住宅購入の費用・税金/住宅購入の税金

マイホームの売却で損失が生じたときの特例(2ページ目)

マイホームを売却したときには、譲渡損失を生じることが少なくありません。この場合には所得税などを還付してもらい、その損失を取り戻すことのできる制度があります。少しでも多く還付が受けられるように、制度の仕組みをよく理解しておくようにしましょう。(2017年改訂版、初出:2006年6月)

執筆者:平野 雅之


マイホームを買換えるとき
〔居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例〕

この特例は1998年1月1日以降(住民税は1999年1月1日以降)の譲渡贈与による譲渡などを除く)に対して適用されているのですが、その後の税制改正によって適用期限が延長され、現在は2017年12月31日までに居住用財産を譲渡することが要件となっています。

2018年度の税制改正で適用期限は延長される見込みですが、正式な決定内容などについては改めてご確認ください。

譲渡の期限以外にも、下に挙げるそれぞれの要件をすべて満たすことが必要です。


譲渡する居住用財産の要件

譲渡する年の1月1日時点における所有期間が、土地家屋ともに5年を超えていること
  ※ 災害により家屋が滅失した場合で、その家屋を引き続き所有していたなら5年を超えることになるときは、土地のみの所有期間が5年を超えていれば適用されます。ただし、家屋の滅失後3年目の年の12月31日までに譲渡しなければなりません。
   
自分が住んでいる住宅の譲渡、もしくは住まなくなってから3年目の年の12月31日までの譲渡であること
  ※ 国内にある住宅にかぎられます。
  ※ 2つ以上の住宅を所有している場合には、主として居住の用に供しているほうの住宅にかぎられます。
  ※ 店舗や事務所などとの併用住宅の場合には、控除の対象が居住用部分の面積で案分した損失額にかぎられます。
   
譲渡する相手が自分の配偶者(内縁関係を含む)、直系血族、生計を一にする親族など特殊な関係者ではないこと

なお、家屋とともに譲渡する「敷地の面積」(借地権等を含む)が500平方メートルを超える場合、500平方メートルを超える部分についての損失は譲渡した年の損益通算の対象にはなりますが、翌年以降の繰越控除はできません。

また、2003年12月31日までの譲渡では「契約締結の前日時点において、譲渡する住宅にかかる住宅ローンの残高があること」という要件がありましたが、2004年度の税制改正でこの要件は廃止されました。

したがって、住宅ローンをすでに完済している場合でもこの特例を適用することができます。


新たに取得する居住用財産の要件

譲渡する年の前年1月1日から翌年12月31日までの間に、国内で取得(購入または建築)をすること
  贈与による取得などは除かれます。
   
取得した年の翌年12月31日までに居住を開始すること
  ※ その見込みである場合を含みます。
   
家屋(マンションの場合は専有部分)の登記上の床面積が50平方メートル以上であること
  ※ 店舗や事務所などとの併用住宅の場合には、居住用部分の床面積が50平方メートル以上であること
   
「返済期間10年以上の住宅ローン」(金融機関などからの住宅ローンや社内融資)を利用して取得すること
  ※ 取得した年および繰越控除を受ける各年の12月31日時点において住宅ローンの債務が残っていなければなりません。


その他の要件

繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下(給与所得のみの場合は年収が3,336万円以下)であること
  ※ 譲渡した年における損益通算は所得金額に関係なく適用できます。
   
譲渡した年の前年または前々年に、居住用財産の譲渡に関する他の課税特例(3,000万円の特別控除買換えの特例軽減税率の特例など)の適用を受けていないこと
   
譲渡した年の前年以前3年以内に生じた他の居住用財産の譲渡損失について、この特例などの適用を受けていないこと


損益通算および繰越控除の計算例

〔譲渡損失額=取得費-譲渡価額+譲渡費用〕

※ 取得費や譲渡費用の考え方については ≪マイホームを売却したときの税金の基礎知識≫ をご参照ください。

たとえば譲渡損失額が2,200万円、各年の所得金額が500万円だったとした場合の計算は次のようになります。

譲渡した年
500万円-2,200万円=△1,700万円・・・繰越額1,700万円

2年目(繰越控除の1年目)
500万円-1,700万円=△1,200万円・・・繰越額1,200万円

3年目(繰越控除の2年目)
500万円-1,200万円= △700万円・・・繰越額 700万円

4年目(繰越控除の最終年)
500万円- 700万円= △200万円・・・繰越額 なし


住宅ローン控除との併用は?

この特例と新たに取得したマイホームに対する住宅ローン控除を併用することもできますが、譲渡損失額が大きい場合には上記例のように4年目までは課税される所得がないことになりますので、実質的に住宅ローン控除の適用は5年目からとなります。

ただし、住宅ローン控除の適用はあくまでも入居した年から10年間であり、繰越控除が使えなくなった年から10年間ではないことに注意しなければなりません。


損益通算および繰越控除の特例の適用には確定申告が必要

他の特例の場合と同じく、損益通算および繰越控除の特例の適用を受けるためには所定の書類を添付したうえで確定申告をすることが必要です。

なお、住宅ローン控除の場合であれば給与所得者は2年目以降の控除を年末調整で受けることもできますが、この特例ではそのような取り扱いがありません。

したがって、譲渡した年だけでなく繰越控除の適用を受けようとする各年の所得についても、それぞれ翌年の3月15日までに確定申告をすることになります。

また、譲渡した年の翌年3月15日までに確定申告をして損益通算の適用を受けたものの、決められた期限までに新たな居住用財産を取得しなかった場合や居住を開始することができなかった場合、あるいは対象となる住宅ローンを利用しなかった場合など、所定の要件を満たさなくなったのであれば、修正申告をしたうえで本来の税額を納付しなければなりません。


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