日本酒/酒造、酒蔵訪問

福井の銘酒「黒龍」の蔵を訪ねる1

まだ雪の残る3月に、福井県永平寺のお膝元、松岡町(現永平寺町)の黒龍酒造にお邪魔した。わがふるさと福井の銘酒。人気の秘密がわかったぞ。

友田 晶子

執筆者:友田 晶子

日本酒・焼酎ガイド

福井平野を流れる九頭竜川が「黒龍」の語源

わが故郷、福井には銘酒が数多くある。
全国的にも人気なのが、なんといっても黒龍酒造だろう。曹洞宗大本山「永平寺」のお膝元であり、黒龍の名の基となった九頭竜川にはぐくまれた松岡町(現永平寺町)にて、1804年(文化元年)より酒つくりを行っているのが、この『黒龍酒造』だ。


蔵の正面。建物にも歴史と風格を感じる。


手前のご自宅(?)の向こうには近代的な蔵「龍翔蔵」が見える。


玄関を入ると、商品が並べられている。隅々までおしゃれな造りで目を見張る。


20年前。4合1万円の『石田屋』は衝撃だった!

創業文化元年(1804年)。初代は石田屋二左衛門。まるで歌舞伎役者のような名前だけど、日本酒ファンなら誰しもがあこがれ、いわばプレミア日本酒の魁ともいえる『石田屋』『二左衛門』は、この初代の名前から命名されている。
暴れ川、崩れ川と呼ばれた九頭竜川の伏流水と、肥沃な土地が生み出した米をもとに、初代以来、手造りの日本酒を求めてきた。

現社長の8代目水野直人氏の先代正人氏は、ワインに興味を持ち、醸造から熟成から、飲み方の違いなどワインのノウハウを日本酒に取り入れ、さらに高品質な「ハレの日用の日本酒」という概念から日本酒づくりを行った人だ。
そこから生まれたのが『大吟醸 龍』
昭和50年の発売当時、1800mlで5,000円という価格で話題になった。ある意味これは、福井の日本酒の、いや、全国の日本酒の中でのエポックメイキングだったかもしれない。




昭和50年発売。
エポックメイキングとなった『大吟醸 龍』

1800ml 8,000円、720ml 4,000円。



そして忘れられないのが『石田屋』だ。
なにしろ、4合ビンで10,000円という金額設定に驚かされた。発売は平成元年。20年近く前の話だ。
お酒のみの間で「なんでも4合で10,000円という日本酒がある」と話題になっていた。それもよく聞けば「わが故郷福井のお酒だ」というではないか。
「それもナントカ桜とかナントカ宗って銘柄ではなく、誰か人の苗字みたいな名前」なんだと。「おまけにビンは茶色じゃなくて、青で、変わった形」なんだと。さらに噂によると「皇太子がお好みになったお酒らしい」などと聞くと、これはもういてもたってもいられない。

商売をしていた実家はもとより、福井の仲間たちの間でもちょっとしたさわぎになっていたのをよく覚えている。
もちろん! あちこち探して、コネクションを使いまくり、必死の思いでやっと手に入れましたよ。憧れの『石田屋』。ああ、あのときの瑠璃色の美しかったこと・・・。




『石田屋』
今も変わらず4合で10,000円。ああ、久々に飲んでみたいな。


そのころ私は東京の学校を卒業し、そのまま東京で就職したばかり。当時、いわゆる地酒ブームが始まったときで、「コンパで飲む日本酒はべたべたして変なにおいがしてまずいけど、あっさり辛口で飲みやすい地酒というのがあるんだ」ということがだんだんと知れ渡ってきたときだった。そうそう、就職後に久しぶりに会う同級生が「これこれ、これなら、おれ、飲めるんだよ。久保田ってぇの。それもきりっと冷やすとさら~っとして美味しいんだぁ。ちょっと飲んでみろ」といって注がれたことを鮮明に思い出す。たしかに、べとべと感がなくて、スキッとして滑らかで、こりゃいくらでもいけるわ、と目からうろこだった。
ちょうど「淡麗辛口」、「吟醸」、「大吟醸」・・・などなどが注目され始めた時代だったのだ。

そんな時代背景もあって出会った『石田屋』の味は、正直、雷に打たれたような衝撃だった。
良い日本酒は「水の如し」とよく比喩されるが、まさにそれ。プラス、磨きぬかれたお酒ならではの「艶感」と、熟成からくる滑らかさと奥行き、そして長い長い余韻・・・。一口を丹念に味わった。

当時、じわじわ人気が出てきた全国の淡麗辛口系の地酒吟醸酒を知り始めた私の舌には、これは本当に衝撃だった。





『二左衛門』
純米大吟醸斗瓶囲い。1800mlで20,000円。こちらも幻。




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