不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

不動産取引における個人情報保護法の適用

個人情報保護法が平成17年4月1日より全面施行されていますが、他の業界では適用規模に満たないような中小業者でも、不動産業者はほぼすべてが適用対象とされています。不動産業界における特殊事情と、消費者に求められる対応を知っておきましょう。(2015年改訂版、初出:2005年4月)

執筆者:平野 雅之


個人情報保護法が平成17年(2005年)4月1日に全面施行されました。当時、それぞれの職場で個人情報保護法への対応に奔走されたかたも少なくないでしょう。もちろん、不動産業界も例外ではありません。

個人情報保護法への実務的な取り組みについては、一般企業では経済産業省によるガイドラインに沿って行なわれるケースが多いでしょう。

しかし、不動産業界においては国土交通省が定めた「不動産業における個人情報保護法に関するガイドライン」(国土交通省所管分野における個人情報保護に関するガイドライン:平成16年12月2日国土交通省告示第1500号、最終改正:平成24年3月30日国土交通省告示第363号)、および「不動産業における個人情報保護のあり方に関する研究会」がまとめた指針に基づいて対応することになっています。

今回は、個人情報保護法の適用における不動産業界の “特殊事情” と、個人情報保護法のもとでの消費者の対応について、それぞれの概略を説明することにしましょう。


個人情報保護法の基本

個人情報の流出事件などが相次ぐなかで、公共機関や企業における個人情報保護対策への社会的要請が高まり、個人情報保護法が公布されたのは平成15年5月です。

そして、当初の国や自治体に加え、平成17年4月1日からは5,000件を超える個人情報を取り扱う民間企業や医療機関なども新たに適用対象となりました。

規制対象となる個人情報には、氏名・性別・生年月日・住所・電話番号・メールアドレス・勤務先・役職・年収・財産など、 “生存する” 個人に関するさまざまなもの(特定の個人を識別できる情報)が含まれます。

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スマホや携帯に記憶させた電話番号やメールアドレスも保護対象に

これらのいずれかひとつでも企業などが取得する際には、その利用目的をできる限り特定して明示し、また、その個人情報を第三者に提供する際には、原則として事前に本人の同意を得ておくことが必要です。

さらに、企業内部などでも個人情報保護のために必要かつ適切な措置を講じる義務があり、個人情報の漏洩などが生じないよう、管理体制の構築や従業員の監督、指導、教育なども行なわなければなりません。


不動産業界における個人情報保護法の特殊事情

個人情報保護法の対象となる「個人情報取扱事業者」からは、取り扱う個人情報の数が5,000件以下(過去6か月間のいずれの日にも5,000件を超えていないこと)の企業などが除かれます。

したがって単純に考えれば、ある程度大きな不動産業者が個人情報保護法の対象となり、数のうえでは大半を占める中小の不動産業者は個人情報保護法の対象外になるでしょう。

ところが、個人の氏名・住所などだけでなく、「物件情報も個人情報である」(売買物件、賃貸物件を問わず、成約データも含む)とされたために状況は一変しました。

全国のほぼすべての不動産業者は、各都道府県の宅地建物取引業協会・全日本不動産協会・その他の業界団体などを通じて「レインズ」(不動産業者間における不動産物件検索システム=指定流通機構)に加入しており、これが個人情報保護法で規定する「個人情報データベース等」に該当するものと判断されたわけです。「レインズ」には当然ながら、5,000件をはるかに超える膨大な数の物件情報が登録されています。

そのため、(いずれの業界団体等にも加入していない、あるいは業界団体には加入しながら「レインズ」には加入していない特殊な不動産業者を除いて)すべての不動産業者は「個人情報取扱事業者」として個人情報保護法の対象となったのです。

普段の業務で実際に「レインズ」を活用しているかどうかは関係なく、ひとりで営業しているような零細業者も、郊外の駅前に店舗を構えて老夫婦ふたりで細々とやっている賃貸業者も、あるいはひとりのお客様も抱えていない開業直後の不動産業者も、すべて「個人情報取扱事業者」として大企業と同等の対応を求められたのですから、法の施行当時に一部で大きな混乱が起きていたのも無理からぬことでしょう。

施行を目前に控えていた頃に開催された、個人情報保護法への対策を説明するセミナーの会場では、「法律を廃止しろ!」と声高に叫ぶ老経営者の姿もありました。


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