「承認」不安から「うつ」になる
 |
| あなたのかかわりは部下の「自由」と「承認」を増しているでしょうか? |
山竹:この「自由」と「承認」という視点からみると、いろいろなことがわかってきます。例えば、最近増えている「うつ」ですが、これは「承認」を失うことへの不安から生まれると考えられます。
——「うつ」の人は真面目な人が多いと聴きますが……。山竹:そうですね。「うつ」の人は几帳面に仕事したり、山ほど残業したりすることが多いのですが、真面目というより、そうやって仕事をしなければ、他者からの「承認」を失ってしまうという不安から行動している面があります。その結果、いつも他人に合わせて無理をしてしまうので、自由も感じられなくなってしまうのです。
——「承認」は人間にとって重要なので、逆に不安の原因にもなるのですね。山竹:そうです。また、「うつ」の人の傾向として、周りの人の「承認」にばかりこだわっています。先ほど紹介しましたが、「承認」は周りの人ではなく、自分が想定する一般的な人々(一般的他者)でもいいわけですが、強いストレスもあって、そこに目が向かっていません。そのため周囲の承認にますます固執してしまい、心身ともに疲れ果ててしまいます。
「うつ」の人は、「こうであらねばならない」という強固な思い込みがあり、そうあらねば周囲から承認されない、という不安があります。ですから周囲の人は、そこまでしなくてもいい、ありのままのあなたでいいんですよ、という「承認」を示す態度をとり、一般的他者の視点から思い込みを自覚させることが大事ですね。
「自分探し」をしている人、そんな部下を抱える上司へ
——「自分探し」をしている人に、どんなアドバイスがありますか?山竹:まずは、自分が信頼できる人に話を聴いてもらうことですね。そして、話しながら、自分の感情に注意を向けることです。自分の感情に気づくと、自分が本当に何をしたいかが明確になってきます。
自分の望んでいる方向が見えてくれば、自分の意志でその道を歩き始めることができますから、「自由」の感覚が増してきます。また、そうやって話を聴いてもらうことで、自分が進もうとする道が、周囲の人たちから承認される可能性があるのかどうか、相談相手の「承認」をとおして考えることができます。
そして実際に「自由」と「承認」を確保できれば、「本当の自分」を実感できる可能性は高まるでしょう。
——「自分探し」に悩む部下を抱える上司はどうすればいいのでしょう?山竹:同じことになりますが、信頼できる人として部下の話を聴いてあげることですね。そして、上司であれば、部下が「自由」と「承認」をより多く感じるためにできることはたくさんあるはずです。
——部下に「転職したい」「ほかの仕事に変わりたい」と言われても、うろたえる必要はないわけですね。山竹:ほんの一言の「承認」や、ちょっとした行動の「自由」を与えるだけで、「本当の自分」を実感する可能性はあります。また、部下がその会社でやりたいこと、例えばそれが会社で評価される可能性を話し合うということだけであっても、相手は理解されたと感じるものです。部下の表面的な言葉に惑わされず、その奥にある「承認」や「自由」の感覚に目を向けることが大事です。
現象学という哲学的思考法から見た「本当の自分」とその探し方。いかがだったでしょう? 「幸せの青い鳥」ではありませんが、「本当の自分」はどこか遠いところにあるのではなく、今・ここにあります。その扉のカギは「自由」と「承認」。まずは、自分の感情に注意を向け、自分自身を認めていきましょう。
【関連書籍】
■『「本当の自分」の現象学』(山竹伸二著 NHKブックス)【関連記事】
「哲学者に聴く ・本当の自分を探す(前編)