不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

契約のときに売主本人が来なくて代理人が!

不動産の取引では売主の本人確認がたいへん重要です。ところが、売買契約締結のときに売主本人が来なくて、その代理人だけだった場合にはどうすれば良いのでしょうか。(2017年改訂版、初出:2006年5月)

執筆者:平野 雅之


不動産の売買契約を締結するときには、売主の本人確認をすることが非常に重要ですが……。



question
先日、土地の売買契約を行ない、引き渡しは1か月先になっています。売主は個人の方ですが、契約のときは「都合が悪くなった」ということでその売主本人が現れず、その代わりに代理人だと名乗る人が来ました。その場では不動産業者からいわれるままに売買契約書へのサインをし、手付金の200万円も支払ったのですが、家に帰ってから「大丈夫なんだろうか」とたいへん不安になってきました。ちなみにその土地の見学へ行った際などにも売主には会っていません。いったいどうすれば良いのでしょうか?
(東京都八王子市 匿名 40代 男性)



answer
新築物件を事業主から購入する場合は別として、中古住宅や土地の売買契約を締結する際には、売主が本人かどうか、さらにはその売主(と名乗る人)が真の所有者(売却する正当な権限を持つ人)かどうかを確認することが極めて重要です。

売買契約

売買契約では売主を確認することが極めて重要

通常であれば売主本人が売買契約の場に立ち会い、権利証の確認や登記事項証明書との照合と同時に、運転免許証やパスポートなどによって名義人と同一人物かどうかを確認することが基本です。

また、権利証や運転免許証などの偽造もあり得ないことではなく、売主側の媒介業者がしっかりとしていれば、いろいろなテクニックを使って売主本人に間違いないかどうかを契約前の段階、あるいは売却の依頼を受ける段階で確認していることでしょう。

しかし、事前に媒介業者が確認していたとしても、売買契約の場には売主が出席することが大前提であり、売主本人の都合が悪ければ契約日時そのものを変更するべきでした。

とはいえ、すでに売買契約を締結して手付金も支払ってしまったようですから、不安になることは当然ながら、これから決済までの間にするべきことを考えてみましょう。

なお、売主が破産している場合には、破産管財人の弁護士が代理人となって売買契約を締結することがあります。このようなときには弁護士の権限を証明する書面を確認できれば、通常は問題ありません。


売主本人の意思をどう確認する?

まず手っ取り早いのは、自分(買主)側の媒介業者の了解を得たうえで、売買契約を締結し終えたことの挨拶として売主本人へ電話をしてみることです。

このとき、売買契約の際に現れた代理人から売主の電話番号を聞いていたとしても、それを鵜呑みにしてはいけません。万一、詐欺や何らかの問題がある売買契約だったなら、本当の電話番号を買主に教えることはないでしょう。

売買契約締結の際には売主から代理人に対する委任状と、それに添付した印鑑証明書があったはずですが(そのふたつがなかったとすれば、売買契約行為自体が非常に問題です)、そこに記載されていた住所と氏名をもとに、104などで電話番号を確認するようにします。

そして、契約の挨拶とともに「この物件に住んでいたときに街の様子はどうでしたか」とか「近くにオススメの店はありますか」など、いろいろな世間話も交えながら不審なところがないかどうかを確認できればベターでしょう。

売買契約

プロの不動産業者ですら騙される事件もある!

売買契約のときに現れた代理人にはとくに不審なところがなく、決済のときには売主が必ず来るという話であれば、電話による確認だけでもたいていは大丈夫です。

しかし、最近では104に電話番号が登録されていないケースも多いほか、また、104に虚偽登録してあった例もかつて実際にあったようです。

慎重を期すのであれば、委任状や印鑑証明書に記載されていた住所地を訪ねて、売主に直接会いに行くほうが確実でしょう。

そのときは買主側の媒介業者の担当者に同行してもらうか、引き渡し前の書類確認などを兼ねることができるのなら司法書士と一緒に行っても良いでしょう。

なお、売主の本人確認をすることは、本来は媒介業者の責任業務ですから、自分が動きたくなければ媒介業者にすべて任せても構いません。実際にどうするのかは買主の考えかた次第です。

万一、決済のときにも売主が来なくて代理人が手続きをするというような話であれば、決済前に必ず司法書士が売主と直接会って本人確認をするような段取りを組まなくてはいけません。


親族による無断売却もある

いずれの場合であっても、売主側の媒介業者や売主の代理人にまったく知らせないままで売主に直接会いに行くと、それぞれに対して信頼関係を損ねるような結果にならないともかぎりませんので、事前に了解を得ることが大切です。

ところが、仮に巧妙に仕組まれた詐欺だったりすると、事前に知らせることで相手側に根回しの時間を与えてしまうことにもなりかねません。

売買契約のときから代理人(と称する人)に不審な点などがあったとすれば、その代理人には知られないように売主と接触することが必要な場合もあり、実際にどうするべきなのかはケースバイケースです。自分の側の媒介業者とよく打ち合わせをしなければなりません。

もっとも、本格的な詐欺なら代理人などといわずに売主に成りすますでしょうが……。

ただし、大掛かりな詐欺などの事件に発展するのはもっと高額な金銭がからむ取引のケースが大半であり、一般の住宅地の取引で事件となる場合には、親族による無断売却などのケースが多いようです。


共有者が多い場合は?

なお、相続された物件などの場合には、全国各地ばらばらに住む兄弟姉妹の共有になっているようなときもあります。

このような物件の売買では、共有者のうちのひとりだけが売買契約締結や決済のときに来て、他の共有者は委任状と印鑑証明書のみで、登記に必要な書類のやり取りは郵送によるケースも意外と多いものです。

このような場合に買主が動く必要はありませんが、他の共有者のところへ司法書士を直接会いに行かせるなど、それぞれの売却意思の確認や本人確認を確実に行なわなければなりません。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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