◆ラリックやラパンの作品に触れるある天気のよい日曜日、東京・目黒にある東京都庭園美術館を訪ねてみました。この美術館は、旧朝香宮邸の邸宅と庭園を開放したもので、建物そのものが展示空間であり、アールデコ様式の優美な建築物。竣工は1933年ということですから、約70年も前の建築です。さて、内装や照明器具など、アール・デコ様式でまとめられた装飾の世界に浸ってみましょう。
旧朝香宮邸を見学した感想を述べる前に、「アール・デコ様式って?」、「朝香宮とは?」という方のために、ウケウリですが、簡単に書いておきます。
アール・デコ様式について:書物などによると、19世紀末から20世紀にかけて欧米、特にフランスを中心に流行した装飾様式のこととあります。建築や室内装飾、家具などに取り入れられた幾何学的模様を中心とした様式です。
朝香宮について:朝香宮家は、明治39年に久邇宮朝彦親王の第8王子鳩彦王が、明治天皇より宮号を賜って創設された宮家だと、パンフレットにあります。旧朝香宮邸は、宮内省やフランスのアンリ・ラパンの設計によってつくられたものです。一時は首相の公邸や迎賓館として使われていましたが、東京都庭園美術館として、1983年に開館されました。
建物内に足を踏み入れて、最初に目にするのは、正面玄関のガラスに施されたレリーフ。これが有名なルネ・ラリックによるものだそう。右端の部分にひび割れがあるのが残念ですが、乳白色の色といい、女神の姿といい、なんとも優雅な工芸品です。
朝香宮ご夫妻の強いご希望によって、ラパンに依頼されたという室内は、直線を基調にしながらも、出入り口や天井などところどころに曲線を取り入れたり、カーペットと石など、柔らかい素材と硬いものを組み合わせるなど、変化のある部屋が広がっています。大食堂の照明器具は、ガラス扉と同じ、ラリックのシャンデリアです。

その一方で、ラジエーターカバーや壁の布クロスに動植物をモチーフに用いるなど、親しみを感じる仕掛けもあり、ここでどんな暮らしがあったのかと想像を膨らませてしまいます。もともと個人の邸宅だったせいか、装飾的でありながら、落ち着きのある空間でした。
ところで、なぜ、私がこの美術館を訪れたいと思っていたかについて、次のページで説明しましょう。