不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

自治体ごとに異なる、高度地区の制限とは?

都市計画法による「高度地区」とはいったい何でしょうか。建築基準法による制限とはどのように違うのでしょうか。意外と知られていない「高度地区」について図を交えながら解説します。(2017年改訂版、初出:2007年11月)

執筆者:平野 雅之


都市計画法に基づく「地域地区」のひとつに「高度地区」があり、建物の高さに関する制限(最高限度または最低限度)を規定しています。

その一方で、建築基準法では建物の高さについて、第一種・第二種低層住居専用地域内における高さの制限、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限、日影による中高層建築物の高さの制限が規定されています。

建築基準法による建物の高さの制限と高度地区による制限がどのように違うのか、今回は「高度地区による制限」について少し詳しくみていくことにしましょう。


高度地区の制限内容は自治体によって違う

斜線制限を受けたマンション

建物の高さにはさまざまな制限があり、一戸建て住宅でも制限を受けるときがある

高度地区について、都市計画法では「高度地区は、用途地域内において市街地の環境を維持し、または土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区とする」(第9条17項)と定義されています。

また、建築基準法では「高度地区内においては、建築物の高さは、高度地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければならない」(第58条)とされているだけであり、具体的な制限内容は法に定められていません。

建築基準法による斜線制限などが全国共通の規定であるのに対して、高度地区の制限内容は(それを導入するかどうかも含めて)自治体ごとに異なっているのです。

そのため、不動産に関する書籍やwebの解説をみても、高度地区の具体的な制限内容については言及していなかったり、東京都の例だけが載っていたりするケースも少なくありません。都市部では該当する敷地が比較的多いのにも関わらず、あまり知られていない部分も多いでしょう。

宅地建物取引士から重要事項説明を受けるときに使用される「重要事項説明書補足資料」などでも、東京都やそれぞれの地域の中心都市の規定例しか載っていないことが多いようです。

該当する敷地を購入するときには「その自治体の規定がどうなっているのか」について、十分な説明を受けることが必要です。高度地区内における制限の緩和規定なども自治体によって異なるため、注意が欠かせません。


最高限度高度地区の高さ制限

最高限度高度地区は市街地環境の維持を目的として定められるもので、主に北側隣地の日照保護や通風の確保などを考慮した「斜線型高さ制限」と、建物の高さ全体を一定限度以下に抑えるための「絶対高さ制限」に大別されます。

斜線型高さ制限は、北側隣地境界線からの距離に応じて、それぞれの部分における建物の高さの限度を定めるもので、一定の立ち上がりと一定の勾配で表されます。また、斜線型高さ制限と絶対高さ制限を組み合わせた制限の場合もあります。

高度地区(斜線型高さ制限の場合)のイメージ


最低限度高度地区の制限

上記の最高限度高度地区の制限とは逆に、土地利用の増進を目的として建物の最低限度の高さが指定される場合があります。最低限度の高さよりも低い建物は建てることができず、決められた高さ以上の建物を(容積率など他の制限の範囲内で)建てなければなりません。

最低限度高度地区の制限内容も自治体によって異なり、7mや12mなどの規定が比較的多いものの、大阪市のように20mの最低限度を定めている例もあります。

もっとも、最低限度高度地区が指定されるのは主要なターミナル駅の周辺や主要な幹線通り沿いなど、ごく一部の限られたエリアであり、このような土地では最低限度の制限がなくても、たいていは最大限の高さの建物が計画されるでしょう。


主な都市における高度地区制限の例…次ページへ

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