文章:白崎 泰弘(All About「オール電化住宅」旧ガイド)
オール電化住宅の普及とともに、IHクッキングヒーターを使っているご家庭が増えてきました。一方で、「本当に美味しい料理を作るには、やっぱり火でなくちゃ。」とか、「IHで本当に美味しい料理が作れるのかしら?」と半信半疑の方も多いことと思います。
では、レストランの厨房ではどうでしょうか?実は電化厨房が増えつつあります。「やっぱり火でなくちゃ」派の方も、電化厨房で作られた料理に舌鼓を打ったことがあるかもしれません。
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| 優しい光に包まれ、落ち着いた雰囲気の「カストール」店内 |
なぜ電化厨房が増えているの?
建築基準法上、裸火を使う厨房は火気使用室となり、内装を不燃材料で覆わなければなりません。しかし、IH調理器は「火を使用する設備」には該当しないため、内装制限の対象とはなりません。※) また、百貨店や色々な施設が複合している建物のオーナー側からすると、お客さまの安全のため火災はもっとも避けたいところで、施設全体で火を使わない計画にする例が多く見られます。そのような建物に入るレストランは、電化厨房にするというわけです。
でも、電化が進んでいる理由は、それだけではありません。今回は第一線で活躍するプロが使う電化厨房の例として、京橋にあるフレンチレストラン「カストール」のオーナーシェフ・藤野賢治さんにお話を伺いました。
プロが電化厨房を選ぶわけとは?
藤野さんは、1984年に代々木上原で「カストール」を開店しました。その後、2005年に現在の京橋に移転しました。
代々木上原での開店当時は、ガスの厨房だったそうですが、後に厨房のレイアウトを変えるたびに、電化の比率を上げていき、最終的に80%ほどの電化厨房にしたそうです。現在の京橋のお店では、ほぼ100%の電化厨房にしています。
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| カストールのオーナーシェフ・藤野賢治さん |
— 電化にしたきっかけは何ですか?「厨房が暑かったので、その温度管理をしたかったのです。ガスの場合、鍋の周りも火で包まれる状態になるので、厨房がとても暑くなるのです。ひどいときには40~45℃にもなります。働く人にとって、肉体的・精神的な負担は軽減したいと思いました。それも、美味しい料理を作るために大切なことです。」
— 他に電化のメリットはありますか?「熱効率がいいので、ランニングコストを抑えられること、それから、調理のデータが取りやすいことです。コンピューター管理のコンベクションがあり、調理データを他のスタッフと共有できます。」
—では電化のデメリットは何かありますか?「そうですね。フレンチで使う鍋は、底に厚板を溶接していますが、業務用のIHはパワーが大きく、鍋を常に叩いているような状態になるため、鍋が長持ちしないことですね。何かのはずみで溶接部分に亀裂が入ると、そこから板が剥がれてしまうのです。それから、こちらの店では洗い物も多く、相当量の給湯が必要ですが、その量をまかなう貯湯タンクを持つことが難しいので、給湯が課題のように思います。こちらでは、給湯用にはガスを引いています。」
—100%の電化厨房は難しいのですか?「ショッピングモールや大きなビルのテナントとして入る場合は、施設全体で大掛りな給湯設備を持っていて、そこから給湯してもらえるので、このような問題は起きません。こちらの場所は、元々は飲食店用のテナントスペースではなく、大量の給湯が想定されていませんでした。新たに単独で給湯を行うとなると、貯湯タンクの置き場所が取れないので難しいのです。」
— 一般家庭では、電化厨房は掃除がしやすいと注目されていますが、プロの現場ではいかがですか?「確かに電化の方が掃除はしやすいと思います。でも、電気・ガスは関係なく、厨房を清潔に保つかどうかは、調理人の心掛けの問題だと思いますよ。」
※)消防法上の電化厨房の取扱いは、各自治体で取扱いが異なる場合があります。建築基準法で内装制限がなくても、各自治体の火災予防条例で内装制限、不燃区画を指導されることがあります。それでは、厨房を拝見します! >次ページ