文章:辻 雅之(All About「よくわかる政治」旧ガイド)
(2001年8月14日)
1ページ目【1つではない「靖国問題」】
2ページ目【首相参拝の歴史に自民党内の複雑な事情あり】
3ページ目【「小泉参拝」で見えてくる自民党の「タカ派」と「ハト派」地図】
【1つではない「靖国問題」】 小泉首相は終戦記念日である8月15日を避けて、13日に靖国神社を参拝しました。これによって首相は一連の「靖国問題」に自ら終止符を打とうとしています(2001.8.14現在)。
靖国神社というのは明治時代、旧江戸幕府側の勢力と新政府軍の戦争である戊辰(ぼしん)戦争での政府軍の戦死者をとむらうためにできたもので(当時は「東京招魂社」)、以後、日本軍の戦死者を神として祭るという珍しい形の神社として、今日まで発展してきました。
しかも戦前はこのような性質から国家管理下に置かれていました。戦後は宗教法人の一つとしてみかけ上は普通の神社になりましたが、それでも政治への影響力はつねにもち続けていました。
さて、そんな靖国神社への首相の参拝についての1つ目の問題は、
首相の参拝が憲法で定められている「政教分離の原則」に違反するのではないか、ということです。
政教分離の原則とは、特定の宗教に国家が肩入れしたり、あるいは弾圧したりすることなく、中立的な立場をとらなくてはならないとするものです。
首相による靖国神社の参拝、とくに終戦記念日という特別な日を選んでの参拝は、国家が靖国神社という特定の宗教団体に肩入れしていることになるのではないか。もしそうだとしたら、政教分離の原則に反してしまうことになります。
このような批判は野党や宗教団体など、主に国内でされています。特に公明党は最大の支持団体である宗教団体、創価学会が戦争中はげしい弾圧を受けており、そのことから首相参拝に対する批判がもっとも強い政党の1つとなっています。
もう1つの問題は、
靖国神社が「A級戦犯」を祭っているということです。A級戦犯とは日中戦争~太平洋戦争の原因をつくり、アジア各国を侵略したという罪に問われ、国際裁判(東京裁判)によって有罪、一部は死刑になった当時の政府首脳、軍首脳たちのことです。
彼らは国際的にはアジア侵略の「犯人」とみなされている人物。それを首相が神として「参拝」することには、大きな問題があるというわけです。
中国や韓国はこの点を問題視し、今までも首相や大臣の靖国神社参拝に、はげしく反発してきました。今回の小泉参拝問題でも、両国の政府首脳から一般国民まで、その反発ぶりは大きいようです。
中国や公明党など、関係が重要な国や政党が批判する中、それでもなぜ小泉首相は参拝したのでしょう。次ページで、その背景を探ってみましょう。