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簡単解説!樹脂製サッシ耐火偽装の問題点

新年明けたばかりの1月初旬、国土交通省は住宅に使われる樹脂製サッシの耐火性能試験で不正があったことを発表しました。耐火性が低いサッシではどのような問題があるのでしょうか?わかりやすく解説します。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

今回の耐火偽装は「窓枠」で起こりました。
今回の耐火偽装は住宅の「窓枠」で起こりました。
新年が明けたばかりの1月8日、国土交通省が樹脂製サッシの耐火性能試験で不正があったことを公表しました。2007年末、ニチアスの耐火材(ボード)偽装に続き、今回は住宅の「窓枠」の耐火偽装です。

樹脂製サッシは近年ではアルミ製に代わり使う人が増えています。不正はその樹脂製サッシの防火性能試験で起こりました。防火性があることを証明する大臣認定を受ける際に、試験結果が有利になるよう細工したものを使用して合格したということです。実際には耐火性の劣るサッシが出荷されていました。この樹脂性サッシ耐火偽装が私たちにもたらす問題点は具体的にどのようなことなのでしょうか。

樹脂製サッシってなに?

樹脂製サッシは木質感を出すことができ、インテリア性が高い(写真はイメージ)
樹脂製サッシは木質感を出すことができ、インテリア性が高い(写真はイメージ)
もともと窓ガラスを囲う窓枠部分には頑丈なアルミが多く使用されていました。しかしアルミは熱伝導率が高いため熱を伝えやすく、断熱性に劣ること、結露が発生しやすいことが課題となっています。

最近では高断熱・高気密の家が注目され、窓ガラスに複層ガラスなど断熱性の高いものを使用するとともに、窓枠にはアルミに代わり熱伝導率が低く断熱性の高い樹脂(塩化ビニル)を使用するケースが増えてきました。枠全体に樹脂を使用したもの、外側はアルミを使い、室内側には樹脂を使うなど組み合わせに工夫して性能をアップさせた複合サッシなども多く出ています。

樹脂製サッシは断熱性だけでなく水密性、気密性が高いと言われ、木質感を出すことも可能のためインテリア性が高く、人気が出ています。価格は一般的にアルミ製よりも高くなりますがこれからはますます需要が高まると考えられている製品です。

サッシの耐火性能が劣ると起こる問題点

網入りガラスの部分は窓枠にも耐火性能が必要。
網入りガラスの部分は窓枠にも耐火性能が必要。
サッシ(窓)には網入りガラスを使用しているもの、していないものがあります。今回問題になるのは網入りガラスを使用している窓です。

網入りガラスを使用している窓は、何らかの理由で防火性が必要とされている窓だと考えてください。例えば、都心部で建物が密集している地区で隣の建物と近い位置にあるサッシ、マンションでは共用廊下に面しているサッシなどで網入りガラスが使用されています。

網入りガラスは火災が発生してから20分間、熱に耐えられる防火性能を持っています。他住戸からの延焼被害を食い止めたり、その20分の間に避難することを想定しています。窓ガラスだけではなく、窓枠にも同じ耐火性が必要となります。

今回の樹脂製サッシの耐火偽装では、本来20分の耐火性を持つべき窓枠において、不正により13分程度の耐火性しか持ち合わせていないことがわかりました。これでは万が一火災などが発生したときに本来あるべき耐火性が期待できないため、延焼が広がったり逃げ遅れたりする危険が増すと考えて良いでしょう。

ちなみに窓ガラスが網入りでないサッシは、もともと防火性が必要とされていない部分なので、今回の件は気にしなくて良いでしょう。

次のページで今回の不正事件の概要と今後の対応をまとめます。
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