不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

売買契約書のポイント(売買対象面積・実測・境界等)

「売買契約書のポイント」の3回目。今回は売買対象面積や境界の明示、土地の実測、代金の清算などに関する条項についてみていくことにしましょう。(2017年改訂版、初出:2004年5月)

執筆者:平野 雅之

【ガイドの不動産売買基礎講座 No.98】

不動産売買契約書について、前回はその全体像や売買代金、手付金などのポイントを説明しました。引き続き今回は、売買対象面積、境界の明示、土地の実測、代金の清算などに関する条項をみていくことにしましょう。


売買対象面積

売買対象面積の条項例
公簿売買(実測による代金の清算をしない契約)の場合における一般的な条項で、マンションや建売住宅の売買では、特殊な事情がないかぎりこの条項が適用されます。

また、土地・建物の公簿売買では、単に「登記記録の面積による」という記載だけでは足りず、面積の増減による清算をしない旨が明記されていることが必要です。
(数量指示売買ではないことの明確化、買主の減額請求権の排除)

なお、公簿売買による場合でも、実測面積が著しく少ないことが原因で当初予定していた建物が建てられないようなとき、買主は錯誤を理由に契約の無効を主張できるケースもあります。そのため、大きなトラブルを伴うことになりかねません。

いずれにしても、実測面積に関する何らかの資料がないときには、土地の公簿売買は避けたほうが賢明でしょう。


境界の明示および実測図の作成

境界の明示および実測図の作成の条項例
実測売買のときには、その前段階として土地の実測をすることが必要です。この場合、実測の費用を売主と買主のどちらが負担するのか、さらに隣地所有者等の立会いや有資格者による図面の作成などについて明記されていることを確認しなければなりません。

また、隣地や前面道路が公有地や公道の場合に、その境界確認(官民査定)には相当の期間を要するため、実務上ではこれを省略することもあります。「隣地所有者等の立会い」の対象範囲について明記されていれば、認識の違いによるトラブルを避けることができます。

なお、マンション以外の土地・建物における公簿売買のときでも、この条項の前半の「境界の明示義務」が規定されているほうが望ましいでしょう。


地積更正登記

地積更正登記の条項例
実測面積と登記記録の面積が異なった場合には、地積更正登記によって登記記録の面積を一致させるほうが望ましいものの、実務上では地積更正登記をしないケースが少なくありません。

もちろん「地積更正登記をする」としてもよいわけですが、その場合には費用負担をどうするのか、手続き上の問題で物件引き渡し時までに地積更正登記が完了しないときにはどうするのか、などについて確認するようにしましょう。


実測による売買代金の清算

実測による売買代金の清算の条項例
実測売買のときには、その清算方法が明記されているかどうかを確認することが必要です。

この場合、あらかじめ清算単価を決めておくことは当然として、私道負担部分を含むのか含まないのか(含まないことが一般的)、あるいはセットバックが必要な敷地の場合にその部分をどうするのかなどについて明記されていないと、トラブルの原因になります。

なお、実測売買の場合であっても建物については測量や清算をしないことが一般的です。

清算単価については、1平方メートルあたりの金額で記載されていることが一般的です。もし、これが1坪あたりの金額として記載されている場合であれば、1坪=3.3平方メートルなのか、あるいは1坪=3.30578平方メートルなのかをしっかりと確認しなければなりません。

認識の相違が生じる可能性がある部分については、できるかぎり明確に取り決めておくことが大切です。


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