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電柱や電線が「ある街」と「ない街」の資産価値

都市の無電柱化が少しずつ進み、電柱や電線が「ない街」も徐々に現れてきています。これが住宅地の資産価値にどのような影響を及ぼすのでしょうか? 将来的な変化を考えてみました。(2015年改訂版、初出:2007年10月)

執筆者:平野 雅之


みなさんは街のなかに立ち並ぶ電柱や縦横に張りめぐらされた電線をみて、どのように感じますか? その存在が気になってしょうがないという人もいれば、「あって当然。何も感じない」という人もいるでしょう。

ところが、長い目でみればこの電柱や電線が、住宅の資産価値に大きな影響を及ぼすかもしれないのです。

電柱や電線を地上からなくすこと(地中化などによる無電柱化)には、都市景観の向上や交通安全対策、歩行空間のバリアフリー化、都市災害の軽減、情報通信ネットワークの安全性・信頼性の向上など、さまざまなメリットが指摘されていますが、今回は主に都市景観の観点から住宅への効果を考えてみることにしましょう。


無電柱化の現状は?

欧米の都市に比べて日本の無電柱化は大きく立ち遅れているのが現状で、「日本の街並み景観は劣る」といわれる一つの要因にもなっています。

海外では1977年時点までにロンドン、パリ、ボンが100%の無電柱化を達成していたほか、他の主要都市でも軒並み高率となっています。さらに、香港が100%(2004年)、台北が95%(2013年)、シンガポールが93%(1998年)など、アジアの都市でも無電柱化がかなり進んでいるようです。

それに対して日本の状況はどうでしょうか。国土交通省がまとめた2013年度末時点の無電柱化率は、東京23区がようやく7%、名古屋市と大阪市が5%といった水準でしかありません。

さらに、その無電柱化は国道や都道府県道といった幹線道路が中心で、市区町村道などの非幹線道路(=生活道路)では、ほとんど進んでいないのが実態でしょう。

国土交通省などでは1986年度から3期にわたる「電線類地中化計画」「新電線類地中化計画」に取り組み、さらに実効性を上げるため2004年度から2008年度までの5年間は「無電柱化推進計画」を掲げて無電柱化を推進しましたが、なかなか思いどおりに進んでいないようです。

日本の主要都市で無電柱化率が100%を達成するのは、まだこれから数十年先、あるいは来世紀になるのかもしれません。ロンドンやパリなどと比べれば100年以上の遅れとなりそうです。


電柱や電線が「ある街」と「ない街」

しかし、住宅地でも無電柱化を実現したケースが全国で少しずつ現れてきています。次の写真は東京都下の大規模分譲住宅地の例ですが、街並みの整備と合わせた無電柱化で、すっきりとした空間が生まれています。

無電柱化された街並み

空を見上げたとき視界を横切るものがないのは新鮮!


一方、従来の住宅地ではどうでしょうか。次の写真は東京都心部の “高額” 住宅地、その下の写真は首都圏で人気上位の某沿線の “高級” 住宅地です。

都心住宅地

マンションを見上げれば必ず電線が視界に入る

人気沿線住宅地

高級住宅地でも電線からは逃げられない!?


どこにでもある見慣れた風景といってしまえばそれまでですが、電柱や電線があるのとないのとでは大違いです。住宅そのものの見栄えすら異なるように感じられるのではないでしょうか。


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