建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

建具職人とつくった忍者屋敷のような家

鈴木信弘さんが文京区春日に設計された木造住宅を見学してきました。大きな開口部を持つ一室空間が特徴的な住宅建築が多い中、それとは正反対の、小さな空間を積み重ねた“忍者屋敷”を思わせる作品でした。

執筆者:坂本 徹也

RCに木造建築のよさを取り入れる

一見、木造のようにも見えるがじつはRC造

文京区春日に鈴木信弘さん(鈴木アトリエ)が建てた家のオープンハウスに行ってきました。建築家の手による住宅は、南面に大きな開口部を持つ開放的な大空間を中心に捉えた建築物が多いのですが、この家はそれとはまったく逆。あえて大きな開口部を設けず、小さな部屋をたくさん積み重ねて迷路のような住空間を生み出した、いにしえの忍者屋敷のような家になっていました。

「この家には2つのテーマがあったんです。ひとつはご主人の趣味である古物の収集と古楽器の演奏への欲求をいかに満たすかということ、もうひとつはいろんな顔を持つ小空間をなるべく多くつくってそこでダラダラ、ゴロゴロしながら暮らしたいというものでした」(鈴木さん)

窓を立体的に見せる衝立
格子戸をくぐりぬけ…

はたしてそのコンセプトは、実際の設計にどう反映されたのか。さっそく拝見していくことにしましょう。

RC造とのことでしたが、正面の外壁には全面に黒く塗装されたレッドシダーが張られているため、一見するとどこか古来の木造建築のよう。しかしながら実際には通気外断熱工法を取り入れた快適性の高い現代住宅ということです。窓枠を20センチのスチール製の衝立で囲み、窓に奥行きを感じさせるというひと工夫がなかなか心憎いですよね。
玄関はどこかの料亭の趣を思わせる白木の格子戸。駐車場のピカピカのシャッターとこの引き戸を共存させてしまうのが、鈴木さん流ということでしょうか。

多趣味人の欲望を満たす家

玄関ポーチ、まるで町家の趣き
銀の衝立は屏風を意識した?

玄関を入ると、正面にいきなり銀の大きな衝立てが……。仄暗い玄関にいぶし銀の輝きを取り込むのが狙いとのことですが、昔の伝統的家屋には玄関に必ず屏風がありましたから、そういうイメージの再生なのかなとも思わせられます。この先には階段があり、さらにその奧には数段下がる形でスタジオがありました。

半地下のスタジオから1階にある書架を見る

AVルームとしても使えるスタジオ

建て主さんの趣味は古書の収集と古楽器の演奏とのことでしたが、ここはそれらが集約された場所。まず大きな和書なども楽々収納できる書架があり、下には栃木県産の八溝杉をふんだんに使った実に心地よい演奏室が広がっていました。
なんでもご主人の愛する古楽器というのは、ヨーロッパに中世から伝わるハーディガーディーというケルト人の民族楽器だそうで、その哀愁を帯びた音色には木がもっとも相性がいいのだそうです。ぜひ一度、この場所でご主人の演奏を聴いてみたいものですねー。
そうそう、1階のガレージ奧には小さなシャワー室もついていました。毎朝ジョギングの後、このシャワー室で汗をさっと流すそうです。

-->>続いて2階へご案内します

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