今回のマンション構造計算書偽造事件をめぐってはマスコミなどでも大きく取り上げられ、社会に不安と疑心暗鬼とが広がっているようです。多くの消費者が建物の構造面に関心を寄せ、各マンションデベロッパーなどへの問い合わせも殺到しているようですね。私のところへも多くのユーザーやマスコミ関係のかたからお問い合わせやご質問をいただいておりますが、その場で簡潔にお答えできるほど単純な問題でもありません。そこで今回は、事件が起きた背景を中心に私なりの考えをまとめておきたいと思います。
一連の事件が引き起こされた背景として多くの人が指摘しているように、建築コスト削減のための過度な圧力があったことは確かでしょう。首都圏ではこの数年間、記録的なマンションの供給ラッシュが続くとともに、中小デベロッパーの新規参入も相次いでいます。そんななかで、大手を含めほとんどのデベロッパーが事業用地の確保に四苦八苦しているのが現状です。とくにこの2~3年では、入札方式による土地売却(複数のデベロッパー相手に行なわれる私的なもの)が多くなり、従来では考えられないような高値で落札されるケースが多いという話もよく聞きます。
古参のデベロッパーによる事業収支計算では割が合わないような価格で土地が仕入れられるわけですが、その分をそっくり販売価格に転嫁しては事業が成り立たないのは明白で、原価コスト圧縮のしわ寄せは、消費者の関心が比較的薄い、構造などの基本性能面へ向かったり、設計会社や施工会社への外注費削減へと向かったりします。コスト削減の要請は、どのデベロッパーでも多かれ少なかれあることですが、ことに商品ブランド力がなく、安めの販売価格(単価)設定で勝負せざるを得ない(住宅の性能をセールスポイントにできない)一部のデベロッパーにおいて、より強烈なコスト削減圧力があったことは容易に想像できます。
それでも最低限のルールである建築基準法を守っていれば、今回のような事件には至らなかったわけですが、一部の関係者による “暴走” が今回の事態を招いてしまいました。また、そこには低コスト建築による施工会社側からの受注競争もあったことでしょう。
ただし、勘違いしないでいただきたいのですが、大手なら大丈夫、中小は危ないなどといったことではありません。中小デベロッパーでも優れた商品を販売するところは多く、逆に大手デベロッパーでも雑な商品づくりをしているところはあるのです。
激しい価格競争を生んだ背景として、不動産業の免許制度にも触れておきたいと思います。現在の宅地建物取引業に関する免許制度は、例えば年間数百億円を売り上げる大手デベロッパーも、郊外の寂れた駅前で細々と賃貸だけを手掛ける仲介業者も、同じ免許制度のもとで営業しています。異なるのは営業所設置エリアに基づく、大臣免許か知事免許かということだけ。極端な話をすれば、きのうまで老夫婦だけでやっていた業者でも、土地の手当てと資金の借入れさえできればマンションデベロッパーになることができる制度です。
もちろん現実には経験や人員、各種の下準備なども必要で、そう簡単にマンション分譲事業ができるものではありませんが、ほとんど実績がない業者に対しても金融機関(都市銀行とはかぎりません)が積極的に事業資金を貸付けている現状があり(デベロッパー規模ではなくても、金を貸すから土地を買え、という金融機関からのセールスは多い)、そこには企業倫理の審査などもありません。その結果として、強引な商品企画や販売戦略をとるような業者でも比較的容易に参入できる土壌ができあがってしまっています。
その他にも今回の事件の要因をいくつか挙げることができるでしょうが、ここではあえて建築確認制度の問題点を提示しておきたいと思います。
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