キッチン/キッチン選びの基礎知識

アスベストとキッチンの熱い関係

業務用はもちろんのこと、家庭のキッチン空間においてもアスベストは形を変えていろいろな部位に使われてきました。これからキッチンリフォームを考えるときには適切な対応が必要となります。

執筆者:黒田 秀雄

アスベストとキッチンとの熱い関係

アスベスト(石綿)はキッチン空間に長年使われてきました

11月29日付朝日新聞朝刊に「パン職人の死は『オーブン石綿が原因』遺族が労災申請」というショッキングなニュースが報じられました。
神戸市灘区のパン職人が昨年68歳で亡くなった原因は、製菓会社・レストラン・ホテルなどで業務用オーブンを使ってパンやケーキの職人として50年以上働いてきたためだと主張しています。業務用オーブンの内部や開閉部のパッキンに石綿が断熱材として使われ、また耐熱手袋にも石綿が使われており、これらが長年にわたってパン職人の身体を蝕んできたものだという訳です。
かって使われてきたオーブンが特定できないためその因果関係を明らかにすることはかなり困難という見方もありますが、1980年代以前に作られた業務用オーブンの大半に断熱材として白石綿が使われていたそうです。

Wikipedia asbestos より

アスベストの歴史は古く、古代エジプトのミイラを包む布やランプの芯として使われ、20世紀に入って耐久性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性等に特に優れた安価な材料として、建築用資材や家庭用品の部品や電車や車両のブレーキ材、設備配管のシールやパッキン材、排気ダクトの被覆材など非常に広範囲に利用されるようになりました。1970年代の高度成長期に大量に使われたアスベストの人体への健康障害の潜伏期間(20年~30年)が過ぎ、21世紀に入るとアスベストが原因と思われる中皮腫や肺がんによる死亡者が増加し、人体や環境への有害性が深刻な問題として取り上げられるようになってきたわけです。

1971年に環境庁が設置されましたが、こ の頃は「アスベストの消費量は、その国の科学の進展度に比例する」とまで言われたそうです。こんなに大量に使われてきたアスベストを基材や混成材とした内装材料ですが近年になってその使用は規制を受けるようになり、1975年(昭和50年)には吹付けアスベストが原則禁止され、それまでに建築された学校建築等では1988年頃にはこの吹付けアスベストの除去がほぼ終わったといわれていましたが、先日11月29日の文科省調査では「石綿飛散の恐れ・全国35都道府県で487校・日常的に立ち入る教室や体育館等の部屋数は933」と幼稚園から大学や大学研究機関まで多くの子どもや若者たちが利用している場所での除去が完了していないという結果が公表されました。

2004年(平成16年)10月1日の労働安全衛生法の改正で、ようやくアスベストを1%以上含む製品の製造、輸入、譲渡、提供又は使用が全面的に禁止されました。

こんなに怖い材料であるアスベストも、キッチン空間に課せられた不燃という課題を解決するのに最適な素材として、長年にわたっていろいろな箇所に使われてきたのです。キッチン空間は建築基準法で火気使用室として内装制限を受けるため不燃仕上げとすることが決められており、その最適素材として壁材や天井材の下地材や仕上げ材として使われ、キッチンキャビネットでもコンロとレンジフード周りの不燃材としても必ずと言ってよいほど使われてきた素材です。

11月10日付で経済産業省から「石綿(アスベスト)を含有する家庭用品の実態調査(第3回報告)」が公表され、「キッチン」「電気用品」「ガス・石油製品」「床材・壁紙」「自転車」「水栓器具」「浴室」「トイレ」「その他」関連の調査結果及び問い合わせ先一覧がPDF形式で見ることができます。

10月6日付と11月7日付け国民生活センター(http://www.kokusen.go.jp/)報道発表資料では「アスベスト」と「耐震補強」を口実にした悪質な住宅リフォームの相談件数が増えているので注意を喚起する要望が出されました。

石綿と間違いやすい材料に岩綿(ロックウール)がありますが、これは玄武岩、鉄炉スラグなどに石灰を混合し、1600度の高温で溶解させ繊維状に取り出した 人造鉱物繊維のことを言います。アスベストの代替え材料として使われています。


あなたのキッチンのアスベスト使用状況は?

キッチン空間は不燃仕上げとする必要から、内装の下地材や仕上げ材にはアスベストが混成されたフレキシブルボードや珪カル板や不燃化粧板などが使われてきていました。使用中の住宅でこれらの建材からアスベストが飛散することはあまり考えられませんが、リフォーム工事等で内装を解体撤去する場合には専門業者に依頼し最適な方法で飛散を防止する必要があります。

下にリストアップしたように最近発売されたシステムキッチンではアスベストを使用したものはありませんが、かってはレンジフード横の不燃仕上げ吊り戸棚、ガスレンジ横の断熱パネル、シンク裏の防滴塗料や防露材、ミニキッチンやコンパクトキッチンと呼ばれるワンルームマンション用の1200幅程度のキッチン内側の不燃仕上げ材、水栓金具や給湯器のパッキン類など様々な箇所に使われてきました。
システムキッチンリフォーム工事の時は内装材同様に飛散防止の手だてをきちんとして信頼できる業者に依頼する必要があります。


国産キッチンメーカーからアスベスト使用実態に関する情報が開示されています


石綿(アスベスト)に関する松下電工の状況

INAX大切なお知らせ:当社におけるアスベスト(石綿)の使用状況について

TOSTEM:過去に販売したアスベスト配合製品について(アスベスト配合材料を用いた製品)

TOTO製品における石綿(アスベスト)の使用状況について

重要なお知らせ:サンウェーブ製品におけるアスベスト(石綿)の使用状況について

重要なお知らせ:ノーリツ製品におけるアスベスト(石綿)の使用状況について

日立ハウステック:石綿(アスベスト)の使用に関する当社の状況について

クリナップ/重要なお知らせ:当社における、アスベスト(石綿)の使用状況について

アスベスト(石綿)に関する永大産業の状況について

ヤマハリビングテック:重要なお知らせ

東建ナスステンレス:当社製品のアスベスト(石綿)の使用状況についてお知らせ

システムキッチンのミカド:重要なお知らせ

(順不同ですが、ページ数の多い順にリストアップしました)



(社)日本石綿協会の公式サイトにアスベストに関する様々な情報が開示されています。

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