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希望のある職場・希望のない職場

あなたの職場には「希望」がありますか?パフォーマンス、能力だけでなく、希望という視点から職場を見てみてください。希望があれば何かが生まれてきます。どうすれば希望が生まれるのか?その秘密を探ります。

宇都出 雅巳

執筆者:宇都出 雅巳

コーチング・マネジメントガイド

あなたの職場に希望はありますか?

あなたが働いている職場をちょっと思い浮かべてみてください。あなたの部や課、チーム、もしくは会社でも結構です。

あなたの職場には「希望」はどれぐらいありますか?

もし、10点満点で点数をつけてみるとしたらどうでしょう? 希望に満ち溢れている状態を10点、希望がまったくない絶望の状態を1点として、点数をつけてみるのです。

「希望」とは将来実現したい願い、そしてその願いが実現する見通し・可能性を意味します。職場に置き換えてみれば、業務のビジョンや目標、そしてその実現可能性ということになるのかもしれませんが、職場の希望は、それだけで測れないような気がします。

たとえ、ビジョンや目標が設定されていて、業績が好調であったとしても、それが希望のある職場とは限りません。希望について研究する「希望学プロジェクト」を立ち上げた玄田有史・東京大学社会科学研究所教授は、「希望を持つ鍵は、人と人の「つながり」、つまりはコミュニケーションの中にある」と主張しています。(『交感する科学』(ベルシステム24総合研究所編)「期待と信頼がなければ希望は生まれない」より)

玄田教授らの希望に関する調査・分析、主張を参考に、希望ある職場にするために、マネジメントに何ができるのかを考えてみましょう。

職場の人間関係が希望をもたらす

玄田教授らは仕事に対して実現可能性のある希望を持っているかどうかを調査し、それが職場の人間関係の状況によってどのように違うのかを分析しました。その結果が下のグラフです。(『交感する科学』より)

 


職場の人間関係は以下の3つのタイプの人がいるかどうかで分析されています。

1)「心配事や悩み事を聞いてくれる人がいるか」(相談)
2)「自分の能力や努力を高く評価してくれる人がいるか」(評価)
3)「自分に期待してくれる人がいるか」(期待)

3つの人間関係が希望に与える影響をみてみると、「相談する人」「評価する人」「期待する人」のどれについても、そういう人がいる方が仕事に希望を持ちやすくなっています。3つのうちのどれであっても、こうした人間関係を築いていくことで職場に希望をもたらすことができるといえるでしょう。

さらに、3つを細かくみていくと、希望ある職場にするためのキーとなる要因が浮かび上がってきます。

もっとも重要なのは「期待してくれる人」

玄田教授のほか、多くのさまざまなコミュニケーションの最先端研究者・実践家が知見を寄せています
先ほどのグラフで、3つの人間関係が存在するかどうかによって、希望がある・ないにどれぐらいの差が生まれるかを見てみましょう。

そこから浮かび上がってくるのは、「自分に期待してくれる人がいる」ことの重要性。

「心配事や悩み事を聞いてくれる人がいるいない」では、その差が約5ポイントなのに対して、期待してくれる人の有無では11ポイント以上になっています。次いで、「自分の能力や努力を高く評価してくれる人」が約9ポイントとなっています。

玄田教授は「社員一人ひとりが「自分は期待されている」というメッセージを職場で受け止められる環境づくりが何より重要だろう」と述べています。(『交感する科学』より)

玄田教授らの調査によると、職場において「期待してくれる人」がいる人の割合は37%。6割以上の人には「期待してくれる人」がいません。まだまだ、マネジメントができる余地はあるといえるでしょう。(「心配事や悩み事を聞いてくれる人」がいる人は35.4%、「自分の能力や努力を高く評価してくれる人」は47.3%となっているます。

希望を与えるマネジメントとは?

さて、あなたの職場の状況はどうでしょう? 職場における3つの人間関係の状況を振り返ってみてください。

心配事や悩み事を聞いてくれる人がいますか?
自分の能力や努力を高く評価してくれる人がいますか?
自分に期待してくれる人がいますか?

特に最後の「期待してくれる人」は玄田教授らの調査・分析結果からわかるように、大変重要です。

忙しい時間の中で、心配事や悩み事を聞く余裕はないかもしれません。また、能力や努力を高く評価しようにも評価できない部下がいるかもしれません。しかし、相手に「期待している」というメッセージを伝えることは、心の持ち方、あなたのあり方一つでできるのではないでしょうか? 

玄田教授は企業の管理職に「期待」して次のようなメッセージを伝えています。

「職場における管理職の最も重要な仕事は、部下の仕事や能力を評価することにある。しかし、どんなにすぐれた管理者であっても、部下のすべてを知ることはできない。ときには評価の誤りを犯すこともある。そのような状況のなかで、部下に希望を持って仕事をしてもらうには、自分の言葉や行動、そして働く姿勢など、あらゆる手段を通じて、部下に信頼や期待を伝え続けることである」『交感する科学』より)

あなたの期待が部下をはじめ、職場全体の人に希望を与えます。そのためには、あなたがあなた自身に対して期待を持ち、それを伝えることから始まるのです。

あなたは自分に何を期待していますか?

【参考書籍】
■『交感する科学—ビジネスを深化させる最先端コミュニケーション研究』(ベルシステム24総合研究所編)

【参考サイト】
■『希望学』:東京大学社会科学研究所 希望学プロジェクト

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