不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

不動産売却における媒介契約の種類と問題点

住宅を売却するときにはまず不動産業者との間で媒介契約を交わします。媒介契約にはどのような種類があるのかを知るとともに、それぞれの問題点についても理解しておきましょう。(2016年改訂版、初出:2002年9月)

執筆者:平野 雅之

【ガイドの不動産売買基礎講座 No.22】

マイホームを買換えるとき、あるいは単に売却するだけのときでも、売却活動を始めるためにはまず不動産業者との間で媒介契約を締結します。今回はこの媒介契約の種類と主な特徴、それぞれの問題点についてみていくことにしましょう。

なお、契約の際の注意点など、媒介契約について詳しくは ≪家の売却~媒介契約の特徴と選択のポイント≫ をご覧ください。


一般媒介契約

売主は、複数の不動産業者に売却を依頼することができます。このとき、他にどの業者へ依頼したのかを明らかにする「明示型」と、どこへ依頼したのかをいわなくてもよい「非明示型」の2種類があります。

一見すると、売却の窓口が広がって売りやすそうにも感じられるでしょうが、依頼を受けた業者には(信義上の責任は別として)売却活動に関する何の義務も責任もなく、他の業者で契約が決まればまったく利益にならないため、広告経費なども使いにくい状況になります。

実際のところ、一般媒介契約で売却の依頼を受けながら何もしない業者もあるでしょう。物件検索サイトへ登録するだけで済ますなど、積極的な営業活動をしない場合も少なくありません。


専任媒介契約

一般媒介とは異なり、依頼することができるのは1社のみです。依頼を受けた不動産業者は、物件の情報を7営業日以内に指定流通機構へ登録するとともに、2週間に1回以上、業務処理状況を文書または電子メールにて売主へ報告しなければなりません。

専任媒介契約の場合、売主は、自らみつけた相手方となら、依頼した不動産業者を通さずに売買契約をすることができます。つまり、自分の知人や親族、あるいはその紹介を受けた人との間であれば、業者を外して売買契約が可能なのです。

ところが、その規定を逆手にとって、他の業者から紹介されたお客様と契約をしてしまう売主も残念ながらいます。いわゆる「抜き」ですが、こうなると売却の依頼を受けた業者が売主から騙される結果になりかねません。

そのため、売主との間で信頼関係ができていないと、不動産業者は売却活動になかなか集中できない場合もあるでしょう。


専属専任媒介契約

専任媒介契約よりも不動産業者の義務が重くなり、指定流通機構への登録は5営業日以内、文書または電子メールによる業務処理状況報告は1週間に1回以上となっています。

その代わり、売主は、自らみつけた相手方であっても必ず依頼した不動産業者を通さなければ売買契約を結ぶことができません。逆にいえば、依頼を受けた業者はどのような形であれ、売買が成立すれば報酬を得ることができるため、自ずと売却活動にも力を入れやすくなります。


お互いの信頼関係が第一

どのタイプの媒介契約にするのかは、売主であるお客様の自由です。しかし、どれを選ぶ場合であっても、信頼できる不動産業者へ依頼することはもちろん、お互いの信頼関係を損ねることのないようにしなければなりません。

以前、それぞれの不動産業者に黙って「専任媒介契約」を3社に出していた売主もいましたが、必ず発覚しますから何のメリットもありません。そればかりか、業者間の情報の混乱を招いて、結局は売主が損をすることになりかねないでしょう。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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