題活動家がマクドナルドを訴えています。この件はその後マクドナルド側が850万ドル(約10億円)の和解金を払うことで治まりました。
また今回使用中止を発表したケンタッキーフライドチキンも、それに先立って今年の6月には訴訟を起こされています。訴訟は消費者団体によって提起されたもので、同社はトランス脂肪酸を含む油の使用を止めるか、あるいは消費者に健康上のリスクを知らせる一文を挿入するべきだという内容のものでした。
さらに同じハンバーガーチェーンのウェンディーズは、6月にトランス脂肪酸の使用量を大幅に削減すると発表しています。バーガーキングも、一部店舗でトランス脂肪酸を含まない油を試験的に使用することを、10月に発表しました。
→ところで、日本におけるトランス脂肪酸の認知度はどうでしょう?